斉藤和義「カラー」に感じる、時の流れと人の気持ちの動き ライブ音源収録の新作を聴いて

斉藤和義「カラー」に感じる、時の流れと人の気持ちの動き ライブ音源収録の新作を聴いて

 デビュー25周年を迎えた斉藤和義が、約20カ月ぶりにリリースするシングル曲「カラー」は、映画『かぞくいろ —RAILWAYS わたしたちの出発—』(吉田康弘監督)主題歌として書き下ろしたもの。この映画は、主演の有村架純が夫(青木崇高)と死別、その息子を伴い夫の故郷で鉄道運転手を目指すヒューマンドラマで、ローカル線を舞台にした「RAILWAYS」シリーズ第3弾だ。別れによって引き裂かれ、運命によって出会った人たちが「かぞく」になっていく心温まる物語に、斉藤は見事にふわさしい曲を提供した。「カラー」は、離別の悲しみはモノクロームだけれど、それは新しい出会いで色がついていく。人と人が色をつけていく。そんな時の流れと人の気持ちの動きを感じさせる曲だ。

 撮影現場となった九州の肥薩おれんじ鉄道を斉藤は訪ね、その経験を生かして歌を書き上げたのだとか。「カラー」のMVも肥薩おれんじ鉄道を再訪して撮影されたものだ。鉄道好きとは聞いていないが、どこか郷愁を誘うものや景色に斉藤は反応する気がする。ビンテージ楽器が好きだったりオーセンティックなロックやブルースを愛する斉藤と、のんびり走るローカル線はなんだか似合っている。「カラー」はガタンゴトンとレールの切れ目でビートを刻む列車のテンポで歌っているのではないだろうか。これは代表曲「やさしくなりたい」をはじめ彼が得意なテンポともいえるので、今回わざわざ選んだわけでもなかろうが、程よい安心感と高揚感を与えてくれる曲なのは間違いない。最新アルバム『Toys Blood Music』がそうだったように、「カラー」もほとんどの楽器を斉藤自身が演奏して録音している。そんなマイペースぶりも、ローカル線と通じるようでもある。

 この「カラー」はシングルとしてリリースされるにも関わらず、初回盤には全12曲、通常盤には4曲を収録している。初回盤は下手なアルバムよりも長い1時間を超える収録時間と聞けば、大盤振る舞いにファンならずとも手が伸びるというものだろう。しかも、全国6カ所9公演を行なったデビュー25周年アニバーサリーツアー『KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 “25<26” 〜これからもヨロチクビーチク〜』のアフターパーティとして行われた札幌での追加公演の音源だ。ツアーは真壁陽平(Gt)、崩場将夫(Key)、山口寛雄(Ba)、河村吉宏(Dr)がバックを務めたが、この札幌公演のみ隅倉弘至(Ba)、玉田豊夢(Dr)の3ピースで演奏しており、斉藤も存分にギターを弾いている。ザクザクとした「レノンの夢も」や熱っぽい「FISH STORY」、アコギで聴かせる「空に星が綺麗」にブルースハープも聴かせるデビュー曲「僕の見たビートルズはTVの中」と、カラフルな曲と演奏で楽しませる。

 そして圧巻は、ラストを飾る10分超えの「歌うたいのバラッド」だ。ここで斉藤は実に味のあるギターソロをたっぷり聴かせる。気持ちよさそうに演奏に没入する彼の姿が眼に浮かぶようだ。元々6分半もある曲だが、面と向かって言えないことを歌にしてみる歌うたい。歌うたいでなくても、それができたらと思うだろう。この曲は、斉藤にとって大切な曲の一つなのではないかと思う。だからこそ、この音源の後半で聴かせる気持ちの入った長いギターソロに心揺さぶられるのだ。大切な曲は、音楽は、時間も気持ちもリセットして、ピュアな瞬間に連れて行ってくれる。そのことを斉藤も心底知っているからこそ、こうした曲を書き、大切に演奏をするのだと思う。

