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ヴィジュアル系シーンの“閉塞感”をどう打開する? ライター4名による2018年振り返り座談会

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シーン全体の“閉塞感”を打破するバンド

ーーサウンドの原点回帰含め、側から見るとやはりシーン全体に閉塞感があるという印象なのですが、何が原因なのでしょうか。

冬将軍:ジャンルではないと言いつつ、ジャンルが確立されてしまった、というのは大きいでしょうね。DIR EN GREYの海外での成功がシーンにもたらした影響力は計り知れないものがあるわけだけど。いわば“脱ヴィジュアル系”をしながら海外進出した彼らが、ヴィジュアル系へ回帰するような動きを見せていることがいろんなことを物語っている気がします。何が海外でウケているのか? 日本語詞、節回し、サウンド……そして、その世界観を強調するためのメイク。それが“日本人にしか出来ない日本人が生み出したロック”として世界に認められたわけだけど、同時にそれは様式美が出来上がってしまったことなのかもしれません。

藤谷:世間的なヴィジュアル系のイメージがあった上で、新規を引き込むようなスター性のある存在がゴールデンボンバー以降現れていないですよね。ブレイクから、かれこれ5年以上経ってますけど、そこに代わる存在が出て来ていないし、メディアは発見できていませんし、シーンも育てられてないというのが現状です。

冬将軍:ヴィジュアル系は真っ当な音楽的評価を受けづらい背景もありますよね。海外では“日本独自のロック”として認識されているのに、国内だと“アニメ人気”、“2.5次元”で片付けられてしまう。振り返ると90年代も00年代も、そうした風潮に抗うような“脱ヴィジュアル系”勢力がブームの起爆剤になってるんですよ。だから今の時代に“俺らはヴィジュアル系じゃない”って言えるヴィジュアル系バンドが出てくれば面白くなるんじゃないかな。自分が昔担当していたバンドは“ヴィジュアル系バンド”という言葉がNGで、そう書かれた取材原稿を全部“ヴィジュアル系ロックバンド”に替えるんです。そういうこだわりって大事だと思います。同様の理由で“ガールズバンド”と呼ばれることを嫌う女性バンドや、“アイドル”と言われることを嫌うガールズグループもいますよね。それこそアイドルには、“楽曲派”なんていう言葉もあるけど。

藤谷:冬将軍さんは最近アイドルを追われていますよね。

冬将軍:ここ何年か、新宿LOFTや目黒鹿鳴館に行くのはアイドルのライブばかりですね(笑)。かつてのバンドの聖地が今、アイドルの聖地になってるんです。そんな“ライブアイドル”とも呼ばれる、インディペンデントのアイドルシーンは今いちばんいろんな音楽ジャンルが集まっている場所ですね。「同じ音楽をやるならバンドがやるよりアイドルがやったほうが面白いのでは?」と考える人たちが、演る側にも聴く側にもたくさん集まっていて、アイドルというフォーマットを使った音楽表現の可能性をみんなで探っている。じゃあ、ヴィジュアル系というフォーマットは? と考えたとき、今面白い音楽をやろうと思ったらヴィジュアル系である必要はないのかもしれない。

藤谷:例えば15年くらい前だったら“ヴィジュアル系なら何をやってもいい”という理由でこのシーンに来た人もいた。やっている音楽が歌謡曲でもモダンヘヴィネスでも”ヴィジュアル系”とされていて、それこそゴールデンボンバーもその”自由さ”からこのシーンに現れた。”面白い音楽”はヴィジュアル系にあった。そういう“何でも出来る場所”故の楽しさを、今は冬将軍さん的にはアイドルに見出しているってことですよね。

