Mr.Childrenは変わらないために変わり続けるーー感動と興奮が積み重なった東京ドーム公演

Mr.Children、東京ドームレポ

 最後の曲の前に桜井は、「少しだけ話をさせてください」と観客に語りかけた。

 ニュースを見ていて目に飛び込んでくるのは、有名人や著名人で亡くなられた方や、大きな病気と戦っている方、スポーツ選手の引退のこと。「自分たちはあとどれくらい続けられるんだろう?」と考えてしまうけど、「もし明日歌えなくなっても、バンドを続けられなくなっても後悔しないだろうな」という結論に至ること。

「デビューして27年も経つバンドが、いまだにこうやってライブをやって、大勢の人が聴きに来て、歌ってくれて、こんなに幸せなことはほんとにないと思います。日本一幸せなバンドだと思います」「でも、せめてあと1曲――いや、それは謙虚すぎるかな。あと10曲は、5万人がひとつになれるような曲を作りたいと思ってます」

 そんな言葉に続けて披露されたのは、アルバム『重力と呼吸』に収められた「皮膚呼吸」。〈僕にしか出せない特別な音がある きっと きっと〉というフレーズからは、Mr.Childrenの未来、この先も自分たちの音楽を追求し続ける意思がしっかりと伝わってきた。

 常に時代に対峙し、1990年代、2000年代、2010年代を通じてヒット曲を生み出し、ロックバンドの概念と表現の幅を広げ続けているMr.Children。リスナーの心を揺さぶり、負の感情をポジティブに転化するような彼らの音楽は、今回のツアーによってさらなる高みに達していた。過去のキャリアに頼らず、否定もせず、すべてを受け入れたうえで、斬新にして普遍的な音楽を届けるステージはまさに圧巻。変わらないために変わり続けるという言葉は、このバンドのためにあるのだと思う。

(写真=渡部伸)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

Mr.Childrenオフィシャルサイト

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