中島愛、花澤香菜、渕上舞、久保ユリカ……個性が感じられる声優アーティストの新作4選
そのように自分の好きな音楽やアーティストを通して自己表現の幅を広げる人がいる一方で、みずから積極的に作詞を行うことでリリースごとにアーティスト性を深めていてるのが、『ガールズ&パンツァー』の主人公・西住みほ役や『アイドルマスター シンデレラガールズ』の北条加蓮役などで知られる渕上舞です。彼女は昨年1月に発表したデビューアルバム『Fly High Myway!』で12曲中6曲の歌詞を自分で手がけ、その後のタイアップシングル「リベラシオン」でも作詞を担当(松井洋平との共作)。作品の世界観を反映させつつ個人の楽曲としても成立させる、プロの作詞家が行うレベルの歌詞をしっかりと書き上げて、作詞スキルの高さを世に知らしめました。
そんな渕上のアーティストデビュー1周年を飾ったミニアルバム『Journey & My music』は、鳥好きとしても知られる彼女が“渡り鳥”をテーマに、様々な国をイメージして制作された楽曲を巡り行く一枚に。CMJKが作詞・作曲・編曲したスパニッシュポップ「バレンシアガール」を除く全曲の作詞を渕上本人が担当しています。恋にアグレッシブな女子の気持ちを都会的なダンスサウンドに乗せて表現する「BLACK CAT」、寒さの厳しい雪国の美しさと希望を絶つような儚さを併せ持ったrionos提供の「雪に咲く花。蜃気楼。」など、どの楽曲もタイプは全然違えどそれぞれの国のイメージを喚起させる想像力豊かな内容。そして“旅”そのものをテーマにした最後の曲「Journey」は、彼女自身の人生(もしくは声優としてのキャリア)を旅に見立てたようなワードが散りばめられた、その活動を知っている人ほど感動するに違いないエモーショナルなバラードに仕上がっています。
最後に紹介するのは、『ラブライブ!』の小泉花陽役をはじめ様々なアニメで活躍する久保ユリカのミニアルバム『VIVID VIVID』。2017年5月に発表した1stアルバム『すべてが大切な出会い〜Meeting with you creates myself〜』とそれに伴うライブを最後に、しばらくアーティスト活動から離れていた彼女ですが、昨年に歌手活動の再開を発表し、今作はそれ以来の新作になります。その前作では、ミト、前山田健一、Tom-H@ck、久保が昔からのファンだったというスムルースの徳田憲治らを起用し、バラエティ豊かなサウンドを展開していましたが、今回の新作は多彩さはそのままに、よりダンサブルな路線に振り切った印象です。
タイトル曲にしてリードトラックの「VIVID VIVID」は、80'sフィーリングの煌びやかなシンセとモダンなビートが快い溌溂ダンスポップで、作編曲はDa-iCEやCrystal Kayらへの楽曲提供で知られるTAKAROTが担当(作曲はFUNK UCHINOとの共作)。4人のダンサーを従えてキュートに弾けたパフォーマンスを披露するMVを含め、これまでのナチュラル路線なアーティストイメージとはまた違った大人カワイイ魅力を打ち出しています。EDM調のよりエッジーな音で攻める「Instant@Heart」、ヒゲドライバーが得意の8ビットサウンドを引っ張り出したテクノポップ「しかししかじか」、TVアニメ『少女終末旅行』のOPテーマ「動く、動く」で繋がりのある毛蟹が提供したポップでエモいエレクトロハウス「幸せの雲」、本作唯一のバンドサウンドで未来への希望を歌った「旅風船」と、他の収録曲も粒ぞろい。アーティストとしての心機一転を図った一枚となっています。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。