Ken Yokoyamaは、“続けていく、繋げていく”を伝えていく Matchanラストのツアー新木場公演

Ken Yokoyama、Matchanラスト公演

 一般論として書くが、誰だって変化は怖い。日々の生活は安定していたほうがいいのだし、信頼できる関係性はできれば長く続けたい。でも同時に誰もが変わっていく。考え方や感覚は年齢と共に変化し、興味や気分なら呆れるほどに移ろうものだ。昔は気が合ったけど最近は関係にストレスを感じるようになったとか、さっきまでコレが食べたかったけど今はアレが食べたい気分だとか、そこに逐一説明を求められても困る。それがごく普通の人間なのだと思う。

 横山健は、そういった心の動きに毎回向き合い、必ずなんらかの落とし前をつけようとする人、なのだと思う。偶発的変化に戸惑いはしても、結果的にそれを必ず血肉にする。また個人的な変化には何としてでも周囲を巻き込むエネルギーを使う(たとえばMinami加入後に「Going South」が生まれたのは前者、突然ロックンロール路線に走ったのは後者のパターン)。そんな彼の思考を受け止めて、その都度足並みを揃え、たとえ曲調が変わろうがメンバーが変わろうが「続けていく、繋げていく」を伝えていく。それがKen Bandの役割であり面白さなのだと改めて理解した。これはMatchanというピースを失う直前だから見えてきたこと。いつになく荒ぶったまま、感動なんてワードを意地でも避けてやろうとする佇まい。それがとても貴重で面白かった。

 「Ricky Punks III」、「Walk」、「Let The Beat Carry On」と名曲の連打で締めた本編。すでに2時間以上が経過しており、一度目のアンコール後、ヘトヘトになったファンの半分以上はフロアを後にしていた。そのタイミングで起きたサプライズ。一曲歌うと宣言したMatchanが、最初で最後のボーカルを務めた「上を向いて歩こう」のカバー。ドラムを叩きながら歌う、坂本九の「Sucky Yacky」である。ジャイアンのごとき大声で歌いきり、スッキリした笑顔で頭を深く下げたMatchanに拍手を。これが、Ken Band流の落とし前のつけ方だ。

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(写真=Ken Yokoyama:Wataru Umeda/Dizzy Sunfist:半田安政(Showcase))

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

Ken Yokoyama オフィシャルサイト
Dizzy Sunfist オフィシャルサイト

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