UA、キャリアを俯瞰するような選曲で響かせた歌声 LIQUIDROOMアニバーサリー公演
2度のアンコールでは、代表曲の一つである「悲しみジョニー」と1997年のシングル『甘い運命』に収録された千賀かほるのカバー曲「真夜中のギター」が強く印象に残った。前者はジャングルからロックの8ビートと、リズムパターンが変化する攻めのアレンジ、それに対して、後者は聴き手にそっと寄り添うような歌を披露して、この日のライブを締め括った。作品単位で捉えると、UAはその先鋭的な作風が取り沙汰されることが多いアーティストであるが、キャリアを俯瞰するかのようなライブの選曲は彼女の多面性や優れたバランス感覚が際立っていた。10月5、6日には日本橋三井ホールでの久しぶりのホールライブ、そして、2020年にはデビュー25周年の大きな節目が控えている彼女だが、音楽のサイクルが一周した今、多様性を内包したその歌声の魔法にリスナーが立ち返るべき季節が再び訪れようとしている。
(文=小野田雄/写真=田中聖太郎)