冬将軍:アイドルプロデュースにまわったバンド出身の人たちが多いことも、そうした“自由さ”を求めてのことだと思います。ヴィジュアル系シーンを作ってきたフリーウィルが、今やアイドルを手掛けているくらいですから。イベントやコラボなど、アイドルとバンドが絡むことは珍しくない昨今ですけど、老舗ヴィジュアル系事務所が女子アイドルをマネジメント&プロデュースするなんて、ものすごい時代になったことをあらためて実感させられますね。ホラーメイクのDIR EN GREYと、キラキラした女の子たち 2o Love to Sweet Bulletのアー写が並んでいる所属事務所のウェブサイトは強烈なインパクトを放ってますし。

オザキ:やっぱりジャンルのイメージが確立されて、ヴィジュアル系でやるならこういう音楽というものが固まってしまったのはあると思いますね。

冬将軍:今、リスナーが求めているところもイメージ通りのヴィジュアル系のような気がする。ただ、いろんな音楽をやったほうが偉いわけではないので、それは悪いことじゃないと思います。それぞれに見合った音楽があるわけだし。

藤谷:これは個人的な印象になってしまうんですが、“聴いた人をバンギャル(ヴィジュアル系のファン)にするバンド”ではなく、“今いるバンギャルに向けたバンド”が強いのかな? と思ってしまうんです。リスナーを自らの世界観に引き込むのではなく、リスナーの世界観に寄せていく感じ。リスナーの需要よりも “俺はこの世界観が好きでこの音楽をやるんだ!”という気持ちが先走っているバンドはあまり目立ってない気がします。

白乃:去年からベル、Chanty、Develop One’s Faculties(DOF)の頭文字をとって“BCD”と呼ばれる3バンドがスリーマンツアーを周ったりしているんですけど、彼らは今のヴィジュアル系のメインストリームからは少し外れた音楽をやっていると思います。

ーー“BCD”の魅力はどういうところでしょう?

白乃:DOFのruiさんはたまに“ヴィジュアル系をやってる人は他と違うことをやりたくてやっていたはずなのに、最近は似たようなバンドばっかり。自分たちは他にはない音楽をやっている”と言っています。実際今のシーンのトレンドとは少し違ったギターロックを軸に、キャッチーなメロディに複雑な変拍子を交えるような、いわゆる“わざわざヴィジュアル系でやろうとは思わないような音楽”をやっているところですかね。

藤谷:今年Chantyは周年のO-WEST公演が5年目にしてソールドしましたもんね。浮き沈みの激しいシーンの中で、地道にやってきた結果だと思います。

白乃:そうですね。Chantyは昨年メンバーの脱退や活動休止といった事態に見舞われましたから、それを乗り越えた結果だとは思いますが、“BCD”の結束による相乗効果もかなり大きかったと思っています。

オザキ:最近“BCD”のような少数バンドによるツアーが増えましたよね。今現在若手有望株にあげられるRAZOR、DADAROMA、ザアザア、GRIMOIREによる『火炎瓶』ツアーも記憶に新しいですし、ボーカルが東北出身という共通点を持つD、GOTCHAROCKA、DIAURAによる『MICHINOKU THREE KINGDOMS』ではお互いのバンドの楽曲をカバーした音源を出すのが恒例になっていてバンド側も楽しんでやってるなぁと思わされます。

藤谷:それこそR指定、己龍、BugLug、vistlipによる『均整を乱す抗うは四拍子』(2015年)くらいから帯になって盛り上げていく流れは感じますね。今年はMUCC、Psycho le Cému、Waiveの『MUD FRIENDS』もありましたし、バンド同士でタッグを組む方が文脈が作りやすいというのもあるかもしれませんね。

ーー閉塞感を打破するようなイベントや良いバンドはもちろんいる、と。

オザキ:セールスや動員という実数を抜きにすれば面白いバンドは少なからずいますよね。“BCD”の流れから挙げると、その3バンドと一緒に数年前にツアーを周って仲がいいアンフィルは、空間系のエフェクターを使った洒落たギターが特徴の歌モノバンドで、浮遊感とちょっとした毒々しさをもっていて面白いですね。

