2ndアルバム『PURE』インタビュー
向井太一×mabanua「Haters」対談 “表現者”として負の感情をポジティブに変える
自分を好きになって自信を持つことの大切さを問う
mabanua:今回もプロデューサー陣が豪華だよね。個人的にはShingo.Sさんと太一くんが繋がっているのに驚いた。彼は僕がOvallでデビューした頃から知っていて。
向井:そうなんですね。僕、「中学生カラオケ選手権」みたいなものに出たことがあるんですけど、その時に生まれて初めて人前で歌ったのがShingo.Sさんの曲だったんです(笑)。その時に、人前で歌う快感……毛穴が開く感じが忘れられなくて、あれが僕の音楽キャリアの始まりかもしれない。初めてShingo.Sさんにお会いした時、「いつかご一緒させてください」ってお願いしていたことが、ようやく叶う……(笑)。なので、この「ポートマン」という曲は、あえて昔のJ-R&Bっぽい雰囲気にしてもらっています。僕がグッとくるツボ満載の曲ですね(笑)。
mabanua:蔦谷好位置さんと一緒にやるのも初めて?
向井:そうです。スタジオでイチから作っていきました。この「Answer」という曲は、フィーチャリングでKREVAさんに入ってもらったんですけど、うちの母親がとにかく大ファン(笑)。一緒にライブを観に行っていたくらいだったので、ある意味では親孝行ができましたね(笑)。KREVAさんこそ、ヒップホップがまだマイノリティだった時に、それをJポップのフィールドまでフックアップしたというか。コアなことをやりつつ武道館を満員にしたりフェスのヘッドライナーをしたりする活動の仕方は、自分の目指すべきところでもあるので非常に感銘を受けましたね。
──LUCKY TAPESの高橋海さんがプロデュースした表題曲「Pure」は、個人的にも好きな曲です。
向井:この曲も、ある意味では「Haters」と同じくネガティブな感情から生まれました。というのも、僕はずっと田舎育ちで周りに共通の趣味の友人が一人もいなくて、上京しても「もっと売れる音楽をやったらいいのに」とか「ビジュアルと音楽性にギャップがあり過ぎ」とか言われ続けて、なかなか自分に自信が持てなかったんです。でも、音楽活動を続けているうちに今のスタッフとも出会えて、だんだん周りに自分がやりたいことを賛同してくれる人も集まってくれるようになって、ようやく自分を肯定できるようになってきたんですね。何か嫌なことがあったり、環境に馴染めなかったりした時、周りを変えるのではなくてまず自分自身を変えるというか、自分を好きになって自信を持つことが大事なんじゃないかと思うんです。
mabanua:ほんとそうだね。
向井:あと、細かいことは言えないんですけど、ちょっと前に世間でも話題になった、ある発言にすごく傷ついたというファンの方から手紙をもらったんですね。自殺まで考えるほど落ち込んでいたらしいんですけど、僕のライブを観て「気持ちが楽になった」と書いてくれていて。それを読んで僕、泣いてしまったんですよ。
──感動してですか?
向井:どちらかというと、悔しさや情けなさですね。というのも、その騒動があった時に、他のアーティストたちはそのことに対しての意見や抗議の意を、SNSやブログに上げていたんですよ。「あなたは一人じゃない」「そんなことは気にしなくていい」みたいなことを。でも、僕はその時に何も発言できなかった。当事者じゃない自分が軽々しくコメントしてもいいのかなという怖さもあったし。そんな時だったから、手紙を読んだ直後には「僕は一体、何のために音楽をやってるんだ?」って思ったんですよね。怖気づいて声も上げられず、「表現者」なんて言えるのだろうか? って。それでこの歌詞を書こうと思ったんです。
──なるほど。もちろんSNSはやブログで素早くメッセージを発することも大切だとは思うんですけど、こうやって世の中に対して言いたいことを、作品として届けるのはアーティストとして最も健全な形なんじゃないかなと個人的には思いました。
向井:さっきの「自分を変える」という話にも繋がるんですけど、きっと人の考え方を簡単に変えたり改めさせたりすることはできないと思うんです。でも、自分が何かポジティブなメッセージを発することで、傷ついた人たちの心に寄り添うことはできるんじゃないかと。この曲を聴いた人が、何かしら感じ取ってくれたらいいなと思いますね。それがこの曲を書いた動機です。
──「リセット」の歌詞も印象的です。この曲の歌詞にある〈過去に縛られ 枷を引きずって 身動き取れなくなってしまった〉とか、〈自分が一番可愛くなって 気付けば今はひとりぼっちで〉みたいな、ネガティブな状況に陥った経験ってお二人はありますか?
