Ken Yokoyamaが語る、スプリット盤リリースの意義「当たり前のことをやっても面白くない」
Ken YokoyamaとNAMBA69によるスプリット盤『Ken Yokoyama VS NAMBA69』が6月6日、リリースされた。2017年のHi-STANDARDの活動を経て、次のKEN BANDとしてのアクションを模索していたと語る横山健。今回のインタビューでは、そのHi-STANDARD以降の今作までの経緯、それぞれのメンバーからみたHi-STANDARDとKEN BANDの違い、KEN BANDメンバー取材で聞くことができたレコーディングでのこだわりからKen Yokoyama、NAMBA69として表現した音楽について小野島大がじっくりと訊いた。(編集部)
KEN BANDの方が精神性が出る(Ken Yokoyama)
ーーPIZZA OF DEATHのHPで、健さんご自身が今回のスプリットシングルについて詳細にお書きになってるんですが、改めて今作の制作の経緯をお話いただけますか。
Ken Yokoyama:Hi-STANDARDの2017年の活動が終わって、次にKEN BANDの活動に戻る時に、普通のことをしたくなかったんですね。当然曲を作りたいという欲求はあったんです。ツアーをするんでも、今までの曲をやってるだけじゃ、人がついてきてくれるとは思えない。新しいマテリアルをどんどん見せて刺激的な存在でいないと、人はわざわざ時間をお金を割いてライブになんか来てくれないと思うんですね。でもかといって漫然とアルバムに向かう気もしなかった。なにか刺激的なことがないかなと。(選択肢は)限られている中で、それでもアルバムに向かうしかないのかと考えた時期もあったんですが……そこで、ナンちゃん(難波章浩)とスプリットを出すのって、KEN BANDにとってもNAMBA69にとっても一番意味があって刺激的なんじゃないか、と。しかも『Gift』ツアーのあとにね。
ーーKEN BANDをやるにしても、今まで通りのやり方では刺激がないと思ったのは、やはりハイスタという大きなバンドでがっつりやってきたあとだから、ということですか。
Ken Yokoyama:そうですね。発想としては普通にKEN BANDの活動を考えてたんです。でも……それじゃ物足りない。なんでだろうな。理由はよくわかんないんですよね。
ーーそれはお客さんが刺激が足りないだろうと思ったのか、それとも健さん自身が刺激が足りなかったのか、どちらでしょう。
Ken Yokoyama:両方だと思います。ハイスタのツアーが終わって、アルバムの制作に向かうのが当たり前だけど、そんな当たり前のことをやっても面白くない。ほかにないのかなって考えるんですよ。人にとっても僕にとっても、そのまんま行くのは何の刺激もなかった。なのでNAMBA69とのスプリットというアイデアを突然思いついた時は、この手があったのか! と思いましたね。
ーーそんな健さんのアイデアをどう受け止めましたか。
Jun Gray:素直に、面白いと思いましたね。せっかくあんなでっかいバンドでがっつり動いたし、それがKEN BANDの次の活動にも繋がっていけばいいと話してたんです。去年の末にハイスタのツアーが終わって、お客さんたちが「ハイスタ・ロス」みたいな感じになってしまうところに、うまく繋げるには、(スプリットは)グッドアイデアだと思いましたね。
ーーハイスタ・ロスってあるんですかね。
Jun Gray:あったんじゃないですかね。さいたまスーパーアリーナで「終わっちゃったな」みたいなのは。それをKEN BANDやNAMBA69に繋げられる。いいアイデアだと思いますね。
ーーMatchanはどう受け止めましたか。
Matchan:まずはびっくりしましたね。すごく仲がいい、近いバンドであるのはわかっていたし、一緒にライブもやるけど、そういう絡み方をするとは想像してなかったから。たぶんお客さん的にも衝撃がでかいだろうなって。素直にびっくりしました。
Hidenori Minami:KEN BANDとして音源を出すことを考えると、前のアルバムからだいぶ時間が経ってたんで、これからフルアルバムを作るとなると、曲もない状態だったし、だいぶ先だなと思ったんです。なのでスプリットは何かを世の中に出すためのいいきっかけだと思いました。3曲でいいし、タイミングのいい話だなと。
ーーそもそも健さんがハイスタの活動をやっている間は、メンバーの皆さんはどう受け止めていたんですか。
