ポルノグラフィティの“綺麗ごとだけではない”応援ソング 新曲「ブレス」歌詞を考察
〈ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート/頼んでもないのにやたら背中を押す〉
ポルノグラフィティの新曲「ブレス」は、こんな挑戦的な歌詞から始まる。『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』主題歌である同楽曲は、彼らの前作「カメレオン・レンズ」で試みた洋楽的アプローチを引き継いだサウンドでありながら、ストリングスによって爽やかな印象を受けるアレンジに仕上がっている。岡野昭仁(Vo)が手がけた音数の少ないサウンドが、新藤晴一(Gt)の歌詞を引き立てる楽曲と言えるだろう。
9月に20周年イヤーを迎える彼らの人気の理由の一つは、新藤が紡ぐ歌詞。昨年9月には小説『ルールズ』を発売し、ツアー『15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”』では、ポエトリーリーディングを行うという新たな試みも見られた。一方で岡野が弾き語りを披露する場面もあり、それぞれの強みを前面に打ち出そうという思いを感じていた。今回の楽曲は岡野のボーカル(特に最後のサビ部分の伸びやかな歌声)と、新藤らしい少し斜に構えたような歌詞が見事に組み合わさり、彼らの魅力を改めて知らしめるような印象を受けた。
「Mugen」(2002年)で〈僕は駆け出していた〉、「ギフト」(2008年)で〈今行かなくちゃ 駆け抜けなくちゃ〉とはやるような気持ちを描いていた新藤が、「ブレス」では〈未来は早足でなきゃ/たどり着けないもんかい?〉と諭す。新藤は「人間も、ポケモンたちの“進化”みたいに、劇的に姿や形を変えられたらいいのだけどそうもいかず今の自分を奮い立たせるしかない。そんなふうなことを曲で表現できたらなと考えました」とコメントしていたが、今回の楽曲はまさに応援ソングにありがちな“背中を押す”歌詞ではなく、“今の自分”を肯定し、そのまま自分の道を行けば良い、とそっと教えてくれるような歌詞だ。
曲中でまるで皮肉のように使われる、ヒットチャートという言葉。20年に渡ってシーンの真ん中で活動してきたポルノグラフィティだからこそ説得力があるのだろう。映画の完成披露試写で岡野は、“ひとりじゃできないこと”に「ポルノグラフィティ、デビュー20周年」を挙げていた(参考)。
〈簡単に重ねるんじゃない 君を すぐに変わってゆくヒットチャートになんか〉
こうした歌詞はリスナーに向けた言葉であり、映画のテーマ“ひとりじゃできないことも、みんなの絆でできるようになる”に沿ったものであるのはもちろん、20年ともに活動してきた岡野への言葉のようにも読み取れる。
「ブレス」は20年のキャリアを持つポルノグラフィティならではの、綺麗ごとだけではない応援ソングだ。新藤らしいストーリー性のある世界観でありながら、現実を描いた歌詞をしっかりと読み込んで聴いてみてほしい。
(文=村上夏菜)
■リリース情報
『ブレス』
発売:2018年7月25日(水)
【初回生産限定盤】(CD+DVD) ¥2,000(税込)
【通常盤】(CDのみ) ¥1,300(税込)
【期間生産限定盤】(CD+DVD) ¥1,600(税込)
〈収録曲〉
・「ブレス」『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』主題歌
作曲:岡野昭仁 / 作詞:新藤晴一 / 編曲:tasuku、Porno Graffitti
・「海月」
作曲:岡野昭仁 / 作詞:岡野昭仁 / 編曲:tasuku、Porno Graffitti
・「ライラ」
作曲:新藤晴一 / 作詞:新藤晴一 / 編曲:宗本康兵、Porno Graffitti
・「ブレス instrumental」※期間生産限定盤のみ収録
作曲:岡野昭仁 / 作詞:新藤晴一 / 編曲:tasuku、Porno Graffitti
【初回限定盤特典】
・2017年8月に開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」のライヴ映像を収録
【期間限定生産盤限定特典】
・「『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』 short movie with 『ブレス』」
・ポケモンカードゲーム スペシャルキラカード「イーブイ」
・配信情報
「ブレス」2018年7月6日(金)より配信中