映画『音量を上げろタコ!』ロックへのこだわり 兵庫慎司が音楽描写に感じた“リアル”とは?
「驚異の歌声を持つ世界的ロックスター・シンと、声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか。正反対の2人は偶然出会い、ふうかはシンの歌声が“声帯ドーピング”によるものという秘密を知ってしまう! しかもシンの喉は“声帯ドーピング”のやりすぎで崩壊寸前! やがて、シンの最後の歌声をめぐって、2人は謎の組織から追われるはめに。」
以上、ご存知ない方のために、まず宣伝文を丸写ししましたが、三木聡監督の最新作である『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』は、そのようなストーリーのロックムービーである。なので、シン(阿部サダヲ)もふうか(吉岡里帆)も劇中で自分の曲を歌うし、それ以外にもいくつかバンドが出て来る。
劇中曲は7曲で、プロデューサーの西條善嗣が制作。キューン・ミュージックの仕事が多い制作マンで、普段グループ魂やPOLYSICSを手がけている方です。
シンが歌う「人類滅亡の歓び」は作詞をいしわたり淳治、作曲をHYDEに依頼。ふうかが歌う「体の芯からまだ燃えているんだ」はあいみょんが書いてTHIS IS JAPANが演奏。「まだ死にたくない」「ゆめのな」はチャットモンチーを「完結」させたばかりの橋本絵莉子が詞曲を提供。「夏風邪が治らなくて」は、安部勇磨が書いてnever young beachが演奏。
シンのバンドメンバーはギター:PABLO、ベース:KenKen、ドラム:FUZZY CONTROLのSATOKO。バイきんぐ小峠英二がボーカルのパンクバンド・ダエマオハギツの曲はグループ魂の遅刻こと富澤タクが作詞(監督と共作)&作曲&編曲&演奏&出演、そのバンドのリズム隊がニューロティカのKATARUとNABOで、演奏&出演。家の前でゴリラが死んでる(というバンド)のボーカルが清水麻八子であることは、映画仕事の多い声楽家なので納得だが、メンバーはなんと八十八ヶ所巡礼の3人。
どうでしょう。「そこまでやらなくても!」としか言いようがないでしょう、なんだかもう。いや、すごいよ? すばらしいキャスティングだと思うよ? 思うけど、正直、伝わりにくいと思う、というか伝わる人がものすごく限られると思う。「ああ、だから曲自体も劇中の音楽シーンも、ここまでいい感じに仕上がっているのか!」ということが。