Aqoursがライブで告げる新たな船出ーー『ラブライブ!サンシャイン!!』東京ドーム公演を見て

 しかし、この日の最大の見せ場はここから。暗転したステージにパッと照明がついた瞬間、メインステージ奥に巨大なAqours Shipが登場し、そこに乗り込んだ9人が「WATER BLUE NEW WORLD」を歌いながら広大な東京ドームを進んでいく。ここで観客のペンライトが一面青に変わり、彼女たちが大海原を航海するような景色が生まれた。ふたたびドーム最後方までやってきた彼女たちは、〈いつの間にか来たね/こんな遠いところまで〉という歌い出しを持つ「キセキヒカル」を浦の星交響楽団の生演奏とともにパフォーマンス。続く「Awaken the power」では鹿角聖良役の田野アサミと鹿角理亞役の佐藤日向が登場し、Saint Aqours Snowでの共演が実現した。続いてはじまったのは、9人がファンに「みんなが10人目のメンバー」と伝える「No.10」。ここではスクリーンに登場したスナップ写真風の枠にメンバーやキャストが映し出され、「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」……とひとりずつ続く掛け声の最後に「10!!」と東京ドーム中の声が響く。Aqoursメンバーと、それを演じるキャストたち、そして彼女たちを見守ってきたファンがひとつになった、Aqoursの歩みに思いを馳せずにはいられない瞬間だった。本編最後は「勇気はどこに?君の胸に!」で大合唱が起こり、メンバーがAqours Shipに乗り込むと、船上で観客と合唱した。

 鳴りやまない拍手に応えて登場したアンコールでは、新衣装で「未来の僕らは知ってるよ」とTVアニメ2期第13話の挿入歌「WONDERFUL STORIES」をパフォーマンス。観客の合唱がより大きなものになっていく。そして披露されたラスト曲「Thank you, FRIENDS!!」では、ファンへの感謝や、出会えた奇跡に思いを馳せながら、同時にこれから進む場所を〈みんなで探そうか〉と力強く歌う。アンコールを終えても鳴りやまない歓声に9人がふたたび登場し、マイクを切って自らの声で何度も感謝を伝える姿に感動が止まらなかった。

 年末の『NHK 紅白歌合戦』、年明け早々の劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』、『ラブライブ!』シリーズ初のアジアツアー、来年6月のメットライフドームでの5thライブと、Aqoursの歩みはまだまだとまらない。そして、デビュー曲「君のこころは輝いてるかい?」で〈まだ夢に気づいたばかり〉と歌っていた彼女たちの物語は、いつしか多くのファンを巻き込み、様々な夢を叶え、遂には東京ドームを埋めるまでに広がった。ここからの物語を“みんなと”紡いでいきたい、そしてこの楽しい時間を永遠に続けたい――そんなメンバーによるこれまでへの感謝と、これからへのワクワクとした期待感に溢れた、グループの新たな船出を告げるようなライブだった。

(C) 2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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