5thアルバム『RGB 〜True Color〜』対談
中川翔子×ウォルピスカーター対談 亡き父・中川勝彦の時代を越えた愛のメッセージ「今ごろ天国でガッツポーズを取っている」
中川翔子が5年ぶり、通算5枚目のオリジナルアルバム『RGP ~True Color~』をリリースした。前作『9lives』から実に5年ぶりとなる本作は、TVアニメ『ポケットモンスター XY』エンディングテーマ「ドリドリ」をはじめ、TVアニメ『ソイドワイルド』エンディングテーマ「blue moon」、映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』主題歌「風といっしょに」など、この5年間で携わってきたタイアップ曲を多数収録。
さらにアルバム書き下ろしとして、人気YouTuberスカイピースとコラボした「六畳間から、世界へ」や、ボカロPとして絶大な人気を博するみきとPとのコラボ「mrcl」など、インターネットとの親和性が高い中川ならではの新曲もずらりと並んでいる。中でも、亡き父・中川勝彦が生前書き溜めていた詩を中川が編纂し、“高音系男子”ことウォルピスカーターが作編曲~ゲストボーカルとして携わった「ある日どこかへ」は、時空を超えた愛のメッセージソングともいうべき感動的な仕上がりとなっている。
ここ数年は「東京2020オリンピック・パラリンピック マスコット審査会委員」や「2025年万博誘致スペシャルサポーター」などを務め、未来の日本、そして子どもたちに向けての文化的、社会的な取り組みにも積極的な中川。多岐にわたる活動は、歌い手としての中川にどのような影響を与えているのだろうか。そして、インターネットは彼女にとってどのような存在なのか。今回は前半にアルバム全体の単独インタビューを、後半にウォルピスカーターとの対談を行い、ニューアルバムについて多角的に切り込んでみた。(黒田隆憲)
小さい頃に夢中でやっていたことが、未来の私を助けてくれている
ーー今回のアルバム『RGB ~True Color~』は、オリジナルアルバムとしては前作『9lives』から実に5年ぶりとなりますね。
中川:20代の終わりからここまでの5年間は、人生の中でもとても重要な時期でした。様々なタイアップ楽曲を歌わせていただいてありがたかったし、コラボを通じて新たな出会いもたくさんありました。もちろん、嬉しいことだけじゃなくて悲しいこともあったけど、全部含めてその瞬間の色たちを閉じ込めて、「生きててよかった!」と思えている今この瞬間に出せることがとにかく嬉しいです。
ーータイトルの『RGB ~True Color~』には、どんな意味が込められていますか?
中川:今回、三形態で出すということになり、そこから光の三原色(赤・緑・青)の意味である『RGB』というタイトルがすぐ出てきました。ここには今話したように、様々な活動を通して色を重ね合わせてきた「今の自分の色」という意味が込められています。「True Color」(本当の色)という意味のサブタイトルが付いていますが、常に変化しながら新しい色になっていくし、今もまた新しい色になりつつある自分にとっては、どの時代も「本当の色」と言えるかもしれません。子供の時も思春期も、大人になってからもいろんな夢を見つけてきたし、その夢を叶えた先にまた新たな夢、「本当の色」をこれからも見つけていくのだなと思っていますね。
ーージャケットの絵は中川さんが描いているんですよね?
中川:最近、原画の持つパワーに圧倒される機会がとても多かったんです。デジタルのように「データ」としてではなくカタチとして残るわけじゃないですか。それで今回は、自分で絵を描くことにしました。難産でしたね。自分のアルバムのジャケットを自分で描くって、ずっとやってみたかったことでしたが、いざとなると何を描いたらいいのか全く思い浮かばなくて。でも、三原色にちなんで幼少期、思春期、大人になってからの姿を描くと決まってからは、とっても楽しかったです。最初は草原と空をバックにしようと思ったんですけど、その時々に自分が大事にしていた、他人にとってはガラクタかもしれない「宝物」を背景に散りばめることにしました。まずは水彩画用紙に色鉛筆で描いて、色はデジタルで塗るという「いいとこ取り」のやり方で仕上げています。
ーーそういえば最近の中川さんは、ご自身のファンの中でも特に子どもたちへの思いが強くなっていますよね?
