TWICE、IZ*ONE……ガールズグループが設ける“ラップパート”に注目 キュートさも表現できる手法に

モーニング娘。'19『青春Night』(Morning Musume。'19 [The Youthful Night])(Promotion Edit)

 一方、日本では、lyrical schoolのようなラップが楽曲の主体を成しているアイドルや、欅坂46の「アンビバレント」などのようにラップ調のパートを取り入れたり、日向坂46・富田鈴花のようなラップを特技とするメンバーが登場したりしている。中でもモーニング娘。は積極的に楽曲にラップパートを取り入れているグループと言えるだろう。特に、モーニング娘。'19が6月に発売した楽曲「青春Night」でラップを披露したのが印象的だ。モーニング娘。といえば「LOVEマシーン」で一斉を風靡したが、その人気の秘訣の一つはみんなが簡単に真似できる、という親しみやすさであった。その後20年の歴史の中では“黄金期”や“プラチナ期”と呼ばれる時代もあったが、現在のモーニング娘。は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出演した際にも見せた怪物級のスタミナとパフォーマンス力で定評がある。デビュー当初からつんく♂のプロデュースの元、高い音楽的評価を得てきたモーニング娘。にとって、ラップは彼女たちの楽曲のノリやすさに貢献してきたと言えるだろう。例えば、「恋愛レボリューション21」の〈超超超 いい感じ〉というリリックの語感の良さ。また、「なんちゃって恋愛」のようなシリアスな曲も、曲中の強がりな主人公がラップでは本音を語ることで、楽曲と聴き手との距離感を縮めている。

モーニング娘。 『恋愛レボリューション21』 (MV)
モーニング娘。 『なんちゃって恋愛』 (MV)

 現体制のモーニング娘。でラップが顕著になったのはメンバーの石田亜佑美の存在が大きいだろう。モーニング娘。'14時代にコンサートで披露された「HOW DO YOU LIKE JAPAN? 〜日本はどんな感じでっか?〜」での、石田の迫力あるパフォーマンスは当時多くの反響があった。それ以降、2017年に発表された「ジェラシー ジェラシー」や「青春Night」では、メンバーのラップに応えるように他のメンバーの合いの手も音源として収録されている。これは、モーニング娘。がハイレベルなパフォーマンスを魅せるのと同時に、ラップパートを通じてファンと一体になることを可能にしている。

モーニング娘。'17『ジェラシー ジェラシー』(Morning Musume。'17[Jealousy Jealousy])(Promotion Edit)

 多くの人々がイメージする“ラップ”はラップバトルのような過激なものを想定しやすいが、TWICEやIZ*ONE、モーニング娘。の例から対極に位置する可愛らしさも表現できると言えるだろう。ラップは表現方法の一つとして広く認知されてはじめているものの、ボーカルよりも個人のセンスの問われる難しいポジションであるように感じる。今後、ガールズグループの楽曲におけるボーカルとラップのパートバランスや、その相関性は変化していきそうだ。

■momotoxic
ブロガー。自称"楽曲派"。Twitter:@momotoxic1006

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる