芸能界のスキャンダル報道、韓国社会における受け止め方は? SNSの発達による変化が生む軋轢

 一方でアイドルのファンは、「“推し”が間違った行為をした場合はファンである私たちがなんとかしなくては」という意識が強いようだ。以前はどちらかといえばアイドルを徹底的に保護する方向になることが多かったが、SNSが発達し情報を隠蔽することが難しくなる一方で“市民感情”を共有しやすくなった現代では、むしろ「アイドルの態度を我々が矯正するべき」という方向に働くことも多い。コアファンドムにおいては“推し”を熱狂的に支持することとライバルへのアンチ行為はセットのようになっている部分もある。その分、一旦ファンドムあるいは社会の信用を損なう行為があれば、その反動でファンドムがまるごとアンチに反転することすらある。メンバーが問題を起こした時に、グループ全体のイメージが毀損されるから辞めるべき、という声が出るのは大抵同じファンドム内からだ。それほどに「自分の好きなアイドルには、人格的・社会的にも恥ずかしくない存在であってほしい(そうあるべき)」というファンの理想への思いは強く、時に肉親に例えられるほどに激しい愛情を持つ側面もあると同時に、その逆にもなりやすいということかもしれない。

 これらの文化的社会的背景や“芸能人”という特殊な存在に対する複雑な感情が入り混じった結果、韓国社会の芸能人のスキャンダル報道やそれに対する反応は日本とは少し違う発露の仕方を見せることがある。スキャンダルの内容や、自国の芸能人か海外の芸能人かによってもまた反応は異なるが、芸能人に対する倫理的要求が日本よりさらに厳しい傾向がある韓国。SNSの発達により神秘性を守りづらくなってきているという社会的な変化との軋轢が、芸能人のスキャンダルにおいてはより顕著に現れるのかもしれない。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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