mabanua:僕は挫折しまくりですからね。なかなか曲が作れない時もそうだし、ライブでミスってしまった時もそう。人のライブとか作品からすごく刺激を受けたりパワーをもらったと感じたりする反面、「俺って意味あるのかな」くらい落ち込んでしまう時もあるし。比べてしまったりしてね。「この先、これと同じくらいのことが俺にできるのかな……」とか、日々そういうプレッシャーと喜びのヘコみが交互にやってくる。
向井:ものすごくよくわかります。
mabanua:で、落ち込んでしまった時に、どうしたらいいのか一つ見えたことがあって。
向井:なんですか?
mabanua:「自分に対して自信をつける」ということ。身も蓋もないけど、結局それしかない。自信があれば、SNSでディスられてもそんなに落ち込まないし。
──他人からの評価を自信の拠りどころにしてしまうと、賞賛されているときはいいですけど、何かの拍子で一気に批判を受けたら潰れてしまいますよね。他人からの評価とは関係ない場所で、自信をつけるようにしていきたいです。
mabanua:そうなんですよ。もちろん、自分に100パーセント満足してしまっても進歩がなくなってしまうから、そこは難しいところなんですけどね(笑)。でも、そこを目指して進んでいくこと、音楽を作り続けていくことが大事なのかなと思います。楽しくもあり、厳しくもある世界ですね(笑)。
ーー最後に、お二人の音楽活動における目標についても聞かせてください。
mabanua:僕はこれからも、ジャンルの垣根を超えていろんなところで活動できるようになりたいかな。昔、僕が音楽活動を始めたばかりの頃は、「お前、色々やってるらしいけど、そんなんじゃ絶対に成功しないからな」とか、「大成するには一つのことを突き詰めろ、ドラムだけをやれ」とか色々言われて(笑)。まあ、昔はそうだったのかも知れないけど、時代によって価値観や方法論は変わってくるじゃない? なので、そこに合わせ過ぎても、合わせなさ過ぎてもダメだと思うんです。ただ、漠然とそういう流れの中で、「mabanuaとかいう名前、常に目に入るよね?」っていう存在であり続けたいですね。今後、押し進めたい分野の一つにサウンドトラックというのがあって。やりたいことを、多方面的にやっていこうと思っています。で、棺桶に入る直前とかにグラミーやオスカーでも取れたら素敵かなと(笑)。
向井:僕はソロシンガーとして活動しているけど、先頭に立っているだけでその後ろには、ものすごいたくさんの人がいると思っていて。mabanuaさんはもちろんですし、スタッフやバンドメンバー、ファンの方たちもそう。僕、ファミリー思想がめっちゃ強いんですよ。自分が倒れたら、その人たちも共倒れしちゃうくらいのつもりでやっていて。もちろん、自分が好きなことを妥協せずやっていくんですけど、みんなの生活を支えるという意味と、僕に今まで投資をし続けてくれた人たちに還元するという意味で、もっともっと多くの人に知ってもらいたいし、親や祖父母のためにも『紅白』に出たいですね(笑)。
(取材・文=黒田隆憲/写真=下屋敷和文)
◆向井太一 INFO◆
■リリース情報
2ndアルバム『PURE』
11月28日(水)発売
初回盤(CD+DVD)3,000円(税抜)
通常盤(CD)2,315円(税抜)
<CDトラックリスト>
01. Secret (Co-Produced by BON3AI)
02. Crazy (Co-Produced by BON3AI)
03. Break up (Co-Produced by ☆Taku Takahashi)
04. Haters (Co-Produced by mabanua)
05. Agony (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
06. Answer feat. KREVA (Co-Produced by 蔦谷好位置)
07. リセット (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
08. 午後8時 (Co-Produced by grooveman Spot)
09. ポートマン (Co-Produced by Shingo.S)
10. Pure (Co-Produced by 高橋海)
11. Ego (Co-Produced by Chocoholic)
12. Gimme (Co-Produced by grooveman Spot)
Bonus Track. Siren (Co-Produced by tofubeats)
