TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat. 高野寛インタビュー
TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDと高野寛が目指した、“現代のテクノポップ”とは
3人組のテクノポップユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND(以下、TECHNOBOYS)が自身名義としては約1年ぶりとなる通算5枚目のシングル『ISBN ~Inner Sound & Book’s Narrative~/Book-end, Happy-end』をリリースした。TVアニメ『ガイコツ書店員 本田さん』(TOKYO MXほか)の主題歌を収録した両A面仕様で、オープニング(OP)主題歌は斉藤壮馬演じる本田を迎えたデスメタル、エンディング(ED)主題歌が高野寛とコラボレーションしたテクノポップとなっている。そこで、今回、リアルサウンドでは、TECHNOBOYSと高野寛の鼎談を企画。YMOチルドレンでシンセオタク、「全員が高野ファン」だという3人と、高橋幸宏プロデュースによるシングル「See You Again」でデビュー後、坂本龍一のツアーにギタリストとして参加し、YMOの変名ユニットであるHAS/HASYMOの一員でもある高野が目指した“現代のテクノポップ”とは。(永堀アツオ)
最初に書いたポップソングは高野さんの影響を受けている
ーーコラボをすることになった経緯から教えてください。
松井洋平(以下、松井):TVアニメ『ガイコツ書店員 本田さん』のOPとEDを担当させていただくことになって。僕らはいつもボーカリストが必要なので、オープニングはキャラソンでいってみようっていうのがありました。エンディングはせっかくだからアーティストさんとやれないかなって話をした時にプロデューサーから高野寛さんどう? って話をいただいて。高野さんはその前に僕らのプロデューサーと、TVアニメ『ハクメイとミコチ』(2018年)のオープニングでChimaさんっていうアーティストのプロデュースをされていたんですよね。それで高野さんの名前が出た時に、僕ら全員、昔から高野さんファンなので、願ってもないっていうか。そんなこと可能なの? じゃあ、ぜひお願いしますっていう形になりまして。で、高野さんも快く引き受けていただいたと。
高野寛(以下、高野):プロデューサーの中でもね、ここに至るまでのプランが、ホップステップジャンプであったんですよ。『ハクメイとミコチ』の前にも『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜 THE LAST SONG』(2016年)のサントラではっぴいえんどの「さよならアメリカ さよならニッポン」をカバーをしていて。それが一緒にお仕事をした最初なんですよ。
松井:僕らも実は『コンクリート・レボルティオ』に編曲で関わってたので。
高野:伏線が張られてたんだね。その1年以上前の伏線がやっと回収されたっていう感じですね。だから特別びっくりっていうよりは、わりと前から、いつかTECHNOBOYSと一緒にやってくださいみたいな話は出てたので。ついに来たか、っていう感じでしたね。
ーー実際にお会いする前はお互いにどんな印象を持っていましたか。
高野:今、テクノって言葉にはいろんな意味や解釈があるじゃないですか。僕は80年代のテクノポップがリアルタイムな世代なので、真っ先に思い浮かべるテクノポップの音っていうのがあって。で、TECHNOBOYSはまさに継承者だなって感じてました。
フジムラトヲル(以下、フジムラ):僕は、子どもの頃、初めてお小遣い貯めて買ったレコードがイモ欽トリオの『ハイスクールララバイ』(作詞:松本隆/作曲:細野晴臣)で。子どもなんで、何も知らなくて買ってたんですけど、そこから成長して、初めて自分のバイト代で買ったCDが高野さんの『Better Than New』っていうマキシシングルだったんです。その時、CDと一緒にシンセサイザーを買って。1台目は打ち込みが難しくて買い替えたんですけど、2台目で初めて打ち込んだ曲が「目覚めの三月(マーチ)」っていう、その後に出たシングルで。だからもちろん好きですし、僕の初めての方なんですよ。そういう方と一緒にできたっていうのはうれしかったですし、やっぱりいいものにしたいっていうのはありました。
石川智久(以下、石川):私はCM好きだったので、ミズノのスキーウェアのCMからですね。音楽がすぐ飛び込んできて、なんだこの曲は! っていうことになりまして。で、探しまくって、高野さんの「虹の都へ」だっていうことがわかって、さっそく買いに行きました。当時はまだ歌謡曲と呼ばれるものが中心で、はっきりとしたJ-POPっていうのはなかった。高野さんで初めて、日本のポップスっていうのがやっと完成したんじゃないかって思ってましたね。
松井:ちょうどその「虹の都へ」がヒットした時、僕は中学生だったんですけど、いわゆるその時代のいろんな音楽を聴く中で、高野さんの音楽だけキラッと輝いて聴こえたんですよね。それはきっと、シンセだったり、アコギのきらびやかな部分だったりするのかもしれないですけど、何より声がすごい飛び込んできた印象があって。その声に一聴惚れして、アルバム聴いたり、さかのぼって過去作を聴いたりとかしていて。そこからどんどん影響を受けて。僕は高校時代からバンドやっていて、大学入るくらいの頃には作曲めいたものをやってたんですけども、最初に書いたポップソングっていうのはすごい高野さんの影響を受けています(笑)。
高野:それYouTubeに上がってないの?
松井:上がってないですよ!(笑)。
ーータイトルだけ教えてください。
3人:あははははは。タイトルが一番まずい!(笑)。
松井:他の2人が漏らす分にはいいけど、俺からはちょっと無理だわ(笑)。
石川:僕もちょっと言えないです(笑)。
高野:気になるなぁ~。
フジムラ:ま、「〇〇の〇〇へ」っていうタイトルです(笑)。
松井:あはははは。「Over the Rainbow」感を出したくて。普通に訳したら「虹の彼方へ」じゃないですか。で、虹を変えようって言って夢にして、「夢の彼方へ」っていう(笑)。わ~、むっちゃ恥ずかしいわ! 何このプレイ!
石川:当時を知ってる俺からすると、こんなことになるとは! っていう感じです。
松井:そうだよね。僕が曲を書いて、石川がアレンジしたんですよ。
高野:じゃあ僕が高校の時に作った恥ずかしい曲と交換しない?
松井:うわ~、それはドキドキしますねぇ!(笑)。わかりました。じゃあ、全員用意します。
高野:羞恥プレイだな(笑)。