SHE’Sがライブで表現した“Now & Then” 歓喜のムードに満ちたZepp Tokyo公演を見て

SHE’Sがライブで表現した“Now & Then”

 「今、と、あの時」を意味する最新アルバム『Now & Then』に伴う、全国14カ所をまわったツアー『SHE'S Tour 2019 “Now & Then”』。ファイナルである4月20日Zepp Tokyo公演はソールドアウトし、超満員だった。SHE’Sの歩みは単純に動員だけで評価すればスピーディーとは言えないかもしれない。だが、どのタイミングにリリースされた楽曲も心の深いところに存在し、音源やライブで接するたび、作品性の高さに気づくーー狭義のバンドシーンには括れない魅力がこのバンドにはある。そしてその「どんなときも曲に触れれば力を発揮する」バンドがライブで確実にアドバンテージを上げてきた。

 「今、と、あの時」を表現するのに必ずしも新作を中心にセットリストを組み立てる必要はない。むしろ今回のようにインディーズ時代から最新作までを網羅することで、SHE'Sのオリジナリティを確認することができた。ピアノエモを基調としつつ、堂々とアンセミックにThe BeatlesからOasisまで連綿と続くUKロック的なスケール感で聴かせるバンドが今、日本にいるだろうか? と感じ入ったアンコールの「Curtain Call」。エレクトロニックと生楽器の極めて洗練された融合を聴かせる「歓びの陽」や「Clock」。それを二面性として特徴づけるというより、バンドの軸であるメロディの良さを持ってすれば、すべてSHE’Sの音楽として昇華できる、そんな自信しかもはや見えないライブだったのだ。

 セットリストを楽曲のテイストごとに明快にブロック分けしたことは『Now & Then』をより意識させ、バンドの音楽的なレンジの広さを証明した。が、大事なのはそこではない。あらゆる衣装=アレンジを着こなせるだけのボディ=メロディの強さ。それこそが自分たちのスタイルを貫き、新たなファンを獲得して得た最大の強みでもある。メロディという最大の武器をキャリアの広範囲かつ様々なタイプの楽曲で裏付けたライブだが、さらに今回、大きく3つ、今後への期待値を上昇させるこのバンドならではの強みを発見した。

 1つ目は服部栞汰のハードロックギタリストばりの壮大なギターソロ。これまでもピアノエモバンドなら控え目なアルペジオか堅実なバッキングを選択しそうなアレンジを豪快に覆してきたエモーション全開の彼のギター。それがここにきて、井上竜馬のドラマチックさや洗練さというオリジナリティは保持しつつ、ライブの盛り上がりが大きくなる際に服部のギターソロが爆発的なカタルシスを生むことを実感。ハードロックマナーなソロだけでなく、「Ghost」ではフィードバックを生かしたドラマチックなサウンドで他のメンバーにも刺激を与え、ステージ上の熱量は明らかに上昇していた。

井上竜馬
井上竜馬
服部栞汰
服部栞汰
広瀬臣吾
広瀬臣吾
木村雅人
木村雅人
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井上竜馬
井上竜馬
服部栞汰
服部栞汰
広瀬臣吾
広瀬臣吾
木村雅人
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 近年、海外のロックはほとんどギターなんて鳴っていないと言われて久しかったが、去年あたりからむしろヒップホップアーティストが生音のギターを効果的にアレンジに導入している。先日のコーチェラでもビッグアーティストのドラマ性の高いステージーー例えばチャイルディッシュ・ガンビーノやジャネール・モネイらがハードなエレクトリックギターをアンサンブルの中で効果的に使っていた。ギターらしいギター回帰はむしろ若いリスナーにとって新鮮なのではないか。

 2つ目はプリミティブなビートと哀愁のあるヴァースがEDM以降のポップスをバンドで体現したかのような「Upside Down」が、オーディエンスに浸透し、自然とクラップを起こしていたこと。さらに同じような質感で、インディーズ時代の「Change」でもタフなリアクションを起こせるバンド演奏の強靭さを見た。「Change」を作った頃にもビジョンとしてはあったであろう自然と沸き立つ歓喜のムード。この曲が発揮したかったスケール感を獲得したように見えた。

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