アンフィル『olympos』MV FULL

藤谷:私はAIOLINに注目しています。より王道でメロディアスですけど、バイオリンとラウドサウンドの融合も目新しいですし、ボーカルのヒカリトさんはバイオリン以外にもピアノやギターも担当する多才なフロントマンです。楽曲のクオリティも高いと思います。

AIOLIN – Stardust Crystal [Official Music Video]

オザキ:ヒカリトさんは芸大卒なので知識と技術に裏打ちされたものを感じますね。

藤谷:AIOLINとは違った意味での王道ですが、Rides In ReVellionも面白いですね。“調和する時間の矛盾”がコンセプトで、古き良き時代のヴィジュアル系と現代的なものを融合させていて、この世代だから出来る王道をやってると思います。

Rides In ReVellion『カレタソレイユ』LIVE MOVIE (From 2017.11.05「Voyage」)

オザキ:ギターがめちゃくちゃクサいのがいいですよね。

藤谷:いまシーン全体を見ると変化球的なバンドの方が注目されがちなんですよね。今年ZeppTOKYOでワンマンを行った0.1gの誤算は、楽器を置いて踊ったり、ゴムボードでフロアにダイブしたりとギミック満載のライブを行っています。他にも今年Tik Tokで「ちゅーしたい」という楽曲がバズった甘い暴力や、「お邪魔します」がバズったまみれたも、フロアでブレイクダンスを踊ったり……ギミック多めなんですよね。もちろんそれはそれで面白いし魅力的なんですけど、その中で王道をやっているバンドもいることは発信していきたいですね。

オザキ:そのトレンド寄りのバンドではあるんですけど、僕は今年DIMLIMの「vanitas」には度胆を抜かれましたね。ゴリゴリなメタルというパブリックイメージを壊すようなクリーントーンのギターで構成された楽曲で、意外性があったし、こういうバンドがやることで幅と奥行きが出たな、と。

DIMLIM – vanitas (MV FULL)

藤谷:まだ結成間もないですけど、タソガレニ鳴ク。が面白いです。色んな音楽の要素を表面張力いっぱいに突っ込んでる感じがして、さっき言ったような「こういう音楽がやりたい」という勢いが伝わってくるというか。

【lyric video/official】息継ぎータソガレニ鳴ク。

オザキ:あと今年はDuelJewelの祐弥さんがユウヤヤバセとしてソロデビューしたり、摩天楼オペラの苑さんがソロプロジェクト・運命交差点を始動したりしていました。mitsuさん(ex.ν[NEU])やSHINさん(ex.ViViD)等、近年増えたヴィジュアル系ソロアーティストの出現がより加速した感じがあります。

藤谷:ユナイトの椎名未緒さんもソロ活動を始めましたしね。

オザキ:そういう意味で元SuGの武瑠さんがsleepyheadとして出した2枚の音源はどちらも素晴らしかった。色々なジャンルを取り入れて昇華して、映像やファッションにまでこだわるのはトータルアートとしてクオリティが高いですし、武瑠さんのセンスはhideさんに通ずるものがあるな、と感じます。

sleepyhead 「1 2 3 for hype sex heaven feat. SKY-HI,TeddyLoid,Katsuma(coldrain)」

藤谷:音楽と映像表現とファッションが連動するというのは、むしろすごくヴィジュアル系だなと思いますね。

オザキ:あとはBAROQUEですね。どうしても“昔すごかったバンド”と思われがちですけど、その枠に収まるには勿体ないくらい良い音楽をやっている。二人になって打ち出した、壮大な『PLANETARY SECRET』(2015年)の路線から、kenさん(L’Arc~en~Ciel)がプロデュースで関わった『G I R L』(2016年)でポップさを吸収して、今年絶妙なバランスになったと思います。

BAROQUE – FLOWER OF ROMANCE (Full ver.)

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