南條愛乃が語る、ライブを通して築いた“大切な場所”「今までやってきたことに間違いはなかった」

南條愛乃に聞く、ライブが大切な場所になるまで

ライブと日常生活は切っても切り離せない関係

【南條愛乃】NEW ALBUM「LIVE A LIFE」全曲試聴動画 <ORIGINAL CD>

ーーすべてご自身の作詞というのは、『東京 1/3650』での書き下ろし新曲以来です。

南條:『東京 1/3650』みたいなことをまたやりたいとは思っていたんですけど、今回はツアーを回りながらの制作だったので、果たしてやり遂げられるのか……と不安でした(苦笑)。作家さんにお願いしたほうがいいんじゃないかとも考えたんですけど、ライブ由来のコンセプトで作っていて、ライブで感じた感情を色に置き換えて、そこから再構築するという作業は南條ソロにおいては自分が書いたほうがいいんじゃないかなと。とはいっても、スケジュール的にはかなりギリギリで、本当に訳がわからなくなりましたね。「繋がりの歌」なんて歌を録り終えて数日後にラフを聴き返したら「私、こんな歌詞書いた?」と思いましたから(笑)。

ーーそんなことが(笑)。今回のオリジナルCDには「君のとなり 私の場所」を含めた6曲が収録されていますが、どの曲も歌詞の中に出てくる“きみ”の対象はそれぞれ異なると思います。ですが、全体を通して聴いたときに“きみ”という相手に対して「そばにいる、見守っていたい」という相手とのつながりをすごく大切にしながら前に進んでいくという姿勢が一貫しているなと。「and I」に〈きみとともに生きてる〉という歌詞がありますけど、そこを改めて提示しているというか強く歌った曲が揃った印象があります。

南條:確かにそうですね。ずっと根底にあるのはやっぱりお客さんの存在で、お客さんのことをそのまま歌っている曲(「繋がりの歌」)もあれば、「お客さんの中にはこういうシチュエーションに当てはまって、こういう空気感を体験したことがある人がいるかな」とか「こういう感情を持ってほしいな」という曲もあるし。例えば「and I」は登場人物が2人で、夜更けの時間帯に街明かりだけで部屋の中、静かに話しているというシチュエーションをイメージしたんですけど、それも生きているということがひとつテーマにもなっているんです。近くに誰か大事な人がいてくれる安心感ってあるじゃないですか。私はよく、曲を聴いたときにその人その人にとっての大切な誰かの顔が浮かんでくれたらいいなとか、誰かに対して自分がこうしたいなと思う瞬間があったりするかなとか思うんですけど、特に最近はどの曲を書いていても「みんなどんな感じで聴いてくれているんだろう?」という思いがずっと根底にある気がします。だから、人の存在を当たり前に書けるようになってきたのかもしれないですね。

ーーなるほど。

南條:でも、そういうことも昔はテーマとして書こうと思わなければ、なかなか……「Dear × Dear」(※2014年発売の2ndシングル『あなたの愛した世界』およびアルバム『東京 1/3650』収録)みたいな初期の曲は、たまたま友達と話していて「こういう空気感いいな」と思ったところから作ったんですけど、それもテーマを決めたからできた曲で。わりと自分が主体になっている曲が多いんですけど、最近は自分というより相手の存在が見えやすい曲が、もしかしたら多いかもしれないですね。

ーー言葉や思いを聴く人にちゃんと伝え届けることの意味をより理解したからこそ、こういう表現の仕方が強まっていったところもあるのかなと。

南條:韻を踏んだりしてよりよく聞こえるようにする手法もありますけど、私にはそういうことができなくて。それよりも1曲を通しての気持ちの流れだったり、曲を聴いてくれたその5分間で人がどれだけ心を動かされるか、そういう歌詞を作りたいなって気持ちが強いのかもしれないですね。あとは、声優をやっているのもあって言葉は大事にしたいなと思っていて。普段は言葉遣いが悪いんですけど(笑)、やっぱり書き文字にすると言葉ってより強く見えるじゃないですか。だから、書き文字にしたときに汚い言葉を使いたくないというのが昔からあって。でも、変な言い方かもしれないですけど、結局は絵を描いている感覚にすごく近いのかもしれないですね。綺麗な色を使いたいとか綺麗に描きたいとか、細かいところを最後に描き込みたいとか。ちょっと、そんなふうにも思いました。

ーーそういう作品集に『LIVE A LIFE』というタイトルを付いたのもすごく象徴的ですね。

南條:やっぱりライブ作品というのが念頭にあったので、ライブという言葉は使いたいなと思っていて。『LIVE A LIFE』という語感もいいし、今の自分にはライブと日常生活は切っても切り離せない関係になっているし。ジャケット写真もそうなんですけど、日常生活を象徴する部屋のシチュエーションにライブのスポットライトを投影して撮影したので、日常とライブが重なり合っているみたいな、象徴的なジャケットになったと思っています。

ファンの皆さんと一緒にもの作りをしている感覚

『Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-』ライブ模様

ーー現在(※取材時)行っているアコースティックツアーは47都道府県を数回に分けて回るというものですが、第1弾の17本が終わったあとも続いていくわけですよね?

