乃木坂46 西野七瀬や若月佑美を開花させた映像作家 湯浅弘章 グループの基調を担う作品群を考察
乃木坂46の22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』には、西野七瀬のソロ楽曲「つづく」が収録されている。グループのセンターを幾度も務めてきた西野の、グループ在籍中最後となるこのソロ作品は、乃木坂46を卒業してゆく彼女の姿に重ね合わせるような楽曲になっている。
深川麻衣や橋本奈々未ら、過去にグループ卒業のタイミングでセンターを務めたメンバーのソロ楽曲がそうであったように、在籍中ラストシングルに収録された西野ソロ楽曲「つづく」もMVが制作された。同曲の監督を務めたのは、湯浅弘章である。
湯浅弘章は乃木坂46の映像作品において、グループの基調の一端を担ってきた人物。そして、湯浅が乃木坂46という場で自身の才を発揮してゆく過程で、重要なロールを演じたメンバーの一人が西野だった。
橋本奈々未や伊藤万理華の個人PVの監督を務めていた湯浅が初めて乃木坂46楽曲のMVを担当したのは2014年、9thシングル『夏のFree & Easy』に収録された「無口なライオン」だった。この作品で湯浅は、リップシンクやダンスショットなどを用いない、全編ドラマで構成された映像を制作する。このドラマで主演を務めたのが西野、そして助演は西野と同じく今回の22ndシングルでグループを卒業する若月佑美だった。
「無口なライオン」のMVでは、転校することを友人たちに打ち明けられないでいる西野と、それを悟りながら気づかないふりをして夏休みに最後の思い出を作ろうとする幼馴染の若月の関係性を軸にした物語が綴られる。以降も湯浅が乃木坂46の作品を手がける際に特徴となっていく印象的な光の使い方、叙情性やノスタルジーを強く喚起する作風はこの時点で存分に発揮され、またドラマを主導していく存在としての西野のポテンシャルも花開きつつあった。そして、とりわけ演技に重点を置いた活動を続けてきた乃木坂46と、湯浅のドラマ作品は抜群の好相性をみせる。
湯浅はまた、乃木坂46独特の映像コンテンツの性格を駆使し、その可能性を拡張してみせた作家でもある。湯浅のそうした歩みのなかにも、西野や若月の姿はあらわれる。