SM ユ・ヨンジン、JYP パク・ジニョン、Big Hit パン・シヒョク……K-POP支えるプロデューサー陣
韓国には数多くのK-POPグループがいるが、彼らの個性を生み出す陰の立役者がプロデューサーだ。プロデューサーは“音楽の色”を作り出す職人ともいえるだろう。中には音を聞いただけで、誰がプロデュースしたかがわかるくらい特徴的な個性を持つプロデューサーもいる。
例えば、東方神起やSHINeeなどが所属するSMエンターテインメントの場合、「SMミュージック・パフォーマンス(SMP)」という独自の音楽スタイルを確立している。ダンスサウンドに激しい踊りと力強い歌詞が乗っかる音楽とパフォーマンスを見たら「これがSMの音楽だ」と感じるであろう、インパクトのあるスタイルだ。このスタイルを生み出したのがユ・ヨンジンという一人のプロデューサーだ。
今回はK-POP界で独自の色を生み出してきた3人のプロデューサーに着目してみたい。
SMのスタイルを作り出したユ・ヨンジン
「SMの音楽面における顔」と言っても過言ではないほどSMアーティストたちの色を作り上げてきたユ・ヨンジン。1971年生まれの名プロデューサーのキャリアのスタートはダンサーだった。1989年から1990年までダンサーとして活動したのち、兵役を経て1993年にSMエンターテインメントより作曲の能力を認められ、歌手としてデビューを果たした。
1996年に同じ事務所のアイドルグループ・H.O.Tのデビューアルバムのプロデュースを手掛けたことをきっかけに、ユ・ヨンジンはSMの音楽の顔となる「SMP」を生み出した。アイドルたちといえばキラキラした人たちというイメージがあるが、そんな彼らが、流行りのダンスミュージックに社会批判を含む強い歌詞を乗せ、激しくダンスパフォーマンスをするというのは大きなインパクトがあり、多くの人たちを引きつけた。そして、このスタイルがSMの形となっていく。
特に、SM所属の男性歌手たちの高音でバイブレーションを効かせた独特な歌唱法は「ユ・ヨンジン式歌唱法」と言われているという。これはR&Bに強く影響を受けたユ・ヨンジン自身の歌い方からきている。また、ユ・ヨンジンはダンサーであり歌手でもあったので、この両面を生かしたプロデュースを行うのも特徴だ。SMアーティストの魅力は歌手としてだけでなく、ダンスの部分も大きく占めている。ここにも元ダンサーであるユ・ヨンジンのスタイルが引き継がれているのではないだろうか。
最近では東方神起のユンホのソロアルバムでもユ・ヨンジンの名前を見ることができる。一部の曲ではユ・ヨンジンがコーラスとして参加している。また、2016年にはEXOのD.O.とユ・ヨンジンでデュエット曲「Tell Me (What is Love) 」も発表しており、「元歌手」としての美声を聞くこともできる(まだまだ現役と呼べるほどの声量と歌唱力に驚く)。
他にも東方神起の「Why? (Keep Your Head Down)」、SHINeeの「Lucifer」、EXOの「MAMA」など彼が手掛けた作品は数多くある。この機会に、SMのスタイルを作り上げたユ・ヨンジンの作品に触れてみてほしい。
韓国音楽シーンの“プレイングプロデューサー”、パク・ジニョン
JYPエンターテインメントの顔と言えば、パク・ジニョンだ。2PMやGOT7、TWICEらが所属するJYPエンターテインメントを立ち上げた張本人であり、各グループのプロデューサーを行いながらも、現在も現役の歌手として活動を行っている。2016年に開催されたJYP所属アーティストたちが参加するコンサート『JYP Nation』にも、アーティストの一人として参加した。まさに韓国音楽界の“プレイングプロデューサー”と言えるだろう。
1992年にグループ、パク・ジニョンと新世代でデビューをしたのち、1994年にソロ歌手として再デビューをする。セクシャルな衣装と独特なダンスは当時話題を呼び、人気を得ていった。
歌手活動と並行しながら事務所から独立し、1997年にJYPの前身となる芸能事務所・テホン企画を設立する。この時からプロデュースを行うようになり、ボーイズグループ・godを生み出しヒットさせた。その後、Wonder Girlsや2PMなどのグループを続々と生み出し、JYPを韓国3大芸能事務所の一つにまで成長させたのだ。
パク・ジニョンの生み出す作品の特徴は、大衆的でキャッチーであるということだろう。大ヒットしたWonder Girlsの「Tell Me」のように、わかりやすいメロディラインと、一度聴いたら忘れられないサビ、そして誰もが簡単に覚えられる歌詞。パク・ジニョンが作り出したこのスタイルは、そのままJYPのカラーにもなっている。
2015年にデビューしたTWICEでは「SIGNAL」(2017年)をパク・ジニョンが手掛けている。一緒に歌い踊りたくなるメロディと歌詞、そして誰にでもできそうなポイントダンスの振り付けは、JYPのカラーそのものだ。先に紹介したSMのユ・ヨンジンとは対照的とも言えるスタイルだが、そこも面白いところだ(SMのダンスは複雑で、簡単には踊れる要素は少ない)。
パク・ジニョンの目指すスタイルは、大衆的であり多くの人に愛される音楽なのかもしれない。彼自身が現役歌手であるからこそ、直に音楽シーンを把握し敏感に取り入れながらも、ファンの目線も忘れない。そのスタイルを今後も貫いていくのではないだろうか。