草なぎ剛の純粋さと内側に持つ熱さを痛感 『はっぴょう会』田島貴男&斉藤和義との共演を完全レポート

 「サンキューベリーマッチ!」。草なぎの演奏はひと区切りとなり、ここからスペシャルゲストの登場である。まず今夜の一番手はオリジナルラブの田島貴男。笑顔で現れた田島に感激した草なぎは「何で出てくれたんですか?」と質問し、田島は「そりゃーね、うん、出ますよ。ありがたい。あっはっは!」と豪快に笑い、ハグをする。

 セットチェンジ中はそのまま2人のトークの時間のようになり、草なぎは「僕、本当に大好きで、週に2回は『接吻』のビデオを見てるんですよ! ……あ、週2回って微妙ですかね?(笑)」「昨日、リハでも『リズムは一生かけてつかむものなんです』と言われてまして」と田島への思いが爆発。それを田島は「リズムは難しいです! ……今すごくカッコ良く言ってくれたね?」とまたも笑顔だ。以後はバイクとギター談義となり、その加熱ぶりに客席から笑いが漏れる。草なぎはとくに紺のジャズギターが気になった様子だった。そして彼は、昨日の和田の時に続き、演奏する後ろで聴くことの了承を得て、田島のステージとなった。

田島貴男

 『ひとりソウルツアー』と称したソロライブを何度もやってきた田島は、その場をすぐに掌握した。あまりにソウルフルな歌声、そしてエモーショナルなギター。まずギターのボディをタップしてリズムを作り盛り上げた「フィエスタ」、そして早くも唄われた「接吻」は色気たっぷりのジャズバージョン。ここで先ほどのジャズギターが大活躍した。さらに「朝日のあたる道」「フリーライド」で客席を沸かせた。その姿を草なぎは時にリズムをとり、時には見入るようにして注視していた。

 曲によっては両脚の機材でビートを刻みながら演奏した田島を、草なぎは「みなさん、全部自分でやってるんですよ! どうやってんですか?」と心底驚いた様子。それを田島は「聖徳太子みたいだよね(笑)」と返した。だが僕はこの時、むしろそのビックリした顔で熱く語る草なぎのほうが印象的だった。やっぱり純粋な人なのだ。

 そして2人による、これも名曲の「月の裏で会いましょう」では、草なぎ自身「ついていきます」と言っただけあって、歌と、転調する曲の構成をアコギで懸命にサポート。熱くソウルフルな田島の出番はここまでで、拍手の中、舞台から去っていった。

 次、もうひとりだ。「2人目のスペシャルゲストは斉藤和義さんです!」。呼び込まれた斉藤は、いつも通り、脱力気味の空気を漂わせながら現れる。「人が弾き語りをするのを初めて見たのが和義さんなんです!」「僕のバイブルなんですよ、和義さんは!」「このギブソンのギター、どういう感じで作ってもらえるものなんですか?」「そのピック、柔らかくないですか?」と、草なぎの語りは加熱するばかり。それに対し斉藤は、「あ、そう」「そりゃどうも」「あのGジャン、200万とか300万とかするんだよね?」と完全に平常運転状態。こんなふうにゲストとの会話は笑いが起こる瞬間が多かった。

斉藤和義

 やはり草なぎが背後で見つめる中の斉藤和義のソロステージは「優しくなりたい」「月光」、それに「歌うたいのバラッド」。斉藤もまたソロでのライブをずっとやってきているアーティストなだけに、その弾き語りは天下一品だ。草なぎは「いやー、最高ですね!」「生ではガットギターでしか聴いたことなかったんですけど、“俺、初めてアコギで歌うたい聴いてるよ”と思いました!」と斉藤愛が止まらない。

 そしてここでの2人の共演曲に選ばれたのは「ウサギとカメ」。この選曲にはちょっと驚いた。というのは、これは渋くフォーキーなバラードではあるのだが、何よりも東日本大震災が起きた直後の斉藤の苦い感情が織り込まれた、じつにハードな作品だからだ。しかし「和義さんの歌には不意打ちを食らうことがあって」と言いながら共演を望んだ草なぎは、そのただならぬものを感じ取っていたはず。かくして共に弾き、交互に唄う2人のパフォーマンスは、歌の底のメッセージ性を損なうことがなかった。また草なぎは、先ほどの田島に続き、このセッションでも譜面を用意することもなく、すべて覚えた上で唄い、演奏していた。

 「たぶん日本一、僕は幸せな環境でギターを弾けています」。斉藤を送り出した草なぎは晴れやかな笑顔でそう言った。「みなさんも、いくつになっても新しい挑戦、新しい冒険をしていってください。一緒に頑張りましょう!」。リプライズ的に演奏された「はっぴょうかいのテーマ」は〈みんな気をつけて帰ってね〉〈Fが押さえられました ほんとに?〉という歌詞に変えられていた。そして草なぎは「またやりましょう! サンキューベリーマッチ!」と言って、舞台から消えていった。

 アンコール。ゲストも含め、3人ともこの2日間のために作られたTシャツを着ての再登場である。アコギ3人での曲は斉藤の「歩いて帰ろう」。草なぎとしては、この夏の『氣志團万博2019』で唄った曲でもある。ここで今夜初めて観客たちが次々に立ち上がって、唄い、手拍子を送った。みんなが笑顔の、最高のクライマックスだった。

 ゲストの2人と入れ替わるように、最後にサポートメンバーの2人が入った。「昨日から夢の中にいるようです。本当に宝くじに当たったみたいな」。「少しでも、みなさんにいい音楽が届けれるように頑張ります。みなさん、あたたかく、よろしくお願いします」。

 そうして唄われたのは、草なぎが飼っているフレンチブルドッグへの愛情を綴った「クルミちゃんの唄」だった。これもアコーディオンが、そして曲調も言葉も、優しい。そして、この純粋さ。草なぎという人は、そしてこのアーティストは、こういう面を強く持つ存在なのだ。

「雨が降ってますので、みなさん、気をつけて帰ってください。本当にありがとうございました!」

 ここで幕を下ろした盛りだくさんの『草なぎ剛のはっぴょう会』。帰路につく際には、オーディエンスの全員にクルミちゃんのイラストが入ったギターピックが渡された。最後の最後まで楽しませてくれる人である。

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