TWICE「TT」など手がけるリア・キムが明かす、K-POPにおけるダンスと振付の重要性

リア・キムが語るK-POPのダンスと振付

 J-POPシーンの最前線で活躍する振付師にスポットを当て、そのルーツや振付の矜持をインタビューで紐解いていく連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」。今回は特別編として、TWICE「TT」の振付などで知られるリア・キムにインタビューを行った。コレオグラファー/ダンサーとしての活動のほか、1MILLION DANCE STUDIOで講師を務めたり、ショーアイコンとしても活躍し、世界的に知られる存在に。しかし、日本でインタビューを受ける機会は、これまでほとんどなかったそうだ。そんな彼女のルーツから、振付する際に意識していること、K-POPにおけるダンスの重要性まで、じっくりと語ってもらった貴重な内容になった。(編集部)

■連載「振付から紐解くJ-POPの現在地」インデックス
第1回:s**tkingz
第2回:TAKAHIRO 前編後編
第3回:辻本知彦
第4回:YOSHIE

「怖がらず、自信を持って全部やってみたい」

ーーリアさんはコンテンポラリーやジャズなどオールラウンドに踊りこなしていますが、ルーツはどこにありますか?

リア・キム:もともとストリートダンサーを長くやっていて、ダンスバトルにも出たりしたのですが、ポップピン、ロッキング、ヒップホップ、ワッキングなど、たくさんのジャンルを習いました。大学に進学せず、お父さんを説得してダンススクールに通ったのが役に立っていると思います。

ーーリアさんの振りは女性らしい身体を活かした、しなやかな動きやセクシーな腰つきが印象的です。これにはこだわりがあるのですか。それとも感覚的に身につけたものですか。

リア・キム:ワッキング(WAACK)という、ゲイダンサーから生まれたダンスが好きでずっと練習していました。あえて女性らしさを意識してやったわけではなく、ゲイダンサーが踊るワッキングは少し過剰な動きなので、そこからセクシーさが身についたんじゃないでしょうか。ヴォーギング(VOGUE)やワッキングが流行ったときに、男性ダンサーさんが踊っている映像をたくさん見ました。特にジョンテさん(JONTE' MOANING)は、自分が若いときから活躍していましたね。

ーーK-POPのガールズグループのダンスはキュートさやセクシーなポーズが1つのシンボルになっているような気がします。

リア・キム:昔、たくさんのガールズグループやアイドルをトレーニングしていた時、私を含めたダンサーたちが、そういう振り付けにハマっていました。だから意識して作ったというよりは、自然に影響されたのかもしれません。

ーーリア・キムさんはどんな手順で、どんなことをヒントにして振り付けを考えていますか?

リア・キム:以前は海外の有名な振付師を意識して、それよりもっと技術的に上手く見せたいという欲がありましたが、最近はやっとその欲を排除できて。音楽を聴いて素直に感じることを表現するようになりました。長い間ダンスをしてきて、身体にしみこんでいるので、音楽を聴いたら感覚的に振り付けが出てくるようなイメージです。K-POPの場合、最初から鏡を見て作るというよりは、音楽を繰り返しちゃんと聴いて、机に座って、そこから全体の構成を作って、まず一番ポイントになるところの振り付けをします。花束で例えると真ん中にバラがあって、それを中心にどう花を飾るかを考えるように、ポイントとなる振り付けが一番輝けるよう、他の振り付けを配置するという形で作ります。

ーーTWICEの「TT」の振り付けはとてもキュートですが、キャッチーな振り付けを生み出すポイントはありますか。

TWICE "TT" M/V

リア・キム:そのアーティストが持っているキャラクターと、曲が持っているカラーと似合うかをメインで考えています。韓国は音楽番組で顔にズームアップすることが多いので、顔周りで目立つ振りや、みんなが覚えやすく踊れるような振りを意識しています。作っている時は世界的に人気が出るかどうかはわからないので、自分が作った振りに確信を持ったことはほとんどありません。自信があってもそんなに人気が出ないときもあるし、これはまあまあかな、と思ったものが人気になるときもあります。

ーーリアさんはスタイルがとても良いですが、コレオグラファーとして気をつけていることや、マイルールはありますか。

リア・キム:振付師は、アーティストではありますが、アスリート並みのフィジカルが重要だと思うので、踊るための体力や食事など自己管理は徹底的に意識してやっています。ダンサーの中には、お酒をたくさん飲んだり、あまり気にしない人もいるんですけど、自分は長くハッピーに踊りたいので、管理をしっかりしています。アスリート並みの管理が必要だと思います。スタイルを意識するというよりは、体力作りや健康管理をしっかりしているから、自然と今のような体型になったんだと思います。

ーーファッション界でもショーアイコンとして活躍されていますが、服に関するこだわりはありますか。

リア・キム:自分の中ではルールはないです。服は自分のイメージを表現できるものだと思います。コレクションを見ているときも、独特なものにインスパイアされたり、「どうやって作ったの?」というクリエイティブなものに反応します。そういうファッションデザイナーが好きで、デザイナーの芸術的な作品として、服を所有したい、そういう服で踊りたい、写真を撮りたいと思います。独特でクリエイティブなものが好きですね。

ーーダンサーとしては最近、ナ・ユンソンさんのMVで、これまでにないアーティスティックなダンスを披露されていました。

10집 발매 나윤선..."리아킴과 함께해요" / YTN

リア・キム:常に新しいアイデアが出ていて、ダンス以外にも、ファッションやミュージカル、映画など様々なものにインスパイアされています。アーティストとして、音楽家、美術家、ファッションデザイナーともコラボできると思うし、オープンマインドなので、多様な活動をしていて、独特に見えると感じる人も多いと思います。好奇心と冒険心があるので、新しい提案をいただいたときには怖がらず、自信を持って全部やってみたいと思っています。

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