中川:そうなんです。というのも、自分を振り返ってみると絵を描くことや猫、歌うこと、ゲームなど、好きなことって大体子どものころに出会っていることに気づいたんですよね。そして自分が辛かった時、死にたかった時に、ずっとその好きなモノたちが私を助けてきてくれたのだな、って。そしてそれにまつわる夢が、大人になってからたくさん叶っているんですよ。小さい頃に夢中でやっていたことが、未来の私を助けてくれているというか。それを思うと、子どもの時の体験って本当に大事だと思うようになって。それからは、「今」と「未来」を作る子どもたちにたくさんの夢を届けられたらいいなという気持ちで活動しています。それが今年、一気にカタチになったことも嬉しいですね。
私のお仕事のキーワードは「生きた証を残したい」
ーー確かに昨年は「東京2020オリンピック・パラリンピック マスコット審査会委員」や「2025年大阪万博誘致スペシャルサポーター」を務めていますし、今年はNHK『令和特番』に出演したり、書籍『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』を発売するなど、未来の日本、そして子どもたちに向けての文化的、社会的な取り組みにも積極的な印象です。
中川:自分でもびっくりです(笑)。名だたる有識者に混じり、芸能界からは私だけ呼ばれてパネルディスカッションやトークセッションなどに参加することも多くて、そうなるとやはり責任も感じますね。委員会では激しく言い争っても、会議が終わればニコニコ談笑している人たちを見て、「大人って色々あるな、大変だな」って。ちゃんと自分の意見を話せるようにするいい経験になりました。もちろん、失敗することも傷つくこともいっぱいあるんですけど。
ーーそういう、様々な活動も全て、中川さんにとっては「歌」に凝縮されていくのですね。
中川:そう思います。私のお仕事のキーワードは「生きた証を残したい」で、歌がまさにそれだなと思っているんです。歌う時の息遣い、その時の精一杯な気持ちがずっと残るじゃないですか。それに、歌には普段のいろんな気持ちが反映されるし、こうやって音源になって人に聞いてもらって初めて命が吹き込まれると思うんです。さらにライブで歌って皆さんの記憶にも残り、そうやって脈々と受け継がれていくのが音楽の素晴らしさだなと。
ーーアルバムの中で、特に印象に残っている曲は?
中川:どの曲も思い出深いですが、例えば小林幸子さんと歌った「無限∞ブランノワール」では、中野という私の「ふるさと」に幸子さんをお連れし、中野サンプラザの前で一緒に歌ったことがとても思い出深いです。しかも、この曲があったからこそあの「風といっしょに」を歌わせてもらえるという未来にも繋がったのだと思いますね。
ーー小林幸子さんとは、プライベートでも親交があるのですか?
中川:はい。「無限∞ブランノワール」の頃から娘のように可愛がってもらっていて。免許を取った時にも「おめでとう!」って連絡をくださったんです。いつも私の近況を気にかけてくださる「お母さん」のような存在ですね。
ーー他には?
中川:「Magical Circle」(『魔法陣グルグル』ED主題歌)を歌わせてもらったのも嬉しかったです。『魔法陣グルグル』は、10歳くらいの頃にドハマリしましたね。この曲は、ククリちゃん(「魔法陣グルグル」のヒロイン)のキャラソンのような楽曲で、12歳くらいのククリちゃんになりきって歌うときは、声優のお仕事で身につけたスキルを使うことができました(笑)。
ーー「ドリドリ」(『ポケットモンスター XY』EDテーマ)は、「空色デイズ」と並ぶライブの定番曲ですよね。
中川:はい。「夢って素敵だし、一つじゃなくてたくさん見つけていいんだよね?」と思わせてくれる大好きな曲で、やっとアルバムに入れることができるので、惜しみなくファーストトラックにしました。アルバム冒頭からいきなりクライマックスという展開がとても気に入っています(笑)。
ーー先ほど「風といっしょに」の話が少し出ましたが、1998年に公開されたポケモン映画第一弾『ミュウツーの逆襲』の主題歌「風といっしょに」を、映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の主題歌としてポケモンキッズ2019、小林幸子さんとのコラボで歌うというのは感慨深いものがあったのでは?
中川:「風といっしょに」はもう、何かあるたびに聴いて童心に戻るということをずっとしてきてた大切な曲ですね。しかもこの曲と、TVアニメ「ポケットモンスター XY」のエンディングテーマ「タイプ:ワイルド」は、オリジナルリリースは21年前の曲ですし、アルバムの最後に入っている「ある日どこかで」という曲は、25年前に亡くなった父が残した言葉をもとに作ったんです。それを思うと時も超えているし、シチュエーションも全然違う。私の声も年代や、一緒に歌う人によって全然違うと思うんですよね。メチャメチャ面白いアルバムになったと思っています。