Digital Single「PINK DIAMOND」インタビュー
CrazyBoyが語る、LDH流のヒップホップ 「ラッパーとダンサーがリスペクトし合える環境が理想」
CrazyBoy from 三代目 J SOUL BROTHERSの新作『PINK DIAMOND』は、ソロアーティストとして新章の開幕を宣言するフレッシュな楽曲となった。三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマー・ELLYとして活躍する一方、ラッパーとして本格的にヒップホップに挑戦してきたCrazyBoyは、今作から所属事務所であるLDH JAPAN系列のレーベル・LDH music & publishingに移籍。アーティスト表記も“CrazyBoy”と改め、LDH music & publishingならではの制作スタイルで、ダンスとラップの融合をより意識した楽曲作りを行っている。アンダーグラウンドなダンスシーンに出自を持ち、ヒップホップカルチャーに深く傾倒してきたCrazyBoyは、シーンに何をもたらそうとしているのだろうか。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
ダンスありきの楽曲作り
ーー「PINK DIAMOND」は、LDH music & publishingに移籍してCrazyBoy from 三代目 J SOUL BROTHERS名義に変更後、初のシングルです。どのようなコンセプトで制作したのですか?
CrazyBoy:楽曲のコンセプトとしては、好きな女性に向けてのメッセージソングというのがまずありました。ダイヤの中でも非常に高価なピンクダイヤモンドをモチーフにすることで、女性に対して「あなたは最上級の存在です」と伝えたかったんです。また、三代目 J SOUL BROTHERSのOMI(登坂広臣/HIROOMI TOSAKA)がソロで「BLUE SAPPHIRE」という曲を出していたのにもインスピレーションを受けました。OMIが「BLUE SAPPHIRE」なら、それとは対照的な「PINK DIAMOND」を取り上げることで、お互いのソロワークにも参加しあって、リスペクトしあっている自分たちの関係性を示すこともできるかなと。今回のタイトルは自分でも気に入っています。
ーーLDH music & publishingに移籍することで、制作スタイルに変化はありましたか。
CrazyBoy:大きな変化がありました。今回、制作に当たってもっとも意識したのは、自分にとって最大の武器である“ダンス”を活かした音楽を作るということでした。ダンスを魅力的に見せることを前提にトラック作りから参加して、そのトラックのグルーヴに合わせてラップやトップラインを組み立てていくという制作方法を採っていて、それはLDH music & publishingだからこそできたことです。CRAZYBOYとして活動を開始した当初は、パフォーマーとして初のソロライブを開催することを目標としていたので、猛スピードでアルバムを制作する必要がありました。もちろん、その活動の中で得たものはたくさんありましたが、自分を120%活かしきるという意味では、まだ挑戦できる部分がありましたし、そう考えると今回、LDH music & publishingに移籍したのは良いタイミングだったと思います。ロゴも名前の表記も新しくなって、音楽的にもウィスパーボイスを使ってみたり、メロディアスな歌のパートがあったりと、様々なチャレンジをしています。圧倒的な進化を感じてもらえるはずです。
ーーLDH music & publishingでは、ダンスありきの楽曲作りを行なっていると。従来的なシンガーソングライターや、作詞家と作曲家による共作とはまた違った方法論で、興味深いところです。
CrazyBoy:ダンサーでありラッパーでもあるという視点から、全体をプロデュースしていく方法は新しいかもしれません。今回の楽曲ではイントロでストリングスを効かせて、CrazyBoyならではの世界観を描いているのですが、それもステージで表現するときに、ただ立っているだけでも絵になるようなイメージを思い描いています。最近はクラシックをよく聴くので、その荘厳な世界観を自分の楽曲にも反映したかったんです。トラックに関しては「Tropical Paradise」でもチームを組んだNAKKIDくんがイメージ通りのものを仕上げてくれました。また、今回はR&BシンガーのJAY’EDさんにもチームに加わってもらったので、JAY’EDさんならではの流れるようなトップラインも活きています。JAY’EDさんが作るトップラインは、洋楽をそのまま日本語に落とし込んだようなグルーヴがあって、人によっては歌うのが難しいそうですが、もともと僕が洋楽をよく聴いていることもあってか、ばっちりハマった印象です。みんなで高いモチベーションを持って楽しみながら突き詰められたのも、今回のチームの良いところでした。
ーーコライト(共作)に重きを置いているのも、LDH music & publishingらしい特徴かもしれません。
CrazyBoy:そうですね。例えば、シンガーソングライターが孤独と向き合いながら自分で歌詞もメロディも考えて、自分で歌うというスタイルももちろん素晴らしいと思うのですが、自分はヒップホップで育った人間なので、チームで作っていくという感覚は当たり前にあったものでした。LDHの根元にもヒップホップカルチャーがあるので、LDH music & publishingがそういうモノづくりの仕方をするのは自然なことなのかなと。アートの世界でも、村上隆さんなどはディレクションをする立場で、チームで一つのものを制作しています。音楽の作り方にしても、いろんなクリエイターと組むことで自分でにはなかったアイデアが生まれてきたりしますし、こうしたスタイルで制作することで新たなコラボレーションやフィーチャリングの機会に恵まれることもあります。実際、K-POPアーティストやUSのアーティストから声をかけてもらうこともあって、自分たちが作る音楽がワールドワイドなシーンでも目を止めてもらえる可能性があると気付けたのは、大きな収穫でした。
ーーLDHには、飲食業のLDH kitchenや映画配給のLDH picturesなどのグループ会社があるので、そうした他業種とのシナジーも生まれそうです。
CrazyBoy:LDH music & publishingにはその意味でも大きな可能性があると思います。これまでの音楽出版社は、音楽を制作してそれを売ることで収益化するものだったと思うのですが、LDH music & publishingはおっしゃる通り、関連会社と連携することで様々な形で総合エンタテインメントを提供することができます。例えば、EXILE TETSUYAさんが代表を務めているコーヒー店の「AMAZING COFFEE」とコラボレーションして、オリジナルのコーヒーに音源を付けて提供するといったことも可能です。音楽を使って何ができるのか、という視点で考えられるのは、これからの音楽ビジネスのあり方としても面白いし、ヒップホップらしい方法論でもあるなと。アイデア次第で、どんどん新しい形のエンタテインメントが生み出せるはずです。
ーーPKCZ®がSnoop DoggとYultronを迎えて制作した楽曲「BOW DOWN」にもCrazyBoyとして参加していました。同曲のMVを制作した88risingは、ヒップホップを軸にアジアンカルチャーを世界に発信していく企業として、いま大きな注目を集めていますが、LDH music & publishingの姿勢には彼らと通じるものがあるように感じます。
CrazyBoy:88risingからは大きな刺激を受けています。Higher BrothersやNIKIなど、好きなアーティストは多いし、新しい形のプラットフォームでアジアンカルチャーを軸としたヒップホップビジネスを展開しようとする姿勢にも共感していました。LDH music & publishingと通じる部分は確実にあると思います。「BOW DOWN」に参加させていただいて、多くのインスピレーションも得ました。88risingにはまだ、ダンスをメインにした映像コンテンツはないので、いつかそういうところでコラボレーションできたら嬉しいです。