18scott×SUNNOVAが語る、濃密なヒップホップアルバム『4GIVE4GET』で示したシーンの行方

18scott×SUNNOVA対談

いまの日本のヒップホップの枠には収まらない作品

SUNNOVA

——では、アルバム『4GIVE4GET』の楽曲について聞かせてください。ふたりで作った最初の曲はどれですか?

18scott:「MONEY TALX」ですね。アルバムの最後にRamzaさんのリミックス(「MONEY TALX(Ramza Remix)」)が入ってるんですが、そのオリジナルバージョンが最初です。

SUNNOVA:最初は違うビートだったんですよ。

18scott:そう。ラップを乗せてから、ビートを差し替えて。

SUNNOVA:そのやりとりのなかで、「こういうビートが合いそうだな」というのがわかってきて、作るビートの傾向を変えて。個人的にポイントになった曲は「PHONE CALL」ですね。「バンドっぽい感じでやってみよう」というイメージで作ったんですけど、その頃に聴いてたThe xxの新譜(『I See You』)の影響もあるかも。そういう話はしてないですけどね。

[18scott × SUNNOVA - PHONE CALL【Official Music Video】]

18scott:The xx、ぜんぜん知らないです(笑)。ただ、「PHONE CALL」はトラックが届いたときに「すごくいい」と思ったし、歌詞もすぐに書けて。「絶対、この曲でMVを作ろう」と思ったし、「PHONE CALL」が出来たことでアルバムの全体像がバチっと見えたんですよね。<ULTRA-VYBE>(レーベル)から出すという話が進み始めたのも、ちょうどその時期で。


SUNNOVA:いまのモードに即した曲を作り始めたタイミングでしたね。僕は決まった制作方法がなくて、時期によって機材や作り方を変えちゃうので、「以前みたいな感じでやってみよう」と思ってもできないんですよ(笑)。

——アルバムの全体像が見えてからは、制作はスムーズでした?

18scott:そうですね。曲数を決めて、「こういう曲が足りないから、こんな感じのビートをください」という話をしながら、慎重にピースを埋めていって。

SUNNOVA:かなり緻密に構成した感じですね。18scottにとっては初めてのフィジカルの作品だけど、初期衝動というより、しっかり考えて作り込んだアルバムだと思います。

18scott:ビートも何もない時期から、曲順と曲名だけメモってたんですよ(笑)。SUNNOVAさんはインスタにビートをアップすることがあるんですけど、アルバムの設計図に照らし合わせて「○曲目に合いそうだな」と思って「そのビート、キープさせてください」とか。勢いで作って、後からアルバムとしてまとめる人もいると思うんですけど、僕はまず大枠を作りたいので。

——1曲目の「ALLRIGHT」、2曲目の「FOREST」はがっちりラップを聴かせる曲ですが、それも最初から決めてた?

18scott:あ、そうですね。リスナーとしても、1曲目で喰らいたいというか、ガツンと来てほしいので。

SUNNOVA:確かに最初の2曲は、ラップが上手くないと成立しないトラックだよね。サビのメロディもそんなに動いてないし。

18scott:ラッパーである以上、ラップは絶対にカッコ良くないといけないし、行けるところまで行ってないとダメだと思っていて。アルバムのなかにはメロディアスな曲もあるし、ヒップホップが好きな人もそうでもない人どちらにもアプローチ出来るようにバランスはすごく考えたんですけど、順番として、まずはラッパーであることを1曲目、2曲目でわかってもらわないといけないなと。7曲目の「BLUe」もそうですね。アルバムの中盤は歌モノが続くから、このあたりでラップを聴かせる曲を入れておきたくて。

SUNNOVA:途中、オートチューンを使った曲もあるからね。

18scott:オートチューンを使った曲は以前から好きなんですけど、ヒップホップシーンのなかでは、だいぶ垣根が高い時期があって。

SUNNOVA:オートチューンを使ったとたんに「セルアウトした」っていうね(笑)。

18scott:そうそう(笑)。それも人によると思うんですよ。たとえばKREVAさんがオートチューンを使っても、がっつり歌ったとしても、「この人がやってることはヒップホップだ」という認識が自分のなかにあって。ロックバンドでラップをやってる人もいるけど、「この人のなかにあるヒップホップが完全に出てるな」と感じたりしますからね。もちろん、そうじゃない人もいるけど。

SUNNOVA:そのあたりの感覚って、僕はわからないんですよ。「たとえばヒップホップの現場で、どの曲が刺さるか?」ということは彼のほうがよくわかってるので。僕としては、さっきも言った通り「広がりが出ればいいな」というところですね。曲としてもいいものが出来たと思うし、そこは良かったかなと。

——歌詞に関しても、大枠のテーマみたいなものがあったんですか?

