『JUNCTION』インタビュー
早見沙織が語る、自作曲10曲のアルバム制作で見えた“歌い手・作り手としての現在地”
「コーラスを重ねまくるのが好きなんですよね(笑)」
ーーそんな「夏目と寂寥」のあとは、竹内まりやさんの手がけた「夢の果てまで」がどっしり鎮座しています。
早見:確かに鎮座してますね(笑)。まりやさんから提供いただいたこの曲と「新しい朝」がアルバムのカラーを作ってくださっていますし、この2曲をどこに置くかでも雰囲気がガラッと変わるアルバムだったと思います。
ーーその2曲を繋げるというのもアリだと思ったんですが、あえてそうしなかった。
早見:「新しい朝」は後半のブロック……最後の一つ前にいてほしいと最初から思っていたので、こういう構成になりました。
ーーなるほど。早見さんが手がけた5曲目の「白い部屋」は、ウィスパーボイスや多重コーラスを活かした楽曲です。これまでもアコギ、鍵盤、歌の弾き語りっぽいシンプルな構成の曲はいくつかありましたが、「白い部屋」は2番以降にストリングスも入って、グッとリッチになりますよね。作った時はシンプルなまま最後まで行こうとしたのでは、と思ったんですが。
早見:その通りです。かなり前にアレンジしていただいて、寝かせておいた曲だったんですよ。前口渉さんがその時もアレンジしてくださったんですが、当初は1番までしかつくっていなくて。でも、今回のアルバムに収録するとなって、2番以降のアレンジを聴いたら、同じ構成の上にウェッティなドラムが入っていたんです。そこで「このまま同じにしない方が面白いな」と思って、前口さんに「ここメロディを変えてもいいですか?」とご相談して、今の形になりました。
ーーそのアレンジによって、曲の持つポテンシャルが引き上がった感じがします。
早見:コーラスも、当初のものは終始結構な数を積んでいたんですが、最終的には前半は薄め、後半は厚めにしていただいてます。最後の方は「あなたの脳内に直接語りかけています……」みたいな感じですね(笑)。普通は二声、多くても三声なんですけど、この曲では結構な数を重ねていますし、いろんなところに配置しているので、立体的に感じていただけると思います。
ーー声のお仕事をしている方がここまでコーラスを積んでいると、本当に贅沢だなと思います。
早見:私がコーラスを重ねまくるのが好きなんですよね(笑)。
ーー歌詞に関しては少し前にもお話しましたが、やはりどんどん言葉数が少なくなっていっています。
早見:でも、この曲と「祝福」は結構最初の曲ではあるんですよ。
ーー時期でいうとどれぐらいなんでしょう? 「白い部屋」を聴いた時に思い浮かんだのは「雨の水平線」だったんですが。
早見:たしかに、時期的には近いと思います。「Jewelry」や「SIDE SEAT TRAVEL」を含めて5曲分くらい一気にアレンジしていただいたなかの曲でした。アルバム制作にあたって、ディレクターさんから「あの曲たちを入れてあげよう」と提案していただいて、今回収録することになりました。
ーーその「祝福」は「こんな尖った曲も入れるのか」と驚かされた1曲です。
早見:これでも結構まろやかになったんですよ(笑)。最初は突き抜けすぎていて、アルバムのイメージがこの曲に集中しないか心配になったこともあって、一つのスパイスとして機能するような楽曲にしていただきました。
ーーとはいえ、サビのメロディと歌はすごく特徴的で。
早見:歌詞もメロも全部一緒に作ったんですけど、鍵盤でミニマルな感じというか、小さい頃にピアノの教室で習う伴奏付けみたいなフレーズを繰り返して入れてみたら、上手くできたんです。そこをギターに差し替えてもらったり、河田(貴央)さんのご提案で、バッハのモチーフが一小節入っていたり。
ーー「カンタータ」147番の「主よ人の望みの喜びよ」ですね。
早見:はい。アレンジによってすごく広がりが出た1曲だと思います。