クイーン・ナイジャ、キアナ・レデ……2019年上半期新世代R&Bアーティスト作品を振り返る

 EXO、テミンらへの楽曲提供も プロデュースとしても敏腕:レイヴィン・カリ

 また、女性シンガーだけでなく男性陣のリリースの勢いもあった上半期だが、サンタモニカを拠点に自身でプロデュースも手がけるシンガーソングライター、レイヴィン・カリはその中でも若手注目株の筆頭だろう。2017年にプレイボーイ・カーティのデビューミックステープに客演したことで脚光を浴びたほか、EXOやテミン(SHINee)、Red Velvetらの楽曲制作を担当。さらにはクインシー・ジョーンズから寵愛を受けるという経歴からも、彼の大器ぶりは明らかだ。各社争奪戦の末、今年5月にはインタースコープから待望となるフルアルバム『Low Tide』を発表。影響を受けたアーティストにスティーヴィー・ワンダーやThe Beatles、2パックにデヴァンテ・スウィング(Jodeciのメンバー)を挙げる通り、多様なバックグラウンドがうかがえる傑作で、The Internetのシドとドリーミーに絡む「Do U Wrong(feat.Syd)」や、爽快に駆け抜けるブギー「Cassandra」、ブラコン期を思わせるスロウジャム「1 on 1」など駄曲は一切なし。既発作から一連のカラフルなアートワーク同様に、色彩豊かな出来栄えとなっている。ドラムにピアノ、ベースまで自演するレイヴィン、ぜひとも来日公演を熱望したい。

Leven Kali - Do U Wrong ft. Syd
Leven Kali - Mad At U

 “ザ・ペン”ことショーン・ギャレットも彼に注目:エイヴェリー・ウィルソン

 最後に紹介するのは、今回のラインナップの中では一番の正統派な“歌うまシンガー”、エイヴェリー・ウィルソン。幼少期の頃から地元コネチカット州のオープンマイクで名を馳せ、2012年に人気オーディション番組『The Voice』のシーズン3に登場した彼は、テヴィン・キャンベルを想起させるハイトーンボイスで人気を博したが、惜しくも途中で敗退。その後はビヨンセやアッシャーのソングライターとしても知られるショーン・ギャレット(ザ・ペンの愛称で知られる)に目をかけられ、巨匠クライヴ・デイヴィスのもと、<RCA>と契約するもアルバムリリースには至らず……と実力を持て余していたが、数年を経てインディペンデントにベースを移し活動を再開。6月18日に配信されたばかりのEP『8:34』(タイトルはエイヴェリーの産まれた時刻)は、R&B度数がグンと高まった充実作となった。セクシーさと清潔感が同居した先行シングルの「Callin’」も素晴らしいが、極め付けはクリストファー・ウィリアムズによる1990年のクラシック「I’m Dreamin’」のメロディを用いた「Reckless」。ニュージャックスウィング特有のハネ感をトラップソウル的なビートに落とし込むという手法で、ありがちなオマージュとは一線を画した新鮮な仕上がりに。愚直なまでの歌バカっぷり(褒め言葉)が気持ちよく今後もっと大切にされてほしい才能だ。

Avery Wilson - Callin' (Official Music Video)
Reckless

◾️Yacheemi
読み方はヤチーミ。ダンサーとして国内~ジャマイカでバトル・コンテストでの入賞を経験し、ひょんなことからヒップホップ・グループ「餓鬼レンジャー」の正式メンバー兼マスコット「タコ神様」(要検索)として加入した異例のフリースタイラー。ナイトクラブを主戦場にしながら、DJ・ライターとしても駆け出しで活動し、バンド「G. RINA & MIDNIGHT SUN」ではダンス&コーラスも担当するなど、各所で擬態を続けている。

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