Nickelback、モンスターバンドならではの充実感あるライブに 熱狂に包まれた6年ぶり日本武道館

Nickelback、日本武道館公演レポ

 カナダが誇るモンスターバンド、Nickelbackが昨年8月の『SUMMER SONIC 2018』以来となる来日公演を2月上旬に開催。そのツアーファイナルとなる日本武道館公演を2月9日に行った。同バンドの単独公演は2015年5〜6月以来約4年ぶり、武道館でのライブは2012年12月以来およそ6年ぶりのこと。今回のジャパンツアーでは唯一のアリーナ公演とあって、会場には熱狂的なファンが多数駆けつけた。

 筆者自身、彼らのライブを生で観るのは2009年11月の新木場STUDIO COAST以来、実に9年ぶり。その間も何度となくチャンスはあったのだが、なかなかタイミングが合わず、昨年のサマソニも直前に出張が入り見逃すこととなってしまった。それだけに、今回の単独公演は願ってもない機会であり、万全を期して臨むこととなった。

 Nickelbackの現時点での最新作は2017年6月発売の9thアルバム『Feed The Machine』。発売から2年近く経ってしまったものの、今回のジャパンツアーもこの新作を携えたものだと思っていたのだが、気づけばシンプルに『JAPAN TOUR 2019』と冠したものだった。ということは、新作を軸にしたものというよりはグレイテストヒッツ的なセットリストが期待できるのでは……そう考えたファンは少なくなかったはずだ。

 Metallica版「Am I Evil?」が爆音で流れる中、突然会場が暗転。するとステージ後方のスクリーンに最新作『Feed The Machine』の機械的なアートワークが映し出され、続いてメンバーが1人、また1人と登場する。チャド・クルーガー(Vo/Gt)の合図に合わせて、バンドは最新作のオープニングトラック「Feed The Machine」で幕開け。グルーヴィーなリズムとヘヴィなギターリフでグイグイ引っ張るこの曲で、会場の熱気は早くも沸点まで上昇。スケール感の大きなサウンドプロダクションは、まさにアリーナロック……いや、武道館の天井をぶち破りそうなスタジアムロックという表現がぴったりなものだ。

 ダニエル・アデア(Dr)は派手なアクションで力強いビートを叩き出す一方で、マイク・クルーガー(Ba)はほぼ立場を離れることなく寡黙にベースを弾き続ける。この息の合ったリズム隊の上で、チャドとライアン・ピーク(Gt)はゴリゴリのギタープレイで楽曲の世界観を広げていく。そしてチャドの歌声はCDを聴いているんじゃないか!? と錯覚するくらい、不安定さがまったく感じられないパワフルなもので、観る者を圧倒させていく。この4人になってからすでに20年近く経つこともあってか、この日も終始最高のアンサンブルを楽しむことができた。

 オープニングこそ新作からのナンバーだったが、2曲目からはまさにグレイテストヒッツと呼べる内容で、初期のメガヒット作『Silver Side Up』(2001年)からの「Woke Up This Morning」や、キャリア最大のヒットアルバム『All The Right Reasons』(2005年)収録の「Photograph」や「Far Away」などが次々と繰り出される。そのたびに客席からは大合唱が沸き起こり、ステージ上のメンバーを驚かせる結果に。このシンガロングにはさすがに筆者も驚かされ、この会場に集まったファンのハードコアぶりに感動すら覚えた。

 「What Are You Waiting For?」(2014年の8thアルバム『No Fixed Address』収録)ではモダンポップに振り切ったテイストを見せはするものの、基本的にはギター2本を軸としたヘヴィでパワフルなサウンドに、口ずさみやすいキャッチーなメロディを乗せたハードロックが中心。今やこういったタイプの楽曲はアメリカのヒットチャート上で見かけることは少なくなってしまったが、だからこそこういった楽曲を欲しているリスナーがこれだけ大勢集まったのかもしれない。そう考えれば、この毎曲ごとに発生するシンガロングも納得がいく。

 曲間ではチャドが軽妙なトークで場を和ませる。時にはライアンとの掛け合いで爆笑をさらうも、いざ曲が始まればヘヴィな音圧の楽曲で観る者を圧倒させる。さらに、再び武道館のステージに立てた喜びも会話の節々から伝わってくる。この“ホーム感”はきっとフェスでの短いライブでは味わえないものだったのではないか、と納得するには十分な内容だった。

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