内田勘太郎×甲本ヒロトによるブギ連、純度100%のブルースに取りつかれたライブを観た

ブギ連の“純度100%のブルース”


 伝説のブルースマン、サニー・ボーイ・ウィリアムソンの話を2人がしている。サニー・ボーイを名乗るブルースハープ奏者は第二次大戦前と後に2人いて、勘太郎に「ヒロトさんが2人の特徴を吹き分けます」と紹介されたのは、ヒロト作のインストゥルメンタル「ロケット18」。明るく勢いあるブギ調のリズムに乗って、ベンド、トリル、ビブラートなど、正確な技術でハープを吹きまくるヒロトの独壇場だ。ザ・クロマニヨンズでもハープは吹くが、ここまでずば抜けたスキルの持ち主だとは、ブギ連を聴いて初めて知った人は多いはず(筆者もその1人)。

 The MetersやThe Neville Brothers、さらには憂歌団の話も飛び出した、和気あいあいのMCを経て後半のスタートを飾った「軽はずみの恋」。これが出色の出来栄えで、ワンコーラス歌い終えたあとに思わず拍手が湧いた。ブルースによくある切なく報われない恋の歌を、時にロマンチックに時に劇的に、叫び囁くヒロトの歌の力に震える。その余韻を断ち切ってアップビートで突っ走る「ナマズ気取り」、そして「ヘビが中まで」。ヒロトは手をくねくねしてヘビの真似をしている。勘太郎がどこまでも高揚していく凄いソロを弾いた。思わず「内田勘太郎すげーな!」と叫ぶヒロト。ブギ連はステージの上にもお互いのファンがいて、どこを見渡しても愛しか感じない。

 「オイラ悶絶」は、間違いなくこの日のベストパフォーマンスの一つ。椅子からはみ出しマイクをひっつかみ、目をむき出してフルパワーで歌うヒロトの鬼気迫る歌声には、口をあんぐり開けて見入るしかない。ヒロト凄ぇ。そのままアイコンタクトを交わして「腹のほう」へ繋ぎ、本編ラスト「ブギ連」へ。真っ赤なライトに照らされて、勘太郎の悪魔のスライドが吠え、ヒロトの神がかった歌が炸裂する。ヒロトが自ら手拍子を求め、会場がグルーヴで一つになる。これを本当の一体感というのだろう。今この瞬間、ここにいる全員がブギ連になる。

 アンコール。未発表曲「おえりゃあせんのう」は、一番が勘太郎で二番がヒロト、狐憑きの物語をユーモラスに歌う岡山弁の民話ブルースで、「おえりゃあせんのう」という2人の決めゼリフがなんともおかしい。続く「ラブ・ミー・テンダー」は誰もが知るエルヴィス・プレスリーの日本語カバーだが、〈愛しておくれ柔らかく〉というこの歌詞はヒロトのものだろうか? 優しく愛おしく囁くように、こんなに柔らかいヒロトの歌は初めて聴いた気がする。ひとこと「最高」とつぶやくしかない。そしてアルバムからの「ブルースがなぜ」を歌い終わると、いよいよ本当のラストチューン。

「ありがとうございました。おうちに帰るまでがブギ連です。そして明日自慢してください」

 ヒロトの挨拶に続く最後の曲は「道がぢるいけえ気ィつけて行かれえ」。語るように歌うヒロトの声のあたたかさ、今日イチの長ロングトーンが聴けた情緒たっぷりのブルースハープ、そして〈ほなな〉という愛情こもった別れの言葉。手を繋いでステージを去る2人は満面の笑みだった。ブルースに取りつかれた2人による純度100%のブルースユニット、ブギ連。ここには音楽を愛する者が絶対に忘れてはいけない何かがある。またいつか聴けるチャンスがあれば、決して見逃してはいけない。

(文=宮本英夫/写真=柴田恵理)

ブギ連 ソニーミュージック オフィシャルサイト

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