18scott×SUNNOVAが語る、濃密なヒップホップアルバム『4GIVE4GET』で示したシーンの行方

18scott×SUNNOVA対談

 1993年生まれ、神奈川県藤沢市出身のラッパー/ビートメイカー・18scott、そして、DAOKO、泉まくらなどへのビート提供、ロックバンド・downyのライブメンバーとしても知られる音楽プロデューサー/ビートメイカーのSUNNOVAによるアルバム『4GIVE4GET』(18scott×SUNNOVA)がリリースされる。エレクトロ、アンビエント、ドローンなどを融合させたSUNNOVAのトラック、そして、「自分がラップをすれば、どんなトラックもヒップホップになる」(18scott)という18scottのスキルフルなラップが融合した本作は、この先のヒップホップシーンの行方を示す大充実作に仕上がってる。

 3年前、恵比寿のクラブで出会ったふたりが本作『4GIVE4GET』を生み出すまでのプロセスを中心に、お互いのルーツ、現在のヒップホップシーンに対するスタンスなどについて語ってもらった。(森朋之)

「これだけの人が、なんで名前を知られていないんだろう?」って

18scott

——18scottさん、SUNNOVAさんの交流が始まったのはいつ頃ですか?

18scott:3年くらい前かな。恵比寿のBATICAというクラブでイベントが一緒になって。そのときにお互いのライブを観て、話し掛けてもらったのがファーストコンタクトです。僕はSUNNOVAさんというビートメイカーを知っていたんですけど、僕のほうは今以上に無名だったから、たぶん認知されてなかったんじゃないかな。

SUNNOVA:うん(笑)。そのときに初めて彼の存在を知って、「こういう才能のあるラッパーがいるんだな」と思って。ヒップホップ的な基礎体力、スキルがすごくあって、なおかつサビのメロディも自分で作れるラッパーは、そんなにいないですから。あのときって大学生だったよね?

18scott:はい。就職活動中でした(笑)。

——18scottさんは当時、どんな活動をしていたんですか?

18scott:以前はクルーに所属していたんですけど、ちょうどソロでやり始めた時期ですね。そのライブのときは、クルーを辞めて、ひとりでやりはじめた直後だったんです。ただ、活動と言えるようなことはやってなかったですね。BATICAの店長は目を掛けてくれて、ときどきイベントに呼んでもらってたんですけど、それ以外にハコの知り合いもいなくて。ずっと曲は作っていたし、自分ではいいものが出来てる自負もあったんだけど、それをどうやってアウトプットすればいいのか全然わからなかったんです。あと「飛び級したい」とも思っていたんですよね。22歳って若いけど、当時、もっと若くて有名なラッパーもいたし、いまから下積みをやる時間はないなと。どうにかして一歩目を大きく踏み出せないかなって、いろいろ考えている時期でした。

SUNNOVA:一歩踏み出すまでに、だいぶ時間かかったね(笑)。

18scott:そうですね(笑)。

SUNNOVA:「これだけの人が、なんで名前を知られていないんだろう?」って思いましたからね。個人的にはFla$hBackSのライブを初めて観たとき以来の衝撃だったし、「この人は勝手にひとりで大きくなっていくだろうな」と。

——一緒に制作をするとは思ってなかった?

SUNNOVA:そのときは思ってなかったですね。「一緒に出来たらいいね」って声は掛けたんだけど、その後、半年くらいタイムラグがあって。

18scott:一緒にライブをやるはずだったDJがいなくなっちゃって、半年くらい何のコンタクトも取ってなかったSUNNOVAさんにいきなり「バックDJをやってもらえませんか?」って連絡したんです。他にDJの知り合いもいなかったので……。人付き合いが上手いタイプじゃないんですよね。

——クラブとのつながりもないし、DJとの交流もない(笑)。そういえばプロフィールにも「藤沢を地元に持ち、藤沢を愛しながらも、既存の藤沢のヒップホップシーンに関わることなく活動してきた」とありますが。

18soctt:そうなんですよね(笑)。藤沢はヒップホップが盛んで、まだ作品をリリースしてない人も含めて、たくさんラッパーがいるんです。彼らは本当に藤沢のノリが色濃くて、作る音、言葉のチョイスや乗せ方を含めて、「藤沢のラッパーだな」という感じがすごくあるんですよ。中学くらいからスケボーをはじめて、そこでヒップホップを知って、自分でもやるようになって……という人が多いし、ルーツが地元にあるので。僕はそうじゃなくて、後になって「藤沢にもカッコいい人達がいる」って知ったタイプなので、そもそもルーツが違うというか。曲のなかに「藤沢」ってフレーズも出してるけど、藤沢を代表している感覚はないんですよね。生まれ育った場所だし、いまも住んでいるので大好きですけどね。いつか「藤沢といえば18scottだよね」って言ってもらえるようになれたら嬉しいけど、自称はしないです。

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