18scott:アルバムのタイトルをだいぶ前から決めていて、それに準じて書いていった感じです。『4GIVE4GET』は、許す(forgive)、忘れる(forget)という意味で。アルバムの制作に入る頃に、信頼していた仲間、大切に思っていた人から裏切られることが重なったんですよね。そのときはだいぶ参ってたんですけど、バッド・ヴァイブスをため込むとどんどん連鎖しちゃって、いいものが入って来なくなると思って。「あいつにこんなことされた」「あいつマジむかつく」みたいなことは、誰にでもあるじゃないですか。大事なのはそのことにどう対処して、どう昇華するかってことだと思うんです。最終的には、許せるマインドを持って、忘れることなのかなと。それができれば、自分自身の生活がもっと豊かになると思うので。

SUNNOVA:なるほど。

18scott × SUNNOVA - LOVELESS

18scott:自分がそれを実行できたかはわからないけど、そういうテーマで歌詞を書いてましたね、このアルバムは。なので、イライラしている人にも聴いてほしいんですよね。そういう人の気持ちもわかるし、最後は大切なものを見つけられるアルバムになっていると思うので。

——ヒップホップに対するスタンス、幅広い音楽性、伝えるべきメッセージを含めて、濃密なアルバムになりましたね。

18scott:ようやく世に問えますね。2年くらい前から、ライブでずっと「アルバムを出します」って言ってたんですよ。数少ないファンの人から「楽しみにしてます」って言われて、何も決まってないのに「来年の夏には出すよ」とか。

SUNNOVA:出す出す詐欺だね(笑)。

18scott:最近は恥ずかしくて言えなくなってましたからね(笑)。ようやくアルバムを出せることがまず嬉しいし、すぐに次の作品に向かって動かないといけないなと思ってます。遅くなったぶん、取り返さないと。

SUNNOVA:1枚アルバムを作って、わかってきたところもたくさんありますからね。

18scott:「こうすれば効率的にやれる」とか。次はもうちょっと早く出せると思います。

——18scottという名前もさらに広まると思いますが、シーンのなかで、どういう立ち位置を目指しているんですか?

18scott:個人的にはシーンのトップに行きたいですね。

SUNNOVA:おー!!

18scott:それを目指さないと、やる意味ないと思うので。もしトップになれたら、次のステージが見えてくるだろうし。がんばらないとダメですけどね、まだまだ。同世代でも、かなり先に行ってる人たちがいるので、まずは彼らに追いついて、追い越さないと。

——『4GIVE4GET』のクオリティは世界レベルだと思いますけどね、個人的には。

18scott:ホントですか?じつは僕も、世界水準のアルバムが出来たと思ってますけどね。いまの日本のヒップホップの枠には収まらない作品だと思うので。

SUNNOVA:まずは日本のなかで認知してもらうことが大事だけど、たとえばKOHHさん、88risingのHigher Brothers、Jojiが世界で活躍しているのを見ると、英語圏においても「英語じゃない」という理由で切り捨てられる感じではなくなってるじゃないですか。それもサブスクの恩恵の一つかもしれないけど、海外に発信しやすい時代になったと思いますね。

(取材・文=森朋之/写真=はぎひさこ)

■リリース情報
アルバム『4GIVE4GET』
レーベル : ULTRA-VYBE, INC.
発売日 : 2018年12月19日(水)
フォーマット : CD(歌詞カード付属)
税抜価格 : ¥2,300
収録曲
1. ALLRIGHT
2. FOREST
3. HNDSGN feat. サトウユウヤ
4. LOVELESS
5. COME BACK LATER
6. U feat. NF Zessho
7. BLUe
8. 渦の中心
9. MONEY TALX
10. I.D.N. feat. BASI(韻シスト)
11. PHONE CALL
12. BROKEN...
13. FOREST (Aru-2 Remix)
14. MONEY TALX (Ramza Remix)

デジタルEP「Teardrop 」
レーベル : ULTRA-VYBE, INC.
配信開始日 : 2018年11月16日(金)
収録曲
1. Teardrop
2. North Side
3. Blind feat. Taeyoung Boy
4. Angels

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