南條:全部回るまでにどれだけかかるかは話し合い中なんですけど、全都道府県に行こうと決めてしまいましたので(笑)。「全国の応援してくれる人たちに会いに行ったら?」と案をくれたのはプロデューサーなんですけど、「そんな体力、自分にあるかな?」と不安に感じていたら「何回かに分けてもいいし。ソロのコンセプト的にはすごくハマると思うよ」と言われてすごく納得したんです。それに、私のソロライブツアーは大きめのところからはじめさせてもらったので、今こうして後ろの人まで顔が見えるライブハウスの距離感で生楽器の音だけでお届けするというのは、すごく“人対人”の交流をしている感じが強くて。それをソロデビューから7年経った今やれているのは大きな意味がある気がするし、今後の活動にも絶対にプラスに作用することしかないと思います。

ーーでも、これがソロを始めた頃だったら……。

南條:絶対にできてないですよ!(笑)。それが5周年を経た今というのが、ある意味ベストタイミングなんだなという気がしています。

ーーそう考えると、ここまでの一つひとつの活動すべてがつながっているんですね。

南條:そうですね。『Nのハコ』も言ったら根本にあるのはネガティブな気持ちなので、作品にするのはちょっと躊躇するじゃないですか。でも、それをあえて隠さず作品に昇華することで、自分の中でも決着がつくかなと思いますし。ある意味マイペースというかわがままというか、よく言えば自然体で無理をせずにやってきているからこそ、いい具合につながっているのかもしれないです。これが無理をしていたら、どこかでこんがらがってしまう部分も出てきてしまうかもしれない。でも、今も楽しくソロの楽曲が歌えているというのは、今までやってきたことの運び方や気持ちの変化というのが間違いではなかったことを証明できているのかな。

ーー南條さんにとっては、この順序が最適だったと。

南條:はい。昔からよく思うことなんですが、その人らしいというのが一番強いなと。すごく変なことをしていてもそれがその人にとって一番輝いて見えるのなら、それが最強じゃないですか。なので、今後もなるべく自分の気持ちに嘘をつかないでもの作りをしていけたらいいなと思います。もちろん、それがひとりよがりにならないで、応援してくれる人ありきの土台の上で、ある意味ファンの皆さんと一緒にもの作りをしているような感覚でこれからもやっていきたいですね。

(取材・文=西廣智一/写真=マツモトタカユキ)

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■リリース情報
ニューアルバム『LIVE A LIFE』
2019年7月24日(水)発売
【初回限定盤<5CD+Blu-ray+フォトブック>】¥8,000(+税)
【初回限定盤<5CD+DVD+フォトブック>】¥8,000(+税)
【通常盤<5CD>】¥5,500(+税)
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

<CD収録内容>
ORIGINAL CD
01. 君のとなり わたしの場所(TVアニメ「同居人はひざ、時々、頭のうえ。」エンディングテーマ)
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:奥華子
02. 君との音色 <新曲>
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:丸山真由子
03. and I <新曲>
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:齋藤真也
04. an-tiit <新曲>
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:黒須克彦
05. Gift <新曲>
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:安瀬 聖
06. 繋がりの歌 <新曲>
  作詞:南條愛乃  作曲・編曲:増谷 賢

LIVE CD1【市川市文化会館 Day2  2018.9.23】
01. 夜、静かな夢  
02. believe in myself
03. Recording. 
<MC> 
04. Dear×Dear
05. 7月25日
06. だいすき
<MC> 
07. だから、ありがとう
08. +1day

LIVE CD2【名古屋国際会議場 センチュリーホール  2018.9.29】
01. simple feelings
02. 灰色ノ街ヘ告グ
03. idc
<MC> 
04. NECOME
05. Dear..
<MC> 
06. ヒカリノ海
07. ヒトビトヒトル 
08. ツナグワタシ 
09. 今日もいい天気だよ 
10. Gerbera
11.ゼロイチキセキ

LIVE CD3【岸和田市立浪切ホール  2018.10.8】
01. 一切は物語
<MC> 
02. 飛ぶサカナ
03. スキップトラベル
04. リトル・メモリー
05. 逢えなくても
06. 光 
07. カタルモア 
08. iD* 
09. pledge
10. 螺旋の春 
11. 光のはじまり
12・ R・I・n・g・

LIVE CD4【静岡市民文化会館 大ホール  2018.10.14】
01. THE MEMORIES APARTMENT
02. あなたの愛した世界
03. 黄昏のスタアライト
04. きみを探しに
05. 小さな恋の花
06. ナチュラルカラー
<-BAND inst->
07. 一切は物語
08. 飛ぶサカナ
09. blessing symphony
10. 光のはじまり
11. 君が笑む夕暮れ
12. ゼロイチキセキ
13. ・R・i・n・g・
14. みんなの”好きな言葉”で書いた歌

<初回限定盤収録内容>
ライブ映像盤(Blu-ray/DVD):「Live Tour 2018 -THE MEMORIES APARTMENT-」静岡公演を収録
フォトブック(24P)
収録内容等は変更になる可能性あり。

■アルバム発売記念イベント情報
イベント内容:特製色紙サイン会
開催日時・会場:
8月17日(土)東京都内某所
8月24日(土)大阪市内某所
8月25日(日)名古屋市内某所
※参加方法ほか詳細はオフィシャルサイトにて。

南條愛乃オフィシャルサイト

南條愛乃オフィシャルファンクラブ「ごきんじょるの友の会」

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