『風が強く吹いている』OP&EDは登場人物の心情にどう寄り添う? 向井太一とユニゾン楽曲を聞く
現在放送中のTVアニメ『風が強く吹いている』(日本テレビほか)。直木賞受賞作家の三浦しをんによる同名原作小説は、これまでにコミックや舞台と幅広い分野に進出している。今回のアニメ化には、TVアニメ『ハイキュー!!』シリーズを手掛けた東宝とProduction I.Gが参加。また、本作の題材である“箱根駅伝”を実際に中継する日本テレビともタッグを組んだことで、放送前から大きな注目を集めた。
本作の主人公は、寛政大学に通う1年生の蔵原走(以下:カケル/CV:大塚剛央)。また、彼に学生寮“青竹荘”を紹介した、同大学の先輩である清瀬灰二(以下:ハイジ/CV:豊永利行)のほか、同寮の住人たちも登場。この全員が後に、ハイジのしたたかな策略によって陸上競技部に所属させられる。そして、カケルとハイジを除く大半が陸上競技の初心者にも関わらず、箱根駅伝出場を目指すことになる。
オンエアも第5話を終え、カケルやハイジの過去も徐々に明らかになってきた。第1話終盤では、ハイジが高校時代に負った右足の古傷についてカケルに打ち明ける。また第4話では、カケルが高校時代、ランナーとしての突出した才能が故に、チーム内で孤立してしまった様子も描かれた。また、同話では当時のチームメイトである榊浩介(CV:河西健吾)にも遭遇。当時よりタイムを落としたことで、榊がカケルを強く攻め立てる場面もあった。物語のテーマである陸上競技によって、カケルとハイジは苦い過去を経験しているようだ。
そんな彼らの心情に優しく寄り添うのが、向井太一が歌うエンディングテーマ「リセット」だ。同楽曲では、未来への新たな一歩を踏み出すべく、その名の通り過去に“リセット”を掛けようとする強い決意が歌われる。また、静かな夜を思わせる穏やかなR&Bのトラックには、思わずメランコリックな気持ちにさせられるだろう。
歌詞にも目を向けてみよう。〈走り出せればほら 掴めるから/一度離した 明日へのチケット/この場所から 始まるから/取り戻すため もう一度リセット〉という歌い出しは、カケルやハイジの過去や、競技に対する信念とも重なって聴こえてくる。そこで流れるアニメーションも同様だ。誰よりも夢に対する意志の強いハイジが黙々と走る映像は、アニメ本編や歌詞にもより一層の説得力を与えるだろう。箱根駅伝出場の発起人として、チームを健気に鼓舞する姿も、まるで“明日へのチケット”を手繰り寄せるかのようだ。