>  > 斎藤×木皿×冨田、二次元アイドルコンテンツの現在

『IDOL舞SHOW』特別企画

斎藤滋×木皿陽平×冨田明宏に聞く、二次元アイドルコンテンツの現在と新プロジェクト『IDOL舞SHOW』の展望

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 この秋、二次元アイドルコンテンツシーンにあらたな大型プロジェクトが“出陣”! 『涼宮ハルヒの憂鬱』といったアニメ作品の音楽や茅原実里などのアーティストをプロデュースする斎藤滋と、音楽評論家であり内田真礼らの音楽プロデュースも手掛ける冨田明宏、そして『ラブライブ!』の担当プロデューサーとして知られる木皿陽平の3人が顔を揃える新アイドルコンテンツ、『IDOL舞SHOW』が発表された。

 しかしこの3人、単に“タッグを組む”わけではない。このプロジェクトでは各々が別ユニットをプロデュースし、ユニット間でのバトルロイヤルが繰り広げられていくのだ。そこで今回はプロデューサー陣3人へインタビュー。発表された本作への取り組みはもちろん、二次元アイドルコンテンツシーンの現在地についても語ってもらった。(須永兼次)

アイドルコンテンツ増加の背景とリアルライブの関係性

『IDOL舞SHOW』キービジュアル

――まずは『IDOL舞SHOW』が属するアイドルコンテンツのシーンを、今みなさんがどう見られているか教えていただけますか?

冨田:最初は張本人たちにお聞きしましょうよ(笑)。

木皿:いやいや(笑)。難しいとこですけど……でも、どこかで新しい基軸が出てこないといけないと思います。

――新基軸。

木皿:そう。現実のアイドルの世界はおそらく進化していて、新基軸がずっと出続けていると思うんですけど、逆にアニメやゲームとキャストとのリンクの仕方って実は、ここ15年ぐらいの間でそんなに大きな変化はないんですよ。

冨田:それこそアイドル業界もかつては“戦国時代”と言われていて、今はももクロ(ももいろクローバーZ)やAKB48グループ、坂道系みたいな強い、存在自体がコンテンツになりえたアイドルが残ったじゃないですか。もしアニメ業界におけるアイドルコンテンツにもその戦国時代的なものがあったのだとしたら、大小さまざまな戦いはあったんじゃないかとは思っていて。そのなかで、結果『アイドルマスター』や『ラブライブ!』など強いコンテンツが残ったんだと思うんです。

木皿:我々音楽を作る立場の人間としては、当然「リアルのライブのステージでどう特別な体験をさせられるか?」を考えて生きているので、そこで新しい何かをやりたいというのはずっとあります。ただ、すごくお金がかかるとか、ある程度の大きな会場でないと作品として意味をなさないとか、そんな理由で新しい体験を提供しきれてない部分もあると思っていて。男性アイドル作品だと、個人的に新しいことをやっていると思うコンテンツはあるんですけど。たとえば『あんさんぶるスターズ!』とか。

冨田:すごいですよね。『あんスタ』のCGライブは。

木皿:ああいうイノベーションが、今の女性アイドルの作品にはあまりないのかもなって少し感じてます。だって10年間同じことをやったら、もはや伝統芸能じゃないですか。

斎藤:たしかに“伝統芸能”というのは腑に落ちるかも。世代交代していくんですよね。世襲制で。

――新しく入ってきた子たちが伝統も引き継ぎつつ、楽曲ジャンルや見せ方で新しいことを上積みしていくというのは、まさしく伝統芸能ですね。

冨田:アイドル自身がそうですからね。AKB48グループもですし、ハロプロ(ハロー! プロジェクト)なんてまさに。でもそこについたお客さんって新しく出てきたアイドルたちをまた育てていくし、それはもしかしたら、リアルとこちら側も近しい部分なのかもしれません。

――また、実際のライブイベントが増加しているのも、近年の流れだと思います。

木皿:ただ、ライブをやるには“順番”があるとも思います。ライブは準備もすごく大変だし、レベルの高いダンスも本来前提としてあると思うんです。映像ができて、それを形にしたいと役者さんやスタッフみんなで思い描いて、初めてライブが実現する。「そのコンテンツをよりお客さんに楽しんでほしい」とか「そのコンテンツをよりいいものにしたい」っていう気持ちが、ライブステージという形を取らせるんじゃないでしょうか。

冨田:あと、お客様に対して「感動したいんだな」っていうのは、すごく感じますね。エンターテインメントは全般的にそうかもしれませんけど、毎日自分のシンドくて大変な境遇がなかなか変えられずに仕事や学校へ行ったりしているなかで、自分が好きなものを生で味わって心の底から感動すると、明日への活力や生きる原動力になると思うんです。そういったコンテンツがアニメや声優さんの業界の中で出てくることによって、「キャラクターが好き」という思いに、その先の“体感としての感動”というエンターテインメントの要素がプラスされた感じがありますよね。

――普段生きづらさを感じたり、辛さを抱えている人たちの居場所のようになっている側面もある。

冨田:そうだと思いますし、僕はそれでいいと思います。僕が手掛けているアーティストのライブも、お客様ってチケット争奪戦からすごく頑張って来ていただけるから、その努力が報われてほしいなと思うし、払ったお金に見合ったものを作りたい。体感を通じて「生きていてよかった。報われた」と思ってもらいたんです。やっぱり、頑張る意味って必要だと思うから、『IDOL舞SHOW』に参加することで得られる喜びや感動に意味を見出してくださるお客様がひとりでも多くいればいいなと思っています。

――また、キャラソンとそのライブの分野でエポックメイキングだった『涼宮ハルヒの憂鬱』には、斎藤さんが携わられていました。実は僕も学生時代に“涼宮ハルヒの激奏”に行けたひとりなんですが、あの光景を生で観たときにはやっぱり泣いちゃいましたもん。

冨田:そこで“泣く”のって、二次元で見ていたものを目の前で一生懸命表現してくれている、「あ、目の前に追い求めいていた本物があるんだ」っていう感覚から来ると思うんです。それってもしかしたら、リアルなアイドルにはない感動かもしれないですね。

斎藤:たしかに。アニメの世界のものがそこにあって、一緒に騒げる場所がライブなんでしょうね。僕、今みなさんの話を聞いてて思ったんですけど、ニコニコ動画の盛り上がりがピークを超えてから、逆にライブが増えているような気がしてまして。僕、ニコ動のヘビーユーザーだったんですよ。毎晩のように入り浸ってずーっとコメントしてるのが、すごく楽しくて。でも、だんだんみんながニコ動に行かなくなってくると、ライブがどんどん増えていって……みんなと一緒に騒ぎたいんですかね? それがライブが増加していった理由のひとつなのかも。

木皿:体験の共有。

斎藤:かもしれないですよね。

プロデューサーだからこそ肌で感じる、シーンの“変化”

――そういったコンテンツに惹かれるお客さんの反応で、変化を感じた部分はありますか?

木皿:「この人たちは本来何が好きな人なんだろう?」っていうのが、見えづらくなってるように感じます。そもそも「“アニメを好き”が大前提」が違うし、“大手を振って言いづらい”ではないですけど、昔は偏見みたいなものもありましたよね。

冨田:我々のときにはありましたね。オタク友達を増やしたいんだけど、オタク度合いを探り合う暗号みたいな、踏み絵のようなアニメタイトルに相手が反応するか試したりして(苦笑)。

斎藤:今はもう、そんなの気にしてなさそうですよね。隠さなくてもよくなったというか。

木皿:当たり前のように二次元のものが身近にあって、たとえば少年誌のグラビアでグラドルを見て「この子かわいいね」って言うのと、「『アイマス』の〇〇ちゃんいいよね」って言うのが同じ感覚なんでしょうね。それはここ数年で、一気に変わったと思います。

――その変化はアイドルコンテンツに限らず、声優アーティストやアニソンシンガーを手掛けるなかでも感じますか?

斎藤:うーん……感じる、かな。だから、楽曲制作で世代は意識しますね。若い頃は“好きな音楽=お客様の好きな音楽”って信じてやれていたんですけど、今の年代でやると年齢層が上の方しかついてこなくなりがちなので。そこは意識して若く作りませんか?

冨田:すごく気にしますね。ズレてたら怖いなって思います。

木皿:お客さんの感性って、特にこの5~6年で急に変わってる部分ありますよね。

斎藤:あと、“みんなが好きなもの”がなくなって、それぞれ好きなものが細分化されてきた。だから僕は、結論から言うと「狙ってもしょうがない」と思って、結果的に「自分がいいと思うものを作ればそれでいいや」に戻ってきているんです。きっと意識的にヒットを狙えるスーパーな人もいると思うんですけど、自分はそういう気質じゃないので……でもときどき不安になって、若いスタッフや作家に「これ今みんな好き?」みたいに訊いたりもしてるんですけど(笑)。

一同:(笑)

冨田:逆に僕は、ものすごく考えちゃうんですよ。

斎藤:狙いにいくんですか?

冨田:というか、CDを1枚作るのにも自分が安心できないと怖くてしょうがないんです。だから毎回「今回は意味付けはこうで位置付けはこうで、今このタイミングだとほかにはこれこれこういうのがあるから、あなたはこうしたほうがいいんじゃない?」……みたいなところまで一回組み立てた企画書を作っちゃう(笑)。

斎藤:それって、冨田さんがライターとしての能力があるからできることかも。

冨田:いや、ビビリなんだと思います。まずそれをやらないと、自分がゴーできないんですよ。それに、単純に分析が好きなんですよね。だから頭の中で一度シミュレーションで形にしてみるのも、それが世に出たときのリアクションまで考えるのも割と好きなんです。

斎藤:自分の場合は1曲がどうというよりも、そのコンテンツやアーティストを応援してもらうためにはどうすればいいか、総合的に考える癖があるかもしれないです。もちろん曲の良し悪しはありますけど、いいチームができるとそのチーム自体を応援したくなる人たちが集まってくる、っていう現象が起こると思っていて。自分はそのチームづくりのほうが好きなのかもしれないですね。なので、僕はスタジオワークを一日中やっているだけだとダメで、たとえばアニメだったら監督やライターの方とかいろんな人に会いに行って、いいムードのチームをつくりたいんです。

木皿:GM(※ゼネラルマネジャー:現場での指揮を執るのではなく、戦略や組織作りなどに従事する役職)みたいな感じですか?

斎藤:あぁ、そんな感じかも! 選手にビシビシ指示するよりも、ちょっと引いたところで「このチームをどう活かしたらいいんだろう、そのために僕には何ができる?」みたいに考えることが多いですね。

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