岡崎体育、『磯野家の人々』で20年後の中島役に抜擢 役者としても発揮する持ち前の“異質さ”

 一度見たら忘れられない風貌といい、醸し出す雰囲気といい、岡崎体育にはいい意味での“異質さ”が備わっている。それは本業のアーティスト活動の場においても発揮されてきたことだが、役者として起用されると一層強まるように感じるのは気のせいではないだろう。演じた役柄を見ても一目瞭然。一筋縄ではいかない、クセ者をいかにも楽しそうに演じている。純朴な青年にもサイコキラーにもなれそうな、危ういバランスが絶妙だ。既存の役者にはいそうでいないニッチな存在感も、制作スタッフが求めていたところとピタリとハマったのかもしれない。加えて彼のセルフプロデュース能力の高さも、演技をする上でのアドバンテージになっているように思う。これまでリリースした作品、特にMVに顕著だが、岡崎体育は自分をいかに見せるかを常に探求してきたアーティストだ。めちゃめちゃカッコつけてみたりするのも、自身の見た目とのギャップがおもしろいことを自覚しているからにほかならない。“演じる”ことへの意識はそのスタイルの中で自然と培われてきた。おそらく演出側の意図を汲むのもうまいのではないだろうか。『麻雀放浪記2020』を手掛けた白石和彌監督は「岡崎体育さんの独自の世界観が好きでお願いしたのですが大正解でした。これからお芝居の仕事が増えるんだろうなと思います」と語ったが(参考)、今にして思えばこの予想はまんまと的中したと言える。

映画『麻雀放浪記2020』 岡崎体育 特別映像

 今後、“役者”岡崎体育に期待するところは持ち前の“異質さ”を、映画やドラマといったメディアを通していかんなく発揮してくれること。登場してきた瞬間に場の空気を変えてしまうような存在感で、観る側を戦々恐々とさせてほしい。芝居への意気込みに対して、本人は「お芝居でも高く評価されているミュージシャンの方々ってたくさんいますけど、でもそれってやっぱりミュージシャンとしての足場をしっかり持っているからこそ、ファンの方々が俳優としても応援してくれると思うんですよね。音楽という基礎があるから役者としてもより魅力的にみえる。僕も他に類をみない、この憎めない系ぽっちゃり三枚目キャラを最大限に活かして、ハリウッドデビューできるまでがんばりたいと思います」(参照)と語っている。二足のわらじを履く覚悟も決まったというところだろうか。新たな名バイプレイヤーの誕生を心から歓迎したい。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

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