堀込泰行は予想のつかないミュージシャンだ 最新ツアーのライブに満ちた意外性

堀込泰行のライブに満ちた意外性

 2018年10月、自身2枚目となるフルアルバム『What A Wonderful World』を発表した堀込泰行。リリースからはしばらく時間が空いたが、2019年3月、最新アルバムにともなうツアー『堀込泰行 LIVE TOUR 2019 “What A Wonderful World”』が行われた。2年ぶりの全国ツアーは、3月5日の東京を皮切りに、京都、広島、福岡、大阪、愛知、宮城、最後にふたたび東京と、1カ月かけて各地を回る7都市(8公演)での開催となった。真城めぐみ(Cho/Per)、沖山優司(Ba/Cho)、伊藤隆博(key/Cho)といったおなじみのメンバーにくわえて、小松シゲル(NONA REEVES/Dr)、八橋義幸(The Uranus/Gt)、千ヶ崎学(KIRINJI/Ba)、内田直之(LITTLE TEMPO/PA)らのサポートを得ながら、ニューアルバムの楽曲はどのように変化するのか期待は高まった。今回は、3月30日にヒューリックホール東京で行われたツアー最終日の模様を取り上げる。

堀込泰行

 あらためて、堀込泰行は予想がつかないミュージシャンだというのが、ライブを見終えてのもっとも強い印象である。むろん、基本的な音楽性は一貫しているし、未知のジャンルへ果敢に挑戦するような冒険的資質の持ち主ではないが、それでもやはり、提示されるものはどこか聴き手をはっとさせるような意外性に満ちているのだ。『What A Wonderful World』の楽曲でいうなら、たとえば「Cheers!」のサックスソロが挙げられる。腕の立つプロのミュージシャンを呼んで「下手に吹いてほしい」とリクエストし、意図的に単調な演奏を選んでOKテイクにするという独特のアイデアが功を奏し、曲全体に奇妙な味わいをもたらしている。また「砂漠に咲く花」の落ち着いたテンポで進んでいく序盤のリズムが、曲の途中から突如としてサンバ風のドラムとパーカッションに取って代わるような、非常に変わったアレンジなども同様だ(これはプロデューサーから出た案だったそうだが、こうしたアイデアを取り入れる柔軟性が実に彼らしい)。かくして、音楽トレンドや緻密なコンセプトとは一定の距離を置きつつ、結果的には親しみやすいポップさと個性的なサウンドが両立してしまうのは、堀込泰行ならではである。

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 ベテランミュージシャンらしからぬ若々しさと、コンテンポラリーな音楽性とを兼ね備えたニューアルバム(堀込泰行、音楽を通して描く未来の可能性 KIRINJI 堀込高樹との関係性から考察)。新譜からの曲を中心に、キリンジ、ソロデビュー以降の楽曲をどのように選び、2019年版の演奏として表現していくか。注目は、FOHエンジニア(ライブPA)としてミキシングを担当し、演奏にリアルタイムで音響効果をつけ加えていく内田直之の存在であろう。レゲエやダブのコンサートではおなじみだが、堀込泰行のようなミュージシャンのサポートとして、内田のようなタイプのライブPAがツアーに帯同するのはやや意外であり、ライブならではの新たな音像が生まれるのではと思わせる。会場のヒューリックホール東京は元映画館(TOHOシネマズ日劇)であり、かつてスクリーンがあった部分がステージとなっている。座席も映画館だった頃の設備をそのまま転用しており、会場内の傾斜もステージがちょうど見やすいように調整されている。チケットは早々に売り切れ、当日はたくさんのファンが胸をときめかせながら会場へと足を運んでいた。

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