 だがピュアな音楽は一つではない。ロックやパンクが持つ歴史的な面白さや荒々しい破壊力とそれがもたらす刺激の心地よさも斉藤は愛している。中村達也(Dr)と組むMANNISH BOYSは瞬発力抜群のロックデュオだが、久々に活動再開、1月にNew EP『Naked』を発表するとアナウンスされた。また、4月から2カ月に渡る斉藤の弾き語りツアーも告知されているが、弾き語りといっても数年前にはステージ狭しと自らコレクションしている様々なギターや、メロトロンやウーリッツアーなどキーボード類を並べ、嬉々として演奏していったライブもあったから、どんなものになるか油断はできない。そんな風に気取りなく音楽をやる楽しみを見せて楽しませてくれるのが斉藤和義。平成から次の時代になっても、彼は同じように歩いていくに違いない。

■今井智子
音楽ライター。『朝日新聞』『ミュージックマガジン』『ロッキングオン』『ロッキングオンジャパン』『EMTG MUSIC』などで執筆中。

斉藤和義『カラー』

■リリース情報
『カラー』
発売:2018年11月28日(水)
映画『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』主題歌
【初回限定盤】
価格:¥1,800(税抜)初回限定盤のみ豪華三方背ケース仕様
<収録曲>
01 カラー
02 劇的な瞬間(Live Ver.)
03 CAT STYLE(Live Ver.)
04 レノンの夢も(Live Ver.)
05 あこがれ(Live Ver.)
06 FISH STORY(Live Ver.)
07 Happy Birthday to you!(Live Ver.)
08 空に星が綺麗(Live Ver.)
09 真夜中のプール(Live Ver.)
10 アゲハ(Live Ver.)
11 僕の見たビートルズはTVの中(Live Ver.)
12 歌うたいのバラッド(Live Ver.)
※02~12は「KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 After Party at Zepp Sapporo 2018.09.19」のLive収録音源です。

【通常盤】
価格:¥1,000(税抜)
<収録曲>
01 カラー
02 FISH STORY(Live Ver.)
03 Happy Birthday to you!(Live Ver.)
04 真夜中のプール(Live Ver.)
05 僕の見たビートルズはTVの中(Live Ver.)
※02~05は「KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 After Party at Zepp Sapporo 2018.09.19」のLive収録音源です。

【配信情報】
11月28日(水)よりiTunes、レコチョク、mora他主要ダウンロードサイト、Apple Music、LINE MUSIC、Spotify他主要サブスクリプションサービスにて配信開始。

MANNISH BOYS
EP『Naked』
発売:2019年1月9日(水)
※全8曲(内instrumental4曲)収録
※初回生産分スリーブケース仕様 
価格:¥2,000(税抜) 
<収録曲>
01. 裸の逃亡者
02. Sweet Hitch Hike
03. 蠍座の鍵盤
04. I need somebody to love
05. 赤い椅子
06. 吠え面
07. 硝子の50代
08. マタンキ

■ライブ情報
『斉藤和義 2019年弾き語りツアー』
4月13日(土) 石川・本多の森ホール
4月14日(日) 長野・ホクト文化ホール
4月16日(火) 新潟・新潟県民会館
4月19日(金) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
4月26日(金) 北海道・旭川市民文化会館 大ホール
4月27日(土) 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
4月30日(火・祝) 大阪・フェスティバルホール
5月1日(水・祝) 大阪・フェスティバルホール
5月3日(金・祝) 広島・広島文化学園HBGホール
5月7日(火) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
5月8日(水) 京都・ロームシアター京都 メインホール
5月10日(金) 奈良・なら100年会館 大ホール
5月15日(水) 香川・レクザムホール(香川県県民会館) 大ホール
5月17日(金) 岡山・岡山市民会館
5月18日(土) 島根・出雲市民会館
5月23日(木) 栃木・宇都宮市文化会館
5月25日(土) 岩手・北上市文化交流センター さくらホール 大ホール
5月26日(日) 宮城・仙台サンプラザホール
5月28日(火) 山形・酒田市民会館「希望ホール」
6月1日(土) 静岡・静岡市民文化会館 大ホール
6月2日(日) 三重・三重県文化会館 大ホール
6月4日(火) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
6月9日(日) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
6月12日(水) 東京・中野サンプラザホール
6月13日(木) 東京・中野サンプラザホール
6月16日(日) 熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
6月18日(火) 福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
6月19日(水) 鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
6月22日(土) 沖縄・沖縄コンベンション劇場

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