<DVDトラックリスト>
”LOVE TOUR 2018” OSAKA at Music Club JANUS
01. FREER
02. FLY
03. Blue
04. SLOW DOWN 05. 空
Music Video
06. HERO (Another Ver.)
■配信情報
「Pure」
<ダウンロード>
・iTunes
< ストリーミング >
・Apple Music
・Spotify
・LINE MUSIC
・AWA
・KKBOX
・Google Play Music
・Amazon Music Unlimited
■ライブ情報
『PURE TOUR 2018-2019』
12月12日(水)東京公演:マイナビBLITZ赤坂【SOLD OUT】
開場18:30/開演19:30
<Guest>
あっこゴリラ/SALU
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Guitar : Kensuke Takahashi(LUCKY TAPES)/Bass : Keito Taguchi (LUCKY TAPES)/Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
1月11日(金)仙台公演:enn 2nd【SOLD OUT】
開場18:30/開演19:00
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Bass : Shige Murata(□□□)/Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
1月18日(金)札幌公演:KRAPS【SOLD OUT】
開場18:30/開演19:00
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Bass : Shige Murata(□□□)/Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
1月25日(金)福岡公演:DRUM Be-1【SOLD OUT】
開場18:30/開演19:00
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Bass : Shige Murata(□□□)/Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
1月26日(土)名古屋公演:伏見JAMMIIN’【SOLD OUT】
開場18:30/開演19:00
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Bass : Shige Murata(□□□)/ Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
2月1日(金)大阪公演:BIGCAT【SOLD OUT】
開場18:00/開演19:00
<Band>
Keyboard & Machine : George(MOP of HEAD)/Bass : Shige Murata(□□□)/Drums : Satoshi(MOP of HEAD)
前売 3,800円 / 当日 4,500円
特別指定(2F席)前売4,800円/当日5,500円(東京公演)
e+
ぴあ
ローチケ
◆mabanua INFO◆
■リリース情報
『Blurred』
通常盤:2,700円(税込)
限定盤:3,240円(税込)
アナログ盤:3,240円(税込)
12月5日(水)発売
<収録曲>
M1.Intro
M2.Blurred
M3.Heartbreak at Dawn
M4.Night Fog feat. Achico
M5.Fade Away
M6.Overlap
M7.Cold Breath
M8.Tangled Up
M9.Call on Me feat. Chara
M10.Scent
M11.Imprint
シングル「Blurred」配信
iTunes
Apple Music
Spotify
■ツアー情報
『mabanua tour 2018 “Blurred”』
11月1日(木)福岡・BEAT STATION
OPEN19:00/START19:30
チケット:4,000円(+1drink)
11月14日(水)東京・渋谷WWW X【SOLD OUT】
OPEN18:30/START19:30
チケット:4,000円(+1drink)
12月14日(金)大阪・Live Space CONPASS【SOLD OUT】
OPEN19:00/START19:30
チケット : 4,000円(+1drink)
向井太一サイン入りチェキプレゼント
向井太一のサイン入りチェキを3名にプレゼント。応募要項は以下のとおり。
応募方法
リアルサウンドの公式Twitterをフォロー&本記事ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
<応募締切>
12月17日(月)まで