MAN WITH A MISSIONとONE OK ROCK、2組のバラードに刻まれたバンドのアイデンティティ
マンウィズがコーラスワークで超えたラウド系の文脈
オオカミと人間による究極の生命体であるマンウィズの場合、その使命(MISSION)を念頭に置いてもサウンド面の制約は少なくない。海外バンドとのコラボや外部プロデューサーの起用などの試みはワンオクと同様であるが、ロックミュージックをアップデートする使命を背負ったマンウィズは、2010年の始動以来、一貫して自分たちのコアにあるサウンドを進化させてきた。
「Remember Me」は、マンウィズ史上最高にポップに振り切ったミディアムテンポのナンバー。音域の広いシンフォニックなサウンドは、バンドがネクストフェーズに入ったことを高らかに告げている。しかし、よく聴くとそこで鳴っているのはまぎれもなくマンウィズの音であることがわかる。澄み切った浮遊感のある上モノと、何層にも重ねられた鍵盤や弦のレイヤーの下には、歪んだギター音やラウド系特有のヘヴィネスが埋伏しサウンドの太い幹を形づくっている。
マンウィズのもうひとつの武器がコーラスワークだ。群れで吠えるオオカミのように、ここぞという場面での美しいコーラスワークは、マンウィズがラウド系の文脈を超えて一般リスナーの耳に届く機会を提供してきた。
それぞれの挑戦の結晶
ワンオクとマンウィズが歩んできた10年間は、ロックミュージックの有効性が厳しく問われた10年間だった。アメリカで2017年上半期にヒップホップとR&Bがロックを超えてもっとも売れた音楽ジャンルになるなど、90’sマナーなロックサウンドから出発した2バンドにとって、新たなリスナーに訴求するサウンドの拡張は必然といえた。
2バンドがとった方法論は異なるが、いずれもロックバンドにとっての生命線であるサウンドの改変に着手。失敗すればリスナーの支持を失う危険をはらんだギャンブルをそれぞれのやり方で切り抜けてきた。伝統的なロックでは定番のミディアム~スローテンポの楽曲も例外ではなく、「Wasted Nightes」と「Remember Me」には、それぞれが試行錯誤して得たアイデアが結晶化している。
かたや大胆なモデルチェンジによって自身とロックミュージックを再定義するドリーマー。一方で、自らに課された制約に対して、サウンドを研ぎすますことで隘路を突破しようとするオオカミたち。〈Don’t be afraid to dive/Be afraid that you didn’t try〉とTakaは「Wasted Nights」で歌う。胸をしめつけるような「Remember Me」の余韻は、自己の存在を賭して挑戦した日々の記憶なのかもしれない。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter