BTS、デビュー6周年までの背景 “グループ内のバランサー”ジンが果たした役割

 このように、どちらかといえばキャラクター面で目立つことが多いが、ジンの最も大きな役割の1つは“グループ内のバランサー”と言えるだろう。デビュー後もほとんどのグループがひとつ屋根の下で寝食を共にする韓国のアイドルグループでは、家族のような特殊な関係性が芽生えやすい。そのような状況においてはパフォーマンスや楽曲制作などでのリーダーとはまた別に、生活面での真っ当さを保つためのリーダーも必要だろう。年功序列的な社会の韓国では年齢での上下関係が出来やすい傾向がある。しかし、成功しているアイドルグループでは、リーダー以外にグループ内の調整役を務める年長メンバーの存在が珍しくない。

 ジンは最年長であるが、年下メンバーと同じ目線ではしゃいだりいじられることに躊躇がなく、メンバーと衝突した時も自分から謝ることができる姿は様々なビハインドやドキュメンタリーで周知されている。とかくファンに発言が向きがちなBTSの中では珍しく、ファンドム外の一般リスナーに感謝の言葉を述べたり、ルーティンになりがちなコンサートツアーで毎回異なるサプライズを個人で用意したりと、開けた視点の持ち主でもあるようだ。BigHitの代表パン・シヒョクは、ジンのことを「デビュー前から変わらず常識的な感覚を失わないメンバーで、ほかのメンバーが逸脱しないように力を貸してくれる存在」と表現していた(参考:OSEN)。人気アイドルであるほど、一般社会とは隔離された環境で多感な時期を過ごさざるをえないが、そういう中で年長メンバーが「一般人の感覚を失わない」姿を見せることはグループ全体がバランスをキープする上でポジティブな効果があるのだろう。他メンバーがオンライン大学に進学した一方で、ジンは唯一活動の合間に一般の大学に通学し、大学院まで進学したメンバーでもある。

 現在では世界で最も注目されるボーイズグループの1つとなったBTSだが、人気が高まってからも順風満帆というだけではなかったようだ。2018年末の『Mnet Asian Music Awards(MAMA)』大賞受賞スピーチで、「2018年初めにかなり辛い時期があり、解散も考えた」というジンの発言があった。

BTS at 2018 MAMA in HONG KONG | All Moments

 2018年頭といえば『Billboard Music Awards (BBMA)』で2度目のトップ・ソーシャル・アーティストを受賞し、米音楽賞『AMA』でのパフォーマンスなどアメリカでの注目度が急速に高まっていた時期でもある。膨張していく海外人気や注目度、韓国内からの期待と疑心の目など、自分たちの期待や予想を超える範囲の出来事に対する戸惑いや困惑は、当時の発言などからも断片的に伺うことは出来た。喜ばしいはずの人気や期待からくるプレッシャーに耐えきれず、グループとしてのバランスを失う可能性もあったはずだ。しかしジンがあえてそのことを口にしたのは、逆に今現在はグループとしてあらゆる“覚悟”が固まっている証だとも言えるのではないだろうか。他人同士が集まって形成されている“グループ”のモチベーションや目的意識を長期間保つことは難しい。飛び抜けて波乱万丈なキャリアの末に6周年を迎えたBTSが“同世代の青年達の集団”としての関係性を保つ上で、ジンは最も重要な役割を果たしてきたメンバーの1人と言えるだろう。

※記事初出時、一部人名表記に誤りがございました。訂正の上、お詫びいたします。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
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