V6 岡田准一と“考える葦”として成長する 欅坂46にも言及したダンサーTAKAHIROとのラジオ共演

 ノッてきた岡田が「なんか、カクカクしてるダンスを結構やられますよね? あれ、見たいなー」とおねだりすると、TAKAHIROは「カクカクカクカク……」と、つぶやきながら(おそらく)ロボットダンスを踊って見せる。すると「あ、すげー! すごい! みなさん見えないけどやっぱすげー」と、岡田がひとりで喜ぶシュールな展開に。映像としては見えないけれど、リスナーのまぶたの裏では、はしゃぐ岡田と照れくさそうなTAKAHIROの姿がハッキリと思い浮かんだことだろう。2005年から続くこの番組が、専門家たちの話を楽しく聞くことができるのは、きっとこの岡田の人懐っこさがあるからに違いない。

 小さいころにパントマイムを見てダンスに興味を持ったこと。VHSで録画した風見慎吾(現:風見しんご)の4枚目のシングル「涙のtake a chance」を繰り返し見ながら練習したこと……徐々に紐解かれていくTAKAHIROの人となり。「そのうち、変なオリジナリティが生まれて(笑)」「ダンスは回っても、ころんでみてもOKみたいな! はー、好きな曲でやっていいんだ!」と生真面目だったTAKAHIROの心をダンスが解放してくれたことを話すと、岡田も「自由を感じたわけですね」と真剣に話を広げる。すると今度はTAKAHIROが「〈Made in Japan Made in Japan〉って言いながら、ぴょんぴょん跳ねてもいいんですよ」と楽しくなってしまった様子。岡田も思わず「俺らの歌が出てきた!」と声が弾む。

 そして、TAKAHIROが振り付けをしてきた欅坂46の話題になると、「『サイレントマジョリティー』は、ドゥルドゥルルル……」と口ずさみながら何やらガザゴゾと(おそらく)振りを披露していく。そして「『不協和音』は、〈僕は嫌だ〉パーン! って」と、またもや体を動かす音が聞こえてくる。岡田が自由に動けばTAKAHIROが遠慮がちに振る舞い、岡田がジッとするとTAKAHIROが動き出す……まるで即興ダンスバトルのように、ふたりのトークは相手の出方を楽しみながら次第に盛り上がっていく。

 欅坂46のストイックに作品に向き合う姿勢が大好きだというTAKAHIROに、岡田も「空気感を作って踊ろうという姿勢を感じる」と語り、彼女たちを他に類を見ないアイドルグループだと絶賛。そんな真面目であるからこそ、どう伝えるかを模索する難しさもあると続ける。「表現して伝えようとすると悩みますよね」という岡田の言葉は、自身がエンターテイナーとしてもがいたことがあるからこそだろう。そんな熱い気持ちに触れたTAKAHIROからは「今日思うことと、明日感じることは違うけれども、曲は同じ歌詞だからどう向かい合っていくか。僕たちクリエーターもその熱量に負けないように、一緒に走っていく」と、名言が飛び出した。

 TAKAHIROが紡ぎ出す言葉は、2月20日に発売されたエッセイ集『ゼロは最強』(光文社)でも触れることができる。「TAKAHIROさんの人柄が出てると思うんですけど、最後かもしれないから“やるだけやろう“って。すごいですよね。人生にとって大事なことも書かれていたりとか、ダンスを通じて自分が生きてきたこととか……」と、感想を語るうちにまたもや熱くなってくる岡田。すると、TAKAHIROは「題名だけ、岡田さんの映画に影響を受けたかなって」と、照れ隠し。もちろん岡田も「『永遠の0』ですね」とテンポよく合いの手を入れて、ふたりで「ハハハ」と笑うのだった。

 「しんどいことがたくさんです。ただ、何かに対して思い切り向かい合えてるっていうのが……なんか悪くないです」。日ごろ体全体で伝える表現者が、ラジオというメディアで、その本質を言葉で探り、音で伝える取り組みそのものが実に興味深かった。専門家たちによって導き出された純度の高い言葉たちに、ハッとしたり、ゾクッとしたり、そして岡田のナビゲートにクスッとしたり。驚きと、感動と、笑い。この番組で得られるそれらが、私たちを考える葦にするのだ。

(文=佐藤結衣)

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