ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る

ワンオク、なぜオーケストラとコラボ?

 Takaが最初のMCで「今日は最後までこの感じでやらせていただきます」と語ったとおり、この日のライブで披露された楽曲は最新作に限定されず、バンドの歴史を総括するような多岐にわたるものだった。そこにはJ-POP的なメロディラインが耳に残る初期の楽曲(特に今回は1stアルバム『ゼイタクビョウ』から2曲も披露したことに驚かされた)から、彼ららしいオリジナリティを確立させた中期、さらには海外展開を視野に入れた近作まで、カラーやスタイルが異なる楽曲群を、ストリングスを交えたアレンジでつないでいく。MCでも語られたように、確かに初期の楽曲はJ-POP的要素が強いこともあって、ストリングスとの相性も抜群だ。ところが、最近の楽曲ではそのアレンジにかなり苦戦したとも語られた。これは正直意外な言葉だったが、すでに存在する完成された楽曲に取って付けたようにストリングスをかぶせるだけでなく、初めからそうであったかのような自然な形にリアレンジするのは、作り手からしたら想像以上に難しい作業なのだろう。

10月20日公演の模様(写真=JulenPhoto)

 思えば、この日演奏された楽曲のほとんどはライブやCDで何度も耳にしてきた、いわば完成形を知っているものばかりだ。だが、その多くの楽曲はストリングスが加わることで原曲の持つダイナミックさをより強調し、ある曲では若干アレンジを変えているのに「最初からこういう形でしたが?」と言わんばかりの説得力を感じさせた。そう思わせる要因のひとつに、この日の音量バランスが非常に長けていたことが挙げられる。53名という大所帯とはいえ、そこで鳴らされる楽器はすべてアンプを通さないアコースティック楽器だ。パワフルなTomoya(Dr)のリズムとRyota(Ba)の低音、Toruの変幻自在なギターサウンド、Takaの圧倒的な歌声がミックスされたら、普通に考えたら生楽器の良さが消されてしまうと思うだろう。しかし、この日は違った。各楽器がそれぞれの良さを殺すことなく、程よいバランスで共存していたのだ。正直、バンドのサウンドが小さいと感じることは一度もなかった。そして、オーケストラならではの繊細さもしっかり感じられた。この絶妙なバランスを見つけるだけでも、相当な苦労があったのではないだろうか。

 また、この日は今ツアーで初披露となる新曲も演奏された。オーケストラとの共演バージョンが初披露なので、今後どういうアレンジでリリースされるのかは不明だが、楽曲の持つテイスト自体は『Ambitions』から「Change」の延長線上にある、海外のメインストリームでも存分に戦えるキャッチーな楽曲だった。いずれ届けられるであろうニューアルバムをこれだけで語るのは無理があるが、それでも次作はかなりの挑戦作になるであろうことは想像に難しくない。

10月20日公演の模様(写真=JulenPhoto)

 そんなサプライズもありつつ、終盤では「The Beginning」「Mighty Long Fall」とライブに欠かせないアップチューンを連発。前者のドラマチックさは原曲以上のものがあり、後者ではスパイ映画のようなスリリングさが加わることでさらに圧巻の盛り上がりを見せた。本編ラストの「Fight the night」では序盤、Takaがチェロなどのストリングスをバックに切なさを表現し、バンドやオーケストラが加わると感情を一気に爆発させ、エンディングを迎えた。

 アンコールでは新たなアンセム「We are」と、彼らのライブには欠かせない1曲「完全感覚Dreamer」をプレゼント。この頃には最初に書いた変な決めつけや脳内イメージは一切なくなり、いつもと変わらぬ気持ちでONE OK ROCKのステージを堪能していた。たとえステージ上の4人のファッションがいつもと違っていても、ステージ上にいる演者がいつもより53人も多くても、そこで鳴らされている楽曲はONE OK ROCKそのものであり、新たな実験すら彼らは早くも自分たちのものにしてしまっていたのだから、さすがの一言だ。

10月20日公演の模様(写真=JulenPhoto)

 ライブでこのような実験をする意味はアーティストによってそれぞれ異なるだろうが、ONE OK ROCKの場合は自分たちのエモーショナルさやセンチメンタルさを増幅させるために今回のコラボレーションを熱望したのではないだろうか。と同時に、自分たち4人以外の演者が加わろうとバンドの軸はブレないという証明でもあったのではないか。

 彼らにとってこのツアーが年内最後の国内ライブになるそうだが、こんなにも「早く次のライブを観たい」「早く新曲を聴きたい」という気持ちになったのは、随分久しぶりのこと。2019年はさらに新たな武器を身に付けたONE OK ROCKに期待したい。

10月20日公演の模様(写真=JulenPhoto)

(写真=橋本塁(SOUND SHOOTER))

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
『ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018』
2018年10月21日(日)さいたまスーパーアリーナ

01. Change
02. Ending Story??
03. 欠落オートメーション
04. Cry out
05. Decision
06. アンサイズクリア
07. 欲望に満ちた青年団
08. カゲロウ
09. Yes I am
10. One Way Ticket
11. Pierce
12. Instrumental
13. 新曲
14. I was King
15. The Beginning
16. Mighty Long Fall
17. Fight the night
<アンコール>
18. We are
19. 完全感覚Dreamer

■関連リンク
ONE OK ROCK オフィシャルサイト

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