Buffalo Daughterはやはり唯一無二の存在だ 小山田圭吾、中村達也、菊地成孔ら迎えた記念ライブ

Buffalo Daughter『25+1 Party』レポ

小山田圭吾

 10分の休憩をはさみ、「Three bass」、そしてドラムレスで小山田圭吾が加わっての「Winter Song」。アルゼンチンのフェルナンド・カブサッキが作曲に参加したアンビエントでオーガニックな音響インスト作品だ。小山田の繊細で奇妙なギタープレイが美しい。以前小山田はインタビューで「フロントに立つよりも、サポートでギターだけ弾いていた方が楽しい」と語っていたが、彼のミュージシャンとしてのセンスの高さが表れた好演だった。

中村達也

 そして続く「Mutating」で、中村達也が、今日一番の大きな拍手と歓声と共に登場。叩き始めた瞬間、場内の空気が明らかに変わる。とにかくめちゃくちゃに音がデカい。スターリンやスタークラブで叩いていたパンク時代から彼のプレイを見てきたが、そのパワーとエネルギーは本当に凄まじい。周りを巻き込み、煽り、高揚させる強烈なオーラがある。そこで演奏しているのは確かにBuffalo Daughterだが、達也が加わることでバッファローではない何か別のものへと変貌したようにも聞こえたのである。

菊地成孔

 その異物感は菊地成孔が加わりさらに加速、リキッドルームは先行きの予測のつかないカオスへと突入する。「Deo Volente」では、The Pop Groupを思わせるノイジーなパンクファンクを、達也のドラムと菊地のサックスが、そして山本のボーカルが、ダークでカオスな世界に引きずり込む。圧巻は達也が抜け、代わりに松下が加わった本編ラスト「303Live」だった。ダビーなエフェクトのかかった菊地の変則プレイが強烈。オリジナルの長尺のエレクトロ・サイケ・ファンクがエンジニアzAkの魔術的なライブミックスで時空の歪む異空間へと変貌していく。特に菊地がはけてから10分以上にもわたり、フレーズの頭とお尻がわからなくなるような幻惑的でアシッドな無限ループが続く白昼夢は、控えめに言って最高だった。

 アンコールは再び小山田が登場し、『Pshychic』の極上ダンスナンバー「Psychic A-Go-Go」で大盛り上がりのうちにライブは幕を閉じた。

 ポップだがシンガロングできるようなキャッチーなメロディがあるわけではない。歌ものでもあるが安直に共感できるようなリリックがあるわけでもない。人懐っこくキュートでゆるふわだが、時折思いもかけぬ異世界の裂け目がパックリと口を開け、聴き手をサイケデリックな沼に引きずり込む。伝統的なポップソングの枠を大きく踏み越えたクールでエクスペリメンタルなサウンドは、聞く者の知覚を大きく刺激し拡張してくれる。Buffalo Daughterの音楽は、25年たとうが26年たとうが、一向に摩耗することなく新鮮で、1998年リリースの名盤のタイトルのように、まさにNEWなROCKなのである。くせ者揃いの多彩なゲストが好き放題にプレイしても自らの度量として受け入れるキャパシティの広さも含め、やはり唯一無二の存在と、改めて思い知らされた。

(文=小野島大/写真=Yoshika Horita)

■ツアー情報
『25+1 Party』
6月14日(金)神戸VARIT.  
ゲスト:和田晋侍(DMBQ, 巨人ゆえにデカい)
6月15日(土)京都CLUB METRO
ゲスト:山本精一
6月29日(土)福岡 小倉FUSE
Opening DJ:常磐響
詳細はこちら

オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる