「タイムリミット」インタビュー
MACOが語る、“今だからこそ”楽曲で伝えられる思い「みんなの背中をそっと押せるようになりたい」
「自由に生きていいんだよ」といろんな選択を肯定する歌
ーー歌詞の話に戻りますが、MACOさんが特に筆圧強く書いたフレーズは?
MACO:Dメロの部分ですね。「?」を曲として表すのは難しいけど、その感情を込めなきゃと思って表現しました。あと、2サビの〈ダサくてもいいの〉というフレーズは、スタッフ側が「それ入れちゃっていいの?」と驚いたくらいで。あと、〈心はずっと自由でいいんだよ〉は、元々「心はずっとあなたのものだよ」って歌詞だったり、〈タイムリミットなんてないから〉も「どれもこれも大したことじゃないね」ってワードだったんですよ。「あなたのもの」だと本来は聴き手の自分自身って意味だったんですけど、誰か恋愛相手のものみたいな形に取られちゃうかなと思ったし、全部“大したこと”だなと感じたので。そうやって書き加えていくうちに、山本さんと「寿圧力」とか新しいワードまで作ったりして。山本さんからも「こんなことまで書いて大丈夫!?」って逆に心配されました(笑)。
ーー聴き様によっては固定されたイメージになる歌詞を、どんどん自由にしていったんですね。
MACO:「自由に生きていいんだよ」っていろんな選択を肯定していく曲だから、心に余裕を持ってこの曲を歌わないと、みんな不安になっちゃうなって思ったんです。そんな気持ちが出ているからか、MVでもその部分だけ笑顔になってるんですよ。
ーーなるほど。語弊があるかもしれませんが、これまでの楽曲は綺麗さやオシャレさを全体的に纏った歌詞が多かったと思うんです。でも、この曲ではこれまで描いてこなかった泥臭さのようなものがありますね。
MACO:いまの年齢になったから恥ずかしくないって思えるところがあるんです。昔だったら〈ダサくてもいいの〉なんて言えなかったと思うんですけど、今は生活のなかにそういう部分がいっぱいあるなと気づいたので。これまで、「自分がみんなの先頭を切りたい」って考えるような性格じゃなかったんですけど、この曲を作ったことで「みんなの背中をそっと押せるようになりたい」って思えたことも大きいです。
ーーそれを聞くと、この1年で何か大きな変化があったのでは、と勘ぐってしまいます。
MACO:真面目な話、仕事をしていて、昔だったら「キーッ!」ってなってたところが、「ま、いっか」と思えるようになったとか、そういうことが多くなってきたんですよ。歳を重ねたからなのかもしれないですけど、「あ、こういうところ変わったな」と思う瞬間が今年に入ってからすごく多かった気がします。
ーー「許せるようになる」というのは大きな変化かもしれないですね。10代のころって、どうしても感情がアップダウンしがちじゃないですか。
MACO:今も昔も変わらず感傷的なところはあるんですけど、見方が変わったり、視野が少しずつ広がっていってる感覚はありますね。
ーー内に秘めていて出せなかった自分が出せている、みたいな感覚もあるのかなと思いました。
MACO:周りにも「そういうところ、もっと出したほうがいいよ」ってよく言われるんですけど、自分のなかではまだ引っかかってるんですよね……。
ーーどういうことですか。
MACO:なんだろう……友達と話していて、いろんな仕事観とか思想をSNSを通してつぶやくことで、アーティストとして求められているイメージが崩れちゃうことってあるじゃないですか。そういうことを恐れて揺れているというか。「見せたほうがいいよ」って言われるし、自分もそうしたいんですけど、こういう楽曲を出した後でふざけた一面ってなかなか出しにくいなと思ったりして。“好きなように生きて”って歌ってるのに(笑)。
ーー(笑)。そういえば、この曲を初披露した先日のライブが、初めてアンコールなしで終わっていて驚きました。今後もそうしていく予定なんですか?
MACO:そのつもりですね。バンドのライブを見ていて、アンコールのないバンドってかっこいいなって思ったんです。そのうち、自分も「アンコールをやってる意味ってなんなんだろう?」って考え始めて。このあとに何があるかわかってるのに「ありがとー!」って一回出ていってまた帰ってくるのってなんの意味があるのかなと疑問に思って、一回予定調和を無くしてみたらどうなんだろうと。
ーー「タイムリミット」で終わって、いろいろ考えながら帰るというのは、MACOさんのライブになかった体験だったので、すごく新鮮でした。
MACO:終わってから、帰り道でザワザワしてくれたらいいなって思っていたので嬉しいです。ライブのセットリストを考えるとき、みんなに「今回はダラっとしないライブがいいんです」って伝えたら、最初は驚いたけど、すぐに意図を汲んでくれたので。(参照:MACOは第二章へーーファンにメッセージと決意を届けた『miss you summer』レポート)
ーーこれまでのライブって、良い意味でその“ダラダラ感”がアットホームな雰囲気でよかった部分もあるので、かなり大きな決断ですね。
MACO:ライブのミーティングでも「MACOって自分があまり思っていることを言わないから、みんなの声を拾うだけじゃなくて、言いたいことを言って良いんだよ」って言ってもらって気づいたんですよね。だから家に帰って「あ、これも言えばよかった」って思わないようなMCをしたかったし、「タイムリミット」の前に曲についての思いを話せたのも大きかったです。
ーー曲の文脈をしっかり説明して初披露したからこそ、より響く曲になったんじゃないかと感じました。
MACO:「なんでこの曲が歌いたかったのか」「何を伝えたかったのか」、というのをしっかりわかってもらえた手応えはあります。
ーーそうして始まった“第二章”ですが、近い目標はありますか?
MACO:今まで挑戦したことのない方法で楽曲制作に挑戦しましたし、ソニーに移籍したからこそ出会えた作家さんやスタッフもいるので、それを踏まえた“すごいアルバム”を作りたいですし、変わらずにラブソングも書き続けたいです。今までは全体のコンセプトを決めて作ることが多かったんですけど、今回は一緒に制作しながら攻めた曲を出しましたが、今後も色々なミラクルが起こって面白い作品になりそうなので、楽しみにしていてください。
(取材・文=中村拓海)
■リリース情報
MACO『タイムリミット』
アーティスト:MACO
タイトル:タイムリミット
発売日:2019年8月28日(水)
レーベル:MASTERSIX FOUNDATION
■ライブ情報
2019年9月29日(日)
開場15:00 開演16:00『倉フェス!2019』@コンベックス岡山
2019年12月29日(日)
開場17:00 開演18:00『ベリーグッドマンへの道 TOUR 2019 〜武者修行編〜』@Zepp Sapporo