黒崎真音×ZAQが語る、アニソン歌手としての危機感とサバイブ術「ギリギリのところで戦ってる」

 黒崎真音がニューアルバム『Beloved One』をリリース。これに伴い、リアルサウンドでは2回にわたって黒崎の特集を展開する。

 その第1弾として今回は、ともに「シンパシーを感じる」と口を揃える彼女と盟友・ZAQの対談を企画。ゴシックかつドレッシーな衣装に身を包み、ゴリゴリのメタルヘッズを自称する黒崎と、サウンド/スタイリングともにヒップホップヘッズ全開のZAQ。一見水と油のような両者の、それでも繋がるフレンドシップの正体とは? そして人気、キャリアともに十分な女性アニソンシンガーによるアニメソングの作り方とは? 幅広く話を聞いた。(成松哲)

「真音さん、なにかに抗ってますよね?」

【左から】黒崎真音、ZAQ

ーーおふたりの楽曲や今日のスタイリングを比べてみると、この対談って意外な組み合わせのような気もするんですよ。

黒崎真音(以下、黒崎):そうですか? 普段から仲良くしていることもあって今日もZAQちゃんに対談をお願いさせてもらいました。

ZAQ:ごはんを一緒に食べに行っても、ファッションの話ってほとんどしないですもんね。

黒崎:音楽の話にしても、お互いの好きなジャンルや目指すサウンドの話というよりは、シンガー同士だからできる話……体やノドのメンテナンスの仕方みたいなことを話すって感じですし。でもZAQちゃんにはなんかシンパシーを感じるんです。初めて見たときから「なんか似てるな」って思ったというか。

ZAQ:それは私も思ってます。

ーーそもそもその「初めて見たとき」っていつ頃なんですか?

黒崎:6~7年前に私がMCをやっていた『アニぱら音楽館』っていうテレビ番組にZAQちゃんがゲストに来たときですね。で、デビュー前にZAQちゃんがやっていたアルバイトの話をして……。

ZAQ:そうだ! 私、カラオケのガイドボーカルのアルバイトをしていたんですけど、そのとき真音さんの曲を歌っていたので、そのお話をさせていただいたのが最初の会話でしたよね。

黒崎:私の「UNDER/SHAFT」っていう曲を歌っているって言ってくれて。

ZAQ:だから某メーカーのカラオケで「UNDER/SHAFT」をリクエストすると私の歌声が流れるんです(笑)。

ーーそしてお互いの印象が「なんか似てるな」だった、と。

黒崎:というか「あっ、この子、ヤンキーだな」って思ったんですよ(笑)。

ZAQ:あはははは(笑)。

黒崎:すごく気合いが入っていたというか、やってやるぜ感が強くてむちゃくちゃトンガってたから、すごく印象に残っていたんです。そういう気持ちって自分にもあるから、初対面の時点でZAQちゃんには近いものを感じていたし、その番組での共演以来ライブやイベントで一緒になることが多くなって。で、連絡先を交換したのが……。

ZAQ:『ニコニコ超会議』(2015年)ですね。

黒崎:『超会議』のステージでZAQちゃんの「INSIDE IDENTITY」をコラボさせてもらったときだよね。

ZAQ:そうですね。で、私も私で真音さんの書く歌詞には「この人、常になにかしらに抗ってるよな」っていう印象がずっとあって。

黒崎:うん。生まれたときから抗ってるから(笑)。

ZAQ:で、私も常に抗って生きてるんですよ(笑)。

ーーだから「似ている」と。

黒崎:ちょっと運命的なものを感じるんですよ。でも、お互いなにに抗ってるんだろう?

ZAQ:私は“自分”ですね(即答)。

黒崎:あー、確かに。私も自分っていう存在は謎というか、一番わからない存在だったりする。

ZAQ:その訳のわからない自分に抗って、理想の自分の姿やあるべき自分の姿を探し続けるために我々は曲を作ってるんでしょうね。

ーーただ最初に触れたとおり、黒崎さんとZAQさんの楽曲はそれぞれサウンドデザインが大きく違う。お互いの楽曲やパフォーマンスのことってどうご覧になってます?

黒崎:天才ですね。作詞もできて、作曲も編曲もできて、ステージで歌っていたり鍵盤を弾いていたりする姿はすごく自由に見えて。メチャメチャ強いタイプ。……なんて言うんだろう? ガンダム? あっ、ZAQちゃんだからガンダムじゃなくて、ザクじゃなきゃいけないのか!

ZAQ:あはははは(笑)。

黒崎:とにかくそういう飛び抜けた性能を持っているタイプなんだけど、それだけじゃない。ふとした瞬間にちょっと心配になっちゃうくらい儚げな表情を見せてくれるから、私の中ですごく好感度が高いんです。天才型なんだけど、それだけじゃない。ちゃんと人間としてチャーミングな横顔を持ってるところが好きですね。

ZAQ:あざーっす!(笑)。でも真音さんは私にないものをいっぱい持っているじゃないですか。歌っている楽曲はもちろん違うし、歌唱力の高さもピカイチ。パフォーマンスしていても花があるし、その“黒崎真音という花”の咲かせ方をきちんと知っている。自分の魅せ方に自覚的だし、研究なさっているのがステージを観ていればわかるんですよね。私は真音さんのようにはなれないからこそカッコいいなって思うんですよね。

黒崎:あざーっす!(笑)。

ZAQ:しかもちゃんとキレイに咲いていながら、さっきお話した抗っている感じ……闘志や貪欲さでも魅せてくれるんですよ。こんなに可憐な見た目をしているんだけど、声に闘志を乗せて、そのまま言葉をお客さんの胸までまっすぐ飛ばすことができるのがスゴいなと思ってます。それでいて、そういう苦労を私たちには見せない方ですし。

黒崎:苦労見えてない?

ZAQ:努力なさっているのは余裕で想像できるんですけど、それをあからさまにはしないタイプっていう印象があります。

黒崎:でもZAQちゃんも努力や苦労をあえてアピールしたりはしてないよね?

ZAQ:あっ、私、がんばってないんで(笑)。

黒崎:がんばってなきゃ、あんなすごい曲書けないよ(笑)。でもたぶんZAQちゃんは今、褒め言葉として「黒崎真音は苦労を見せないタイプだ」って言ってくれてると思うんですけど、これって私の悩みでもあるんです。割と苦労しているタイプというか、雑草タイプのシンガーなので。

ーー実は苦労している?

黒崎:そうですね。ZAQちゃんみたいに小さい頃に音楽の専門的な教育を受けてきたわけではない。本当に自分から歌うためのチャンスを掴みに行かないと掴めない音楽人生だったので。10代の頃は自分でライブハウスに「出させてください」って電話して、「じゃあチケットノルマ20枚で」って言われて「誰を呼べって言うんだ?」と思いながらも、どうにか友だち20人を集めて1曲だけ歌わせてもらうっていうことを長く続けていたので。

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