ヴィジュアル系シーンの“閉塞感”をどう打開する? ライター4名による2018年振り返り座談会

YOSHIKI feat. HYDE、X JAPAN無観客ライブ…2019年への期待は?

藤谷:今年というより近年の話にはなりますけど、kenさんが中堅バンドをプロデュースすることが増えましたよね。

白乃:BAROQUEもですし、今年はDaizyStripperやA9もプロデュースされていました。

冬将軍:“ギタリストのプロデュース”って感じですよね。プロデューサーにベーシストが多いのは全体のバランスを見れるというところにあるんだけど、「ギターヒーロー不在」と言われる時代に良い意味でギタリストらしいエゴを感じました。BAROQUE然り、ギターが面白いバンドなので合っていると思います。

藤谷:L’Arc~en~Ciel繋がりだと今年HYDEさんのソロが再開されましたが、VAMPSの進化系と言えるような、ヘヴィロック路線でした。そこにHYDEさんの強い意志が見えるなと思うのですが。今年活動休止したSADSもやはりヘヴィロックへのこだわりが見える。

冬将軍:サウンドとして好きなんだと思いますよ。L’Arc~en~Cielの初期はMinistryをSEとして使ってたくらいなので、原点的なものはそこにあるだろうし。インダストリアルからのミクスチャーロックという、90年代のあの時代を生きてきたからこそ出せる音。今のラウドロックシーンは開放的で洗練されてますよね。でも、あの頃ってもっと内に秘めたギラギラ感があったと思うんです。SADSはその辺りが顕著で、“ヘヴィ”ではなくなってきているシーンへのアンチテーゼを感じました。

ーーHYDEさんといえば、今年はYOSHIKI feat. HYDEというコラボがありました。

冬将軍:楽曲以前にYOSHIKIとHYDEがついに繋がった、という点が大きいトピックだったと思いますね。

ーー待望のコラボだった、と。

オザキ:待望というよりは、“こんなこと起こるんだ!”っていう印象が強いですね。それくらい想像もしなかった出来事だったので。

冬将軍:HYDE本人も“90年代じゃありえなかった”って言ってますしね。

ーーX JAPANの無観客ライブというトピックに関してはいかがですか。

白乃:私はX JAPANの幕張メッセの初日に行ったんですけど、あんなにX JAPANのライブにお客さんがいるのに若手ヴィジュアル系バンドには人がいないのかと感じてしまって、そこでもシーンの閉塞感を実感しました。

オザキ:そういう意味で『VISUAL JAPAN SUMMIT』(2016年)は大きかったですよね。

冬将軍:未だに“X JAPAN帝国”になってしまっているのが閉塞感に繋がっている気もしますけどね。なので、X JAPANを引きずりおろすようなバンドがいれば、シーンも盛り上がるのかなとも思います。

ーーそれでは最後に来年に向けて期待していることを教えてください。

白乃:来年はDEZERTがMUCCとツーマンツアーをやりますし、こういう若手が上の世代とやりあえるような、世代を越えたイベントが増えれば面白くなるかなと思います。年明けにフリーウィルが初めて『Free-Will SLUM』というフェスを開催するので、それが大きなお祭りになればと思います。DIR EN GREYの出演も追加で発表されたので、当日どうなるかますます期待ですね。

藤谷:シドの動きが気になりますね。今年は15周年ということでファンとより近い距離で行うライブハウスツアーがメインでした。来年は横浜アリーナが控えていますし、その次の展開も気になっています。ラーメン以外での話題を期待しています。

冬将軍:私は武道館までいったような中堅層のバンドの、さらなる世間的な跳ねに期待してます。もちろん頑張っているけど、もっといけると思うので。あとはやっぱり、“ヴィジュアル系なんてクソくらえ!”って言う面倒くさい若手ヴィジュアル系が出てくればいいなぁ。

藤谷:そうやって毒づくのを周りが期待するのは無責任だとは思うけど、面白い存在が出て来たときにそれをフックアップする勇気は持ちたいですね。

オザキ:そういう意味でDEZERTは、トレンドから一抜けして<MAVERICK>という大きい事務所レーベルに属したことによって、より多くの人に知られるきっかけを持てるようになった。千秋さんが望むような形で真っ直ぐにのびのびやらせてくれる環境を周囲が作ってくれるといいなと思うし、そうすれば彼は“面白い存在”になり得るなと思ってます。

藤谷:言動や飛び道具的な面白さで終わるバンドではないので、来年以降の動き、作品に注目したいですね。

オザキ:近年のヴィジュアル系で勢いがあるのはDEZERTとNOCTURNAL BLOODLUST(ノクブラ)とアルルカンで、それ以降のバンドが停滞していると言われている。でもDEZERTは音楽性を変えて、ノクブラはメンバーが脱退するので、その見方が一旦落ち着くと思います。一度切れたその流れのあとにシーンがどう動いていくのかは楽しみでもありますね。

白乃:DELUHIの限定復活やDuelJewelの復活という明るいニュースもありますしね。

藤谷:ヴィジュアル系というジャンル自体、期待値が低いというか、大御所以外は光の当たりづらい場所になりつつあるように思うんですよ。「概念としては知られているけど、今はどうなっているのかわからない」という人がほとんどなのでは。だからこそ、ライターも色んな場所で自分の言葉で語っていきたいし、現在進行系のヴィジュアル系を発信していきたいと思っているんですよ。

(取材=編集部/構成・文=オザキケイト)

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