ポルノグラフィティならではのポップスと映画との親和性 新曲「フラワー」を聴く
岡野昭仁の切なさと強さに満ちた歌声が印象的なポルノグラフィティの新曲「フラワー」。難病の筋ジストロフィーを患いながら、自由奔放に生きる主人公と、彼に出会って変化していく周囲の人々を描いた映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』主題歌であり、主題歌入り予告編を観た際には胸に迫るものがあった。サビ部分の〈そこに咲いてるだけで こんなにも美しい 弱さと強さを持つ花よ〉という歌詞は、映画とリンクするものを感じさせながら、広くリスナーを勇気付けるものだ。
「フラワー」というタイトル通り、曲全体としては花をモチーフにし、風や太陽、雷鳴、星といった自然も歌詞の中に登場する。とりわけ、〈春には氷を割って 新しい景色に出あう〉という部分からは力強い生命の気配を感じさせる。歌詞には新藤晴一らしい、擬人化のような表現も用いられており、映画のストーリーと重ね合わせて読み込むことで、より深く楽曲が胸に染みるように思う。
また、岡野昭仁が作曲、近作には欠かせない存在となったサウンドクリエイター・篤志とポルノグラフィティが編曲を手がけたサウンドは、繊細かつ力強いピアノのサウンドが印象的で、岡野のボーカルを引き立たせるためサビ部分までは控えめに。サビに入り、目の前が開けるように一気に音が流れ込んでくる。ギターサウンドも良い味付けとなって、耳なじみの良いポルノグラフィティならではのポップスと言えるだろう。
振り返ってみると、「ブレス」(『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』主題歌)、「THE DAY」(『僕のヒーローアカデミア』オープニングテーマ)、「オー!リバル」(映画『名探偵コナン 業火の向日葵』主題歌)など、近年改めてアニメ作品との親和性の高さを示してきた。各作品の世界観を歌詞やサウンドに見事に取り入れ、寄り添いながらも、ポルノグラフィティとしての個性もはっきりと打ち出す。ロック、EDM、ラテン調など幅広いサウンドの中にもそんな共通点を感じる。
もちろんそれはアニメに限らず、「カメレオン・レンズ」(ドラマ『ホリデイラブ』主題歌)、「あなたがここにいたら」(映画『奈緒子』主題歌)といったドラマや実写映画作品の主題歌にも通ずるものとなっている。彼らにとって久々の実写映画主題歌となる今作は、作品の魅力と自らの個性を絶妙なバランスで昇華した良作。新藤らしい繊細な歌詞と岡野の歌声から溢れ出る切なさは、映画のストーリーを盛り上げる“主題歌”としての役割をしっかりと果たしているのではないだろうか。
12月15日からは全国10カ所15公演をまわる約4年ぶりのアリーナツアー『16thライヴサーキット “UNFADED“』もスタート。ツアータイトルには“UNFADED(色あせない)”な楽曲を全国に届ける、という思いが込められているという。「フラワー」も彼らの数々の名曲と同様に色あせず、長く愛される楽曲の1つになることだろう。
(文=村上夏菜)
■リリース情報「フラワー」
作曲:岡野昭仁/ 作詞:新藤晴一/ 編曲:篤志、Porno Graffitti
2018年12月14日より配信中
【タイアップ情報】
12月28日(金)公開
映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」
監督:前田哲 脚本:橋本裕志
原作:渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」(文春文庫刊)
出演:大泉洋、高畑充希、三浦春馬ほか
公式サイト