20周年のポルノグラフィティから届けられた遊び心満載の“エール”ーー「VS」を聴いて

ポルノグラフィティ「VS」20周年のエール

 ポルノグラフィティの新曲「VS」は少年にも、かつて少年だった人にも刺さる1曲。記念すべき50枚目のシングル表題曲かつ、あだち充原作のアニメ『MIX』(読売テレビ・日本テレビ系)オープニングテーマである楽曲を最初に聴いた時、そんな印象を受けた。

ポルノグラフィティ 『VS(short ver.)』

 ピアノサウンドから始まるこの曲は、岡野昭仁の真っ直ぐな歌声が爽やかさを感じさせると同時に、新藤晴一によるギターサウンドが程よくロックな味付けに。そして野球をテーマにしたアニメに寄り添うような歌詞(さりげなく登場人物の名前も散りばめられているのもポイント)。「VS」というタイトルの曲が対峙するのは、過去と現在の自分だ。『MIX』はあだち充の代表作『タッチ』と同じ明青学園が舞台であり、タイトルには“過去作の要素のMIX”という意味が込められているという。

 そんな作品になぞらえる意味もあるのだろうか。20周年という記念すべき年を迎えるポルノグラフィティ自身もまた、この曲を通して過去の楽曲と向き合っているように感じる。例えば、〈あの少年よ こっちも戦ってんだよ〉という歌詞は「プッシュプレイ」の〈あのロッカー まだ闘ってっかな?〉、〈夜ごと君に話した約束たち/今も果たせずにいて〉は「ダイアリー 00/08/26」の〈夜ごと、君に話してた未来についての言葉〉という歌詞を思い起こさせる。ジャケット写真の“アポロ11号の打ち上げを見ている”という設定でデビュー曲「アポロ」を思わせるのも絶妙だ。

 そんな遊び心溢れる曲でありながら、まさに今、夢に向かっている人ーーそこには20年前のポルノグラフィティ自身も含まれるかもしれないーーへ、20年に渡り音楽シーンの第一線を走り続けてきたポルノグラフィティが送るエール。前向きなだけの歌詞とは異なる、様々なことを経験してきた彼らだからこそ歌える言葉だ。凝ったアレンジや演奏があるわけではないが、だからこそ岡野の歌声と新藤の歌詞がストレートに伝わる。二人の魅力と才能が存分に詰まったシングル『VS』は、カップリング曲の「プリズム」「一雫」と合わせて20周年の集大成の作品とも言えるだろう。

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