AIがセンスに惚れ込み実現したMJ116とのコラボ アジアの音楽シーン活性化に繋がるか
見果てぬ大地という意味での「地球」は狭くなり、逆に意思疎通可能な範囲としての「世界」は広くなった、そんな2019年。今や音楽の聴き方/聴かれ方もボーダレスになっている。そんな時代だから「もっとアジアのアーティストたちとのコラボを」と願ったAI。
彼女が目を向けた先は台湾だ。
台湾は知られざるヒップホップ大国である。
わたしがそれに気づいたのは、2007年末のこと。台北名物のナイトマーケット(夜市)に行ってみたら、そこらじゅうにスリー6マフィアの台北公演告知ポスターが貼ってあったのだ。
日本に喩えれば、夜市とは家族連れもたくさん来る巨大縁日のようなもの。そこに、テネシー州メンフィスの最凶ヒップホップグループのポスターがあるのだから、凄い図であることは理解いただけよう。調べてみるとボーン・サグズン・ハーモニーもリル・ジョンも、来日より先に「来台公演」を行なっていた。ワオ!
そんな国だからして、地元ヒップホップへの支持も熱い。夜市で個人商店を営むおじさんやおばさんが、MC Hotdog(熱狗)やYoung Souljaz(楊素貞)といった地元勢のラップを流しているのだ。
さて、群雄割拠の台湾ヒップホップ・シーンには「4大レーベル」というものがある。
・<Kao Inc.>(台北)Soft Lipaらが所属。飄々として、「文化系」の感あり。
・<混血兒娯樂>(台中)ギャングスタ色が強い。玖壹壹(911)が所属。
・<人人有功練>(台南)台湾ラップ界の菩薩こと大支(ドゥアギー)が主宰。メッセージ性が濃厚。
そして、
・<本色音樂>(台北)ハードなパーティ野郎という趣きあり。
この<本色音樂>を代表するグループがMJ116だ。
12個の區(区)で構成される台北市で、最南部に位置する文山區。その文山區内の木柵(ムージャー)というエリアで育った幼馴染3人で結成されたのが、MJ116である。「ムージャー」だからMJ。そして、その木柵を含む文山區の郵便番号は116。地元をレプリゼントするこだわりを持つ連中であることがわかる。メンバーは「痩子」ことE-SO、「小春」ことKenzy、そして巨漢の「大淵」ことMutaである。
彼らは、2006年のEP『MJ. Stand Up』を出発点に、2008年にリリースした1stアルバム『How We Roll 』で台湾ヒップホップの新たな地平を切り開き、その後も2014年の『Fresh Game』、2017年の『幹大事 BIG THING』、2019年の『董Don』とアルバムをリリースしてきた。その間、E-SOとKenzyが兵役のためにグループが休止したこともある(台湾は2018年末まで徴兵制だった)が、「体が大きすぎて兵役免除」となったMutaがMC Hotdogのツアーに参加することで、MJの火を絶やさぬ活躍を続けたのだ。