『オオカミくん』シリーズ出演でも話題のラップアーティスト さなり、“柔軟さ”が開く新たな表現の扉
憧れてやまないスターの存在
さなりを語る上で欠かせないのがSKY-HIの存在だ。MIYAVIや金子ノブアキも参加したSKY-HIのツアー『Round A Ground 2018』にさなりが出演したのも記憶に新しいが、何を隠そう彼が音楽に興味を持つ引き金を引いたのがSKY-HIなのである。
兄弟の影響で日常的に使っていたYouTube。そのオススメ欄にあったSKY-HIのMVを見たのをきっかけに、さなりは音楽やラップに関心を持つようになった。なかでも当時気に入って聴いていたのが、SKY-HIのメジャー第1弾シングル収録「愛ブルーム」。ポップでキャッチーな曲調に心地よく絡むフロウは、自身ルーツと言っても過言ではないだろう。彼にとってSKY-HIは、憧れでありスターなのである。
そんな憧れの存在がプロデュースを手掛けたのが、昨年リリースされた「悪戯」だ。この楽曲以前の作品もフロウ回しやリズムの取り方に、SKY-HIを連想させるシーンはあったが「悪戯」という楽曲が生まれたことにより、さなりにおけるSKY-HIのエッセンスはさらに強くなった。SKY-HI自身もTwitterで「良い声の若い才能」と、さなりのことを評している。音楽シーンで欠かせない存在となったクレバーなアーティストを見て育ったからこそできる、新しい表現という点でもさなりからは目が離せない。
柔軟さが開く新たな表現の扉
彼の活動が音楽という枠に捉われていないのも、さなりの面白い点のひとつだ。星野源や峯田和伸などが俳優とミュージシャンを両立し自身の表現を深めていったように、音楽と違うことのかけ合わせは成長の幅を広げてくれる。今回出演が決まった恋愛リアリティーショーも然りだ。根っからのミュージシャン気質だと気ノリしないような企画でも、興味関心の広い彼は柔軟にチャレンジしていく。音楽に対して凝り固まった執着がないからこそ、全てを血肉に変え吸収していけるのだ。
YouTubeにあげているゲーム実況の動画にも、その柔軟さは表れている。小学生のころから動画を撮影し、自ら編集してYouTubeに投稿していたということもあって、仕事はとても鮮やかだ。音楽だけにとどまらず自分自身をプロデュースする未来にも、ぜひ期待したい。
新しい時代を創っていくミュージシャンでありながら、音楽以外へも柔軟な興味を示すさなり。そんな彼だからこそ、いろいろなものから吸収したオリジナリティーある表現ができるのではないだろうか。新時代を創るミュージシャンとして、彼の躍進から目が離せない。
■坂井 彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。
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