『小さな恋のうた』『さよならくちびる』劇中から2組がCDデビュー 音楽シーンで存在感示すか

大原櫻子、菅田将暉、横浜流星…劇中バンド経て歌手活動本格化

 平成の時代にも数々の音楽映画から劇中バンドが誕生したが、筆者の年代で言うと2005年公開の映画『NANA』のヒットは特に印象に残っている。中島美嘉がNANA starring MIKA NAKASHIMA名義でリリースした主題歌「GLAMOROUS SKY」は、当時オリコンシングルチャートで2週連続首位を獲得し、その年のレコード大賞では「特別賞」を受賞するなど大きなブームになった。中島美嘉はこれ以前にすでに歌手デビューしていたが、2010年以降は音楽活動の経験がない俳優が劇中でアーティスト役を演じ、CDデビューを果たすことも増えている。

 最近では、2017年に実写映画化された『覆面系ノイズ』で、in NO hurry to shout;というバンドのメンバー役を演じた中条あやみ、志尊淳、磯村勇斗、杉野遥亮が、劇中曲「Close to me」でCDデビュー。主演の中条は歌・ギター共に未経験だったが、バンドのボーカルとして活動するニノ役を演じるにあたり、ボイストレーニングやパフォーマンス練習を重ね、映画公開を記念して行われたイベントではファンの前で生歌も披露していた。

 また、劇中バンドとしてデビューしたのを皮切りに、歌手活動が本格化した俳優もいる。2013年公開の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でヒロインの小枝理子を演じた大原櫻子は、歌手としてのデビュー作が劇中バンド・MUSH&Co.のシングル『明日も』だった。その約半年後には、スピンオフシングルもリリースされ、MUSH&Co.のデビューが大原櫻子の歌手活動のスターターになったと言える。

MUSH&Co. - 明日も(MUSIC VIDEO) <映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』>

 そして、今やソロ歌手としても人気の俳優・菅田将暉は、2017年1月に公開された映画『キセキ -あの日のソビト-』の中で成田凌、横浜流星、杉野遥亮と劇中ユニット・グリーンボーイズを結成。この名義でCDデビューを果たし、テレビ朝日系列の音楽番組『ミュージックステーション』にも初出演。その勢いのまま、同年3月よりソロ歌手としての活動をスタートさせた。また、菅田と同じくグリーンボーイズのメンバーだった横浜流星も2018年10月、GReeeeNのプロデューサー・JINプロデュースによる楽曲でCDデビューを果たした。

グリーンボーイズ(菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮) 『声』Short Ver.

 劇中バンドのCDデビューは、音楽のストーリーを描いた作品に奥行きやリアリティを足すだけでなく、俳優の演技以外の才能を発見できる楽しみもある。そして上記で挙げた過去の劇中バンドのように、チャートの上位にランクインし音楽番組に出演するパターンもあれば、俳優の歌手活動のきっかけにもなり得るなど、音楽シーンに与える影響も大きい。小さな恋のうたバンド、ハルレオのデビューがブームの火付けとなり、音楽シーンにおける劇中バンドの存在感が今後ますます目立ってくるかもしれない。

■渡邉満理奈
1991年生まれ。rockin’on.com、Real SoundなどのWEB媒体を中心にコラム/レビュー/ライブレポートを執筆。趣味は読書でビートたけし好き。

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