SCANDAL、『Fuzzy Summer Mood』ツアーで披露した新曲「Fuzzy」に込められたメッセージ

SCANDAL、新曲に込められたメッセージ

新曲「Fuzzy」に込めたファンへのメッセージ

 中盤は、アッパーのライブチューンの連続で火照った身体をチルアウトするように、テンポ感を少し落とした楽曲を披露した。「ヘブンな気分」は、サイケデリックなサウンドが秀逸。HARUNAのダウナーなボーカルと、肌にまとわりつくようなサウンドが空間に広がり、観客は心地よいグルーヴに身体を揺らした。浮遊感のあるシンセとコーラスのハーモニーで聴かせる「窓を開けたら」は、R&Bテイストの感じられるミディアムバラード。そして「まばたき」は、TOMOMIの甘さのあるボーカルと共に、ガーリーな世界観へと導かれる。ライブという非日常空間のなかにありながら、ふっと日常へと引き戻してくれるような不思議な感覚もあり、ただ熱く攻めるだけではない、今の彼女たちの音楽が身近に感じられた瞬間だった。

 この日は新曲「Fuzzy」も披露して、観客を喜ばせた。夏の終わりのちょっとした寂しさと重ねながら、漠然とした不安でこぼれる涙を歌った、切なさと狂おしさがあふれたナンバー。軽やかなリズムと胸を締め付けるようなメロディ、何気ない恋愛のワンシーンを切り取ったような歌詞には、今のSCANDALのスタイルが詰まっている。この歌詞に出てくる2人もそうだが、バンドとファンの関係には、約束も決められた未来もない。だからこそ、今のこの瞬間にしかないライブを、精一杯楽しみたいと願う。同曲の歌詞に出てくる、〈このまま永遠にあなたの傍にいたい〉というフレーズは、かけがえのない今という瞬間を、ずっと繋いでいきたいという4人の願いが込められた、ファンへのメッセージだと感じた。

 また終盤には、「瞬間センチメンタル」や「恋するユニバース」など、SCANDALを代表する楽曲が次々と演奏された。アンコールでは、MAMIがボーカルを務める「声」や、「STANDARD」なども歌われ、“神セトリ”と呼べる内容で、観客を再び熱狂させた。そしてラストには、10年以上に渡って人気の「SCANDAL BABY」を歌った。1stアルバム『BEST★SCANDAL』の1曲目に収録された、SCANDALのライブでは定番の曲。メンバーが頬を寄せ合ったり、仲良くふざけ合うような雰囲気で演奏する姿に、客席にも自然と笑顔が広がった。

 MCは、「今回のツアーは群を抜いてお客さんが、格好良かったです。こういうお客さんに見て欲しくて、私たちはやってきたんだなと実感しました。くさいことを言うけど、“みんなの人生を背負ってもいい”と思いました。みんなからもらったものを何倍もの幸せにして、ここから返すからね!」と、観客に向けてメッセージを送ったHARUNA。「マスターピース」の歌詞に、〈積み上げてきたものを壊して辿り着いた景色がある〉と出てくるが、彼女たちが追い求めて辿り着いた景色が、まさしくこの日目の前に広がっていた。

(撮影=ヤオタケシ)

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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