Jun Gray:2017年の冒頭には、今年は(ハイスタの)アルバムも作らなきゃいけないから、それなりの時間は費やすことになるって聞いてましたから。健はそうなるんだなって了解してました。KEN BANDも活動は止まっていなかったけど、ライブの本数は前年に比べるとだいぶ減ったし、お客さんもそれは感じてたと思う。自分も(了解はしていたものの)多少ストレスは感じてましたね。でもそれはしょうがないし、それだけ大きなプロジェクトが動いてるわけだから。
ーーハイスタのライブはご覧になったんですか。
Jun Gray:見ました。さすがだな……というのはあったけど(笑)。でもハイスタとKEN BANDは違うなって思った部分もあったし。
ーーどういう部分ですか。
Jun Gray:それは……単純にいうとフロントマンが違うっていうのもあるし、ライブの雰囲気とか運び方も微妙に違う。ハイスタすげえな、さすがだなと思いながらも、オレなんかは「こっちにも付け入る隙はあるんだぜ」(笑)って思った部分もあるし。
Matchan:同じメンバー(横山健)がいても、全く別物だなと思いましたね。ハイスタやってる健さんとKEN BANDの健さんは、僕にとっては全然別物だなと。
ーーどう違うんですか。
Matchan:あまりはっきり言葉にはできないんですけど……ハイスタだとハイスタのギタリストとしてギターを弾いてる。KEN BANDだと横山健という存在なんだなと感じましたね。
ーープレイも違うってことですか。
Matchan:僕は違うと感じましたね。同じようなフレーズを弾いていても、全然違うように感じました。見慣れたギターで見慣れた弾き方で弾いてるんですけど、全然違うように感じました。
Jun Gray:(ハイスタでは)きちっとギター弾いてんなって思った(爆笑)。
Matchan:ああ、丁寧に。それはあるかも(笑)。
Jun Gray:こっちはMinamiちゃんに頼ってる部分もあるだろうから、ライブだと。
ーーMinamiさんいかがです?
Hidenori Minami:いろんな見方があると思うんですけど……実際僕も(ハイスタの)ファンだったわけで(今も)、そういう目線でも見れるし……ひとつは、世の中からの求められ方が違う。KEN BANDとハイスタでは。昔聞いてて久しぶりにライブハウスに足を運ぶお客さんがいっぱいいるじゃないですか、ハイスタでは。KEN BANDはたぶんそういう要素は少ないと思うんですよ。
ーーお客さんの層も違うんでしょうか。
Hidenori Minami:たぶん違うと思います。(ハイスタは)仕事休んで久しぶりにライブに来ちゃった、みたいな人がいっぱいいたと思うんですよ。で、あの頃聞いてた曲をもう一回聴ける、みたいな。そういう求められ方がある。KEN BANDはそこまで歴史がない分、少ないかなと。
ーーなるほど。健さんご自身はKEN BANDとハイスタで、向かう姿勢とか気持ちとかやってることは、どう違うんでしょうか。
Ken Yokoyama:人前に出てたくさんの人たちの前でやる、それぞれ気持ちや時間を割いて来てくれることに対する感謝は、どっちも一緒ですね。ただHi-STANDARDとKEN BANDでは、自分の役割が違うんですね。Hi-STANDARDはナンちゃんが歌うんで、僕もコーラスするし前に立ってますけど、1.5列目のつもりなんですよ、やっぱり。司令塔のつもりで。恒ちゃん(恒岡章)のとこ行って、ナンちゃんのとこ行って、2人がOKかどうか見て。KEN BANDだと演奏を3人に任せて僕はお客さんの方しか見ないです。
ーーああ、なるほど。
Ken Yokoyama:はい。だからギター弾かなくなるんですね(笑)。
Jun Gray:ははははは!
Ken Yokoyama:それだけ、KEN BANDの方が僕にとっては精神性が出るものなんです。
ーー3人が作っている音に自分が乗っかって、お客さんと対話している、という感じもある。
Ken Yokoyama:そうですね、はい。
ーーハイスタからKEN BANDの切り替えはどうされるんですか。
Ken Yokoyama:これが案外、切り替えを必要としてないんですよ。……でも必要としてないのは、同じ時期にライブを入れないようにしてるから、切り替える時間があるだけで……もし今日ハイスタで明日KEN BANDとなったら、切り替える必要があるかもしれないですね。
ーー曲を作る時に、ハイスタ用とKEN BAND用は分けて作るんですか。
Ken Yokoyama:それも同時期に作ったことないんですよ。去年1年はずっとハイスタの曲を作ってたんで、その時はKEN BANDの曲作りはストップしてました。
ーーということはやはり分けて考えている?
Ken Yokoyama:(考えて)うん、そうですね。