乃木坂46、3・4期生が提示したグループの未来 先輩メンバー不在でのパフォーマンスを読み解く
2017年、当時やはり実働一年目だった3期メンバーは『3人のプリンシパル』のほか『三期生単独ライブ』や舞台『見殺し姫』などの公演を立て続けに行ない、乃木坂46本体と離れた場所で別働隊のようにしてステージ経験を蓄積していった。それと比較しても、4期生は非常に短期間のうちに、大会場での公演を先輩メンバーとともに背負う立場に置かれている。グループ草創期からのメンバーたちが近年、順調にキャリアを重ね次々に卒業を迎えていることを考えれば、4期メンバーがグループの中枢を担うまでのスパンは、3期メンバーにも増して早いのかもしれない。であればこそ、この『3・4期生ライブ』はきわめて近い未来の乃木坂46像を描いてみせるような趣をもつ。
その未来像をさらに視覚的に明確にするのが、ライブ終盤パートで連続してパフォーマンスされた「逃げ水」「夜明けまで強がらなくてもいい」である。いずれも3期、4期メンバーが初めてシングル表題曲のセンター/フロントに抜擢された楽曲であるため、センターに立ったメンバーはリリース時のオリジナルと同一である。しかし、周囲のメンバーとの関係性は、シングル選抜におけるそれとは対照的だった。
「逃げ水」「夜明けまで強がらなくてもいい」はそれぞれ、選抜メンバー内で最もキャリアの少ない人物をセンターやフロントに据え、周囲を盤石の先輩メンバーが固めつつ次世代を涵養する第一歩としての意味をもっていた。だが『3・4期生ライブ』においては、中心に立つ彼女たちと周囲のメンバーとが、いずれも次代のグループを担う立場にいる点では並列であり、センターやフロントのメンバーは周囲に守られるのではなくリードしてゆく役割をもつ。今はまだ新鮮に映るそのバランスは、やがて遠くない将来の乃木坂46のスタンダードとなるはずである。前途を見据えるビジョンをこのように提示してみせることこそ、このライブがもつ最大の意義だった。
ライブ中盤に2チームに分かれての対抗企画を挟み、あるいはセットリスト本編をグループのデビュー曲「ぐるぐるカーテン」で締めくくるなど、このライブでは2013年の代々木公演の跡をたどるような光景がいくつもみられた。当時のメンバーたちはその翌年夏に明治神宮野球場でのコンサートを初めて実現させ、以後2010年代後半を代表するグループへと成長していった。その先達によって乃木坂46というブランドがある程度確立された段階で、それを受け継ぐべく加入したのが今日の3・4期生である。
グループの強みや方向性がすでに定まって以降に乃木坂46の一員となることは、大きなメリットを手にすることでもある。しかしまた同時に、彼女たちに託されたブランドの継承という課題は、オリジネーターではないからこその難しさもともなうはずだ。『3・4期生ライブ』で見せた未来像を乃木坂46の看板として具現化してゆくことは、3・4期メンバーのみならず組織全体にとって2020年代の重要な使命となる。
■香月孝史(Twitter)
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。