BTSの“マスター”、相次ぐ活動休止の背景 K-POPシーン独自の文化を解説
それでもグッズを売ってサポートのためのお金を得たいマスターたちの中には、レアな写真を手に入れるために、禁止されている場所で撮影する人も。こうした状況でも、過去に事務所側が厳しくしすぎてファンから反感を買ったという事例もあり、看過されている。
「最近はK-POPが世界的に人気が出たことでファンの数も増えて、マスターが作る写真集の収益も大幅に上がったようです。多い時には何千万円もの金額が動き、国税庁の調査が入ったマスターもいました。サポートのためのお金がどれだけ集まって、どれだけ使ったか、というのは公に言わないのが不文律になっているので、サポート費以外の用途があるのでは、という疑いを持たれることもあるようです」
しかし、BTSのマスターが活動休止に踏み切ったのは別の背景がある、と泡沫氏は指摘する。
「近年増加しているアジア圏以外の海外ファンにはBTSを通じて初めてK-POPを知ったファンも多く、そういう人たちは韓国のファン文化をあまり知らない。アメリカツアーの会場にいたマスターをストーカー扱いしたり、サセン(注:私生活を追いかける過激なファン)と言ったり……。さらにはアメリカの一部ファンが韓国のマスターや韓国ファンに人種差別的な発言をする事態にまで発展し、それにも傷ついて閉鎖していったんです。それに対し、マスターはサセンとは違うし、生で見る機会の少ない海外ファンこそマスターの写真をよく見ているはずなのに、マスターを間違った認識で非難しながらスマホでの撮影は擁護するのは他文化への無知無理解だ、とする韓国のファンが激しく反論し、一部で対立してしまっているという状況です」
K-POPアーティストと音楽そのものが世界的に広まる一方で、ファン文化への理解が追いついていないという一面もあるが、最近では一部のマスターたちが空港でも撮影のための場所取りをし、一般客の迷惑になっているという声も聞かれる。K-POPの世界的な規模拡大に伴い、長らく“グレーゾーン”だったマスターによる撮影はじめ、ファンのルールに明確な線引きが必要になっているようだ。
(文=村上夏菜)