BiSH『CARROTS and STiCKS』で追求したポップとロックの二面性 新境地見たツアー最終公演

BiSHが体現した、ポップとロックの二面性

 千秋楽とあり、ツアーの思い出を語り出すBiSH。ふと、最後の順番になったアユニが床を足で踏みながら無言で“ストンプ”と“クラップ”でリズムを刻み始めると、彼女の動作につられたメンバーがQUEENの「We Will Rock You」を口ずさみ、その流れから軽快なメロディが耳に焼き付く「I am me.」がスタート。

 静と動の緩急が伝わってくる「MORE THAN LiKE」や、モモコのフレーズに続いて客席が「いいよ!」と大合唱で応える場面も目立つ「HiDE the BLUE」。アイナとチッチの歌声がさらに力を増す「My landscape」とじっくり耳を傾けられる曲が続くかと思いきや、次の「SMACK baby SMACK」で一変。曲中では、アイナが「BiSHのこと好きな人、手を挙げて行こうぜ!」と客席を鼓舞し、ハシヤスメが「もっともっと!」と煽ると、フロアはみたびの激しさを取り戻した。

 そして、ツアーの感想を振り返るチッチが「今日の公演が終わり一歩外へ出たら、私もあなた方も毎日の生活に戻る。喪失感に襲われる瞬間もあるだろうけど、一人じゃない。その気持ちはメンバーも同じ」と客席へのメッセージを伝えたのち、BiSHの抱く決意がにじむ「プロミスザスター」と「オーケストラ」を続けざまに披露。拳を掲げながら客席と一体になる「サラバかな」を歌い上げ、本編の最後となった「beautifulさ」では、残り少ない時間を記憶へ焼き付けようと前へ前へと観客が押し寄せ、フロア全体が一つの塊と化していた。

 その後、アンコールを受けてふたたびメンバーがステージへ登場。ラストを飾った「ALL YOU NEED is LOVE」では、チッチからの「ここにいる人たちは全員仲間です。最後いっしょに歌いませんか?」という言葉を受けた“清掃員”たちが、いっせいに肩を組みながら、ステージへ必死に食らいついていた。

 終焉間際には、フロアに向かい「また会える日まで、強く生きてください」と語りかけたチッチ。みずから“史上最多”を掲げた全国ツアーの完走を経て、10月からは“史上最長”を謳い全国20都市を巡る計24公演(全公演バンド編成)のホールツアー『NEW HATEFUL KiND TOUR』へと旅立つ。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

BiSH公式サイト

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