King Gnu、ネクライトーキー……2019年バンドシーンの傾向を『バズリズム02』恒例企画から考察

 2で言うと、5位の中村佳穂が衝撃的だった。旅先で出会い、意気投合した仲間と音を合わせるようなスタイルでライブを展開してきたというだけあり、彼女の音楽はどこにもカテゴライズできないほど自由である(一方で、日本におけるポップスの系譜を体現していたりもするのだが)。他アーティストと関わりあいながら作品づくりを行っている点は、12位の折坂悠太、18位のKID FRESINOも同様。様々なジャンルがボーダーレスに混ざり合う現在の音楽シーンでそれを行うからこそ、独創的な作品が生まれることとなるのだ。ちなみに、中村は、1月20日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)での「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年間ベスト10!」でも取り上げられ、最新アルバム『AINOU』が翌朝、iTunesのデイリー・アルバム・チャートで6位に浮上した。多くの人の目に触れるであろう地上波の音楽番組が、本来評価されるべき音楽家に光を当てるようなメディアとして機能しているのだとしたら、それは非常に喜ばしいことだ。

 バンドにも触れておくと、お茶の間へのリーチという面においては、ポップな楽曲を書くことのできるソングライター、カラフルな音色を鳴らすことのできる鍵盤奏者が所属するバンドが依然として強い。番外編として実施された街の300人に対するアンケートにおいて、半数以上が“飛躍する”と予想した3組がMrs. GREEN APPLE、sumika、Official髭男dismだったこともそれを裏付ける結果だったと言えるだろう。そういう意味で特に注目したいのが10位のマカロニえんぴつ。昨年10月にリリースされた2ndシングル表題曲「レモンパイ」は、印象的なメロディと愛らしい歌詞を兼ね備えつつ、バンドのルーツや遊び心も感じさせるような名曲。長らくネクストブレイク候補だと言われてきた彼らが、いよいよ新たなステップに駆け出すのだという兆候が見られた。彼らは元々“全年齢対象ポップスロックバンド”と名乗っている。その代名詞、いよいよ現実味を帯びてきたのではないだろうか。

 また、11位以下に関しては、“My Hair is Bad以降”の潮流にあるストレートなギターロックサウンドを鳴らすバンド、Age Factoryをはじめとしたオルタナ系の新鋭など、ライブハウスにおいて強い存在感を発揮しているバンドが目立つ。ライブハウスにある情熱だけが真実ではないが、ライブハウスにある情熱には嘘がない。この辺りは、現場に足繁く通う音楽関係者だからこそフックアップできたポイントだろう。

 以上が、ランキングの全体的な傾向とそれに対する所感である。このランキングを足掛かりにして、あなたが、自身にとってかけがえのない存在となる音楽を見つけることができたのならば、それ以上に嬉しいことはないが、一方、数字による評価だけがすべてではないのだということは気に留めておいてほしい。末筆ながら、「今年コレがバズるぞ!BEST10」および本稿があなたの音楽人生を豊かにさせるものになることを願いつつ、この記事を締め括